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51.素敵な木箱

「ささっ、どうぞ、こちらです」


俺達一行は、兵士に連れられて城に入る。


……お、あそこに見えるのは、縦横40cm高さ35cmくらいの大きさの木箱だ。

蓋が開いているぞ。

それに中身は空。


気が付くと足が勝手に木箱へ向かい、その中にひょいと飛びこんでしまった。

ああ、この上質な木の匂い、この角、この狭く薄暗い感じ。

素晴らしい。実に素晴らしい。



「ゴロゴロゴロゴロ……」


「……あの、ニコ様、この猫、本当に大魔導士なのでしょうか?」


「何でそんなこと聞くんだい?」


「いや、どう見ても空箱で喜んでいる野良猫にしか見えないのですが」



言いつつ、兵士が俺を箱から出そうとする。



「にゃー!(うおお! 俺はこの箱から出ないぞ!)」


「くそ! 箱から離れろ!

というか無駄に力強いな、この猫!」


「箱ごと持って行けばいいじゃん」


「むむぅ……仕方ない」



兵士は箱ごと俺を持ち上げた。

悪いね。


やがて、俺達は大きくて厳かな両開き扉の前に立つ。

俺は箱で転がっているだけだが。



「ニコ様、ならびにくだんの大魔導士の者、連れて参りました!」


「ご苦労。入れ」


「はっ!」



扉を通り、以前の太い中年の男の前まで連れて来られた。



「……何だ、その猫は」


「はぁ……ニコ様がおっしゃるには、これが大魔導士とか」



王様は俺の顔を見て、どこかで見たような……?

と呟く。



「ニコよ。

本当にこの者が、バジリスクを討伐した森の大魔導士だと言うのか?」


「そうです、国王」



ああ、眠い。

ここ気持ちいい。

……すやぁ。



「……どう見ても、昼寝中の野良猫にしか見えないが」


「猫さん! 起きて!」



う~ん、あと5分……。



「おい、陛下の前で、無礼だぞ」



ぽいっ!

俺は兵士に掴まれ、投げられたらしい。


すたっ!

本能で着地する。



「にゃー(何するんだ)」



っと、何しに来たのか思い出した。


板を取り出し、『それで、俺に何か用か?』と書く。


「「「四次元空間の魔法?!」」」


「ほら、ただの猫さんじゃないでしょ?

ボクが高名な魔導士だって思ったのも無理ないでしょ?」


「も、もしや、バジリスクを倒したというのは……」


『ああ、あいつか。

俺が倒したよ。

証拠の肉はもう無いし、皮は持って行かれたけど』と書く。


「ど、どのように倒したか教えてもらえるだろうか?」


『確か最初に眼つぶしして、その後首を咬み千切ったはず』と書く。


「もはや疑う余地はない。

あなたが我が王国の救世主であったか!

私は国王のフランベル4世だ。

これまでの無礼を詫びよう。

勇者も世話になったようだし、改めて礼をしなければ!」



俺は木箱に再び入り、『それじゃあ、この箱ちょうだい』と書く。



「はっはっは!

それでは国王として示しがつかぬ。

もっと高価な物を要求するのだ」


『それじゃ、あっちの森ちょうだい』と書く。


「……いきなり大きく出たな」



こうして、俺と王様との話し合いが始まった。




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