41.ネルの目的
「猫さんだー! わーい!」
宿屋の少女ネルに抱きつかれる。
おー、よしよし。
森は怖かっただろうに。
俺はネルの頭を撫でてあげる。
なでなでなで。
「あ~! 私には触らせてくれなかったのに~!
ズルいです~!」
アウレネの手が俺に伸びてくるが、それをひょいと避ける。
個人的に彼女は苦手なのだ。
「ここは猫さんの秘密基地なの?」
ネルの質問に対して『おう!』と書く。
厳密に言えば違うが、似たような物だからOKだ。
「お姉さんは、ひょっとして魔王シルフの部下のエルフさん?」
「……」
ネルのピンポイントな指摘にアウレネが固まる。
この年で頭良すぎだろ、ネル。
「ふっふっふ~、バレては仕方ありませんね~。
そうです、私は悪い魔王の部下、エルフのアウレネです~。
森に入ってくる悪い子は食べちゃうですよ~」
わざとらしく両手をゾンビみたいに構えてネルを脅すアウレネ。
「猫さんも魔王シルフの部下なの?」
『俺はただの野良猫だ』と書く。
「無視しないでください~!」
アウレネはわざと悪役を買って、ネルに森への恐怖心を植え付けようとしているみたいだ。
だが、元々のポワンポワンしてる性格のせいで上手くいってない。
「にゃんこさんからも何か言ってやってくださいよ~。
この子きっと、何度も来ますよ~?
そのうち森の魔獣にパックンチョされますよ?」
確かに、ネルがどうしてこの森に来たのかは知らないが、その行動は褒められたものではない。
『ネルはどうしてこの森に?』と書く。
「猫さんに会うためだよ」
俺が目的だったのかよ!
会う頻度を減らそうとしたのが裏目に出たのか。
「にゃんこさんと少女さんは知り合いだったのですか!
是非ともその逢瀬について詳しく聞かせてくださいな!」
逢瀬って何だ。俺たちゃ男女の関係じゃないぞ。
それを言うなら出会いだろ。
ネルの口から、俺と過ごした日の事について語られる。
それが終わった時、辺りは暗くなっていて、ちょうど夕食時となった。