622.【後日談7】変化が欲しい
昼、宿屋の屋根に登り、あくびをする。眠い。
ヨツバが隣に座る。ちょっと太ったな。
「猫さん、最近思ったのですが、この都市はイノベーションが足りないと思うんです」
「にゃー(イノベーション?)」
技術革新が足りない、と。
「にゃー(それって必要か?)」
魔獣都市マタタビは技術面では、成熟しきってしまっている。新しい風が必要だとヨツバが思うのもわからなくはない。
だが見てみるといい、この都市の風景を。
道に寝転ぶネコ科魔獣達。
彼らのニャン生の時間は、非常にゆっくりと流れている。
ヨツバや俺は前世で目まぐるしい変化の時代を生きていたからこそ、今の世界の流れがゆっくりに思えるだろうが。
急な変化には、多くの者はついていけない。
前世でも、日本はデジタル後進国だったしな。
多分ファクシミリ(通称FAX)は俺の死後もまだ使われていたに違いない。
つまり何が言いたいかというと、ネコ科魔獣にイノベーションは不要だろう、ということだ。
多くの者が対応・適応出来ないことは、すべきではない。
という事をヨツバに話すと、これだから老害は、と悪口を言われた。失礼なやつ。
「つまり、時代はナノマシンということです!」
「にゃー(話が飛んでいないか? 順番に説明してくれよ)」
「パソコンなどは技術が必要なので、人によって使える使えないが生じます。その点、ナノマシンなら誰でも同等の恩恵が受けられますよ!」
「にゃー(だから話を飛躍させるなと。そもそもナノマシンって何だ)」
「そこからですか」
ナノテクノロジーだったりマイクロ波だったり水素水だったり。もちろんちゃんとした製品や技術もあるだろうが、しばしば胡散臭い、科学とは程遠い詐欺まがいのものが現れてくるからな。
多分前世はもうすぐAI関連の詐欺が流行るんじゃなかろうか。
ヨツバの言うナノマシンとやらも、眉唾だ。
「良いでしょう。ナノマシンとはですね……」
ふむふむ、体内を回る小さな機械が、体を修復してくれる、か。
それ【ヒール】で良くないか?




