2.勇者召喚! 俺はお呼びでないらしい
「おお、勇者召喚に成功したか!」
「いえ、一名だけ失敗しました。
ですが問題ないかと」
俺は真っ赤な絨毯の上に立っている。
四つん這いの恰好で。
見上げると、隣には少年2人と少女1人が居る。
……んんん?
自分の手を見る。肉球の付いた短い指が5本。
手も腕も茶色の毛がもっさり生えている。
「にゃーお」
どうなってるんだ、と喋ったつもりだったが、変な鳴き声が出る。
どうなってんだ本当に。
「よくぞ参られた勇者達よ、私が国王のフランベルだ」
装飾が施された豪華な椅子に座っている中年の太った男が、自己紹介をする。
「突然の呼び出し、申し訳ない。
しかし、魔王軍と戦うためには貴君らの協力が不可欠なのだ」
王様が続けて魔王軍のことや、今後の生活のサポートのことなど色々話しているのを聞いていると、俺は近くの兵士っぽい男に首根っこを掴まれる。
「陛下! この猫はおそらく勇者召喚に失敗して現れた野良猫!
いかがなさいますか?」
「城の外にでも連れて行け」
「はっ!」
俺は掴まれたまま、お城の廊下を通り、城門を通り、城外まで連れて行かれた。
「お前が勇者だったら、城で手厚くもてなしていたであろうに、残念だったな」
ぽぃっ!
俺は投げられる。
だが、すたっ、と4本足で見事に着地する。
城へ戻る兵士をぼーっと眺め、ため息をつく。
どうやら俺は猫になってしまったらしい。
大人の猫の首根っこを掴んで持ち上げると首がしまって苦しいので、良い飼い主は真似しないでください。
兵士が進言したのは本来不敬ですが、招かれざる者が国王の前に居るのは防衛上よろしくないので、仕方なく言った感じです。