77.寝落ち
夕食に焼き魚を食った後、俺は大きな紙を爪でA4サイズに切り分けていた。
途中で失敗したのは、くしゃくしゃに丸めてその辺に転がす。
紙はコロコロと転がった。
俺は思わずそれを見つめる。
……。
俺は転がした紙をつつく。
紙のボールは転がる。
カサカサと音を立てて。
つつく。
ころがる。
つつく。
ころがる。
ふふふ。
「にゃ(……はっ?!)」
な、何て事だ。
転がった丸い物がこれほど心惹かれるとは。
恐ろしや猫の本能。
俺はもう駄目かもしれない。
……馬鹿なことやってないで、紙を切り分ける作業を続行するか。
俺は紙ボールをかまどに投げ入れた。
紙ボールはすぐに燃えて消えた。
◇ ◇ ◇ ◇
作業が終わったから、かまどの前でむしろを敷いてのんびりすることにした。
ぬくぬくだ。
俺は体を伸ばす。
「にゃんこさん、隣いいですか~?」
アウレネが隣に座る。
「魔王様はもう寝てますね」
シルフ婆さんは、俺が作ってやった簡易小屋で寝ている。
正確にはシルフ婆さんは魔王でなくなったらしいが、未だにアウレネはそう呼んでいる。
「知ってますかにゃんこさん。
魔王が寿命で死ぬと、どこからともなく次の魔王が現れるらしいです~」
『そうなのか?』と書く。
「そうです~。
ところが、魔王様はまだご存命です~。
それなのに、新魔王なるものが現れたらしいですね~」
俺にとってはどうでもいい。
「これは私の予想なのですが、にゃんこさん、魔王様の寿命を伸ばしましたか~?」
『記憶にないな』と書く。
シルフ婆さんの片麻痺を治したり、緑内障や肺炎を治してやったりしたが、寿命とは関係ないはずだ。
「そうですか~。
多分、あらかじめ決まった寿命が過ぎたら、新しい魔王が生まれるような気がするんですよ~」
……。
「きっと魔王は、神様があらかじめ決めた年に生まれ……あら、にゃんこさん寝ちゃいましたか~」
……ZZZ。




