43.勝手に征圧
俺は森の入口へ着くと、そこには眠っている大人の兵士が2人と、アウレネが居た。
「にゃんこさん、どうでしたか~」
『帰してやったよ、かなり怒られていたけど』と書く。
「そりゃ当然です~」
で、この2人の兵士はアウレネの仕業だろうな。
「あと10分くらいで起きますよ~。大丈夫です~」
なら問題ないな。
俺はアウレネと一緒に我が家へ帰ることにした。
◇ ◇ ◇ ◇
「そういえば、森に魔王軍討伐隊が派遣されたそうですよ~」
『ふーん?』と書く。
「多分、森の中に着々と準備している魔獣の軍隊を、早めに潰そうという魂胆ですね~」
魔獣の軍隊? そんなもの居たっけ?
「もちろん、そんなの居ませんよ~。人間が勝手に言っているだけです~」
会話する度に俺が立ち止まって板に書き書きしているため、森の我が家に着くのに時間がかかってしまった。
その我が家なのだが、周りに兵士が数人居て、中に旗を立てている。
『魔王軍討伐隊』と書かれている旗だ。
俺達は茂みに隠れて様子を見ている。
「あちゃ~、征圧されていますね~」
征圧って何だ。ここは俺の家だぞ。
魔王軍関係ないだろ。
「そうは言っても、森の奥にある怪しい建物、それもウッドハウス。
しかも最近出来た物だというので、勘違いされてもおかしくありませんよ~」
俺の家は魔王軍の軍事拠点扱いされていて、それを征圧したってわけか。
ちなみにウッドハウスはエルフが好む形式の家らしい。
……要するに、アウレネのせいだな。
「痛い痛い! 髪の毛を引っ張らないでください~!」
さて、どうするかな?
「そこに居るのは誰だ!」
まあ見つかるよな。
俺は自分から出て行く。
「にゃー(こんにちは)」
「野良猫か……そういや、もう丸1日、何も食ってないなぁ」
男はうつろな目で俺を見る。
おいおい。俺を食う気かよ?
だが、腹が減って苦しい気持ちはよく分かるから、俺は四次元空間からイノシシもどきの肉を取り出し、渡した。
「へへっ、猫が肉をくれたぜ。こんな幻覚を見ているようじゃ、俺はもう駄目かもしれないな」
言いつつ彼は掘りを渡り、石壁を登って行ってしまった。
かまどとアウレネの火おこし道具があるから、それで調理するつもりなのだろう。
「どうして彼は飢えてるのでしょうか~。食べ物は森にたくさんあるのに」
アウレネは木の実をポリポリかじりながら言う。
木の実には毒入りもあるから、ちゃんとした知識がないと食えないのだろう。
石壁の向こうからは、男達の歓喜の声が聞こえる。
俺の渡した肉を喜んでもらえたようだ。
とりあえず彼らの様子見でもするか。