623.【後日談7】モテる男のはず
森の中の自宅にて。
鏡の前に立ち、背中を持ち上げ毛を逆立て、鏡の中の俺へ威嚇ポーズをとる。通称やんのかポーズの練習中だ。
これで俺も子猫の仲間入りだぜ。
鏡の中の自分といつでも喧嘩してやるぞ。
「リリーちゃんポンポ〜ン」
「みゅ〜(バイオレンスにゃ〜)」
窓際に飛び乗り外を見ると、金髪エルフのアウレネが、丸太テーブルに転がっている白猫リリーのお尻をぽふぽふ触っている。呑気な奴らだな。
「ごめんくださーい」
「にゃー(はいはい)」
黒ぬこヤマモトの宅配便が届いた。
俺は自慢の肉球で受取り印を押す。
宅配員さんはすぐに去っていった。
俺は段ボール箱を部屋の床に置き、開ける。
中には猫用パウチがずらり。
お取り寄せグルメというやつだ。
お昼に食べるのは、どれにしようかな~。
「みゅ〜(おいらにも寄こせにゃ〜)」
いつの間にか外から窓に顔を貼り付けて、リリーがこちらを見ていた。食べ物に関して目ざといな。
「にゃー(これ全部俺のだぞ)」
「みゅ〜(ドケチにゃ、ドケチ大魔神がここに居るにゃ〜!!)」
何を言う。1食2500円もするというのに。
そんなホイホイあげるわけないだろ……やれやれ仕方ないな。
「にゃー(1食分だけだぞ)」
「みゅ〜(ありがとうにゃ〜)」
そう言ってリリーは家の中に入ってきて、3つほど猫パウチを持っていく。こらこら。
「にゃー(1食分だと言っただろう。食べ過ぎ、取りすぎ)」
「みゅ〜(いちいち細かい男はモテないにゃ)」
馬鹿な、俺はモテる男のはずだ。
だからリリーが猫パウチを3つ持っていくのも見過ごしてやるとする。……おい、それ以上持っていくのは許さん、調子に乗るなし。