40.ネル、猫さんと会う
金髪エルフのアウレネが住みつき1週間。
最初は大変だった。
あいつ俺の家のすぐ下で糞しやがるんだぜ?
それが臭いのなんの。
猫の嗅覚舐めるなよ?
掘りから向こうでやれと言ったら、雨の日はどうするんですか~とか抜かしやがった。
仕方なく、適当な石製のトイレを石壁付近に作ってやった。
このトイレ、水を流せば外の掘りへ汚物が流れるのだ。
水は備え付けの壺から流す。
手動水洗トイレってやつだ。
作った物は他に木炭、木炭を使って作った金の鉗子2本、それから物置き小屋。
木炭は木を枯れ草と土で包み、蒸し焼きすると出来る。
作った木炭を使って金を壺に入れて溶かし、粘土で作った型に入れ、冷めた金を爪で加工した。
作るのに一番苦労したのは、鉗子の止め具だった。
5回くらい作りなおした。
だが、それだけの価値はある一品だ。
金の鉗子はとても使い勝手が良い。
鉗子とはハサミみたくリング状の持ち手があって、そこに指を通して使うピンセットっぽい器具だ。
これにより今まで苦労した紐を結ぶ、等の動作をスムーズに行うことが出来る。
これでも生前はネズミ解剖博士と呼ばれていたのだ。
手先の器用さには自信がある。
物置き小屋は高床式で、ネズミ返しが付いている。
高床式の構造にアウレネがとても感心していた。
この世界の文明は縄文時代未満か?
それとも知識が偏っているのか?
おそらく後者であろうが。
夜はマック君の本を読んで勉強したり、アウレネから言葉を教えてもらったりした。
昼間の彼女は森をうろちょろしているみたいだ。
特に何かしているわけではなさそうだったが、一応、人間は殺すなと脅してある。
そんなこんなで、特に特筆することのない日常を送っていたのだが。
「ただいまです~。お土産を持ってきましたよ~」
ある日アウレネが宿屋の少女ネルをおぶって帰って来た。
ほぅ。とうとう化けの皮が剥がれたか、この女。
ネルを誘拐してどうするつもりかと問いただそうとしたら、
「森でお昼寝してたみたいです~」
何と、ネルは森へ来ていたらしい。
おまけに寝ていたと。
野生の魔獣に襲われたらどうするつもりだったのか。
「う~ん……あれ? 猫さん?」
丁度ネルが起きたみたいだし、詳しい話を聞いてみるか。