32.今のはゴッドヒールではない、ヒールだ
「この猫が、アウレネの言っていた、人の言葉が分かる猫かぇ?」
老婆の魔女、じゃなくて魔王(?)が歩いてくる。
片方の足を軸にぶん回すような歩き方だ。
片麻痺を起しているな、これは。
ヒールが効くか、ちょっと試してみよう。
「にゃー(この者に癒しを。ヒール)」
老婆に回復魔法をかけてやる。
「ふぇっ? な、なんじゃ?! 足の痺れが消えおった?」
おお、成功した。
すげーな回復魔法。
「回復魔法も使えるのですか~!
にゃんこさん、すごいですね~!」
「アウレネよ、今のはゴッドヒールと言うて、神級の魔術じゃ。
おそらくこの猫、いや、神様はバステト様じゃろう。
病気から我らを守ってくれる神様じゃよ」
今のはゴッドヒールではない、ヒールだ。
それにバステトって確かエジプトかどっかの雌の猫神だよな?
色々と勘違いしてるみたいなので、木の板を取り出し、鉛筆もどきで書く。
『今のはヒールで、俺はバステトじゃないぞ』っと。
「今のがただのヒールじゃと?!
さすがバステト様。
病気の知識が豊富な者ほど、回復魔法に使用するMPは少なく、効果は増大する。
ワシがグレイターヒールで誤魔化し続けた痺れを、下から2番目の回復魔法で治してしまうとはのぅ!」
駄目だこの老婆。
人の話を聞いているようで、聞いていない。
バステトじゃないって言ってんだろ。
ハイテンションなシルフ婆さんは放っておいて、金髪少女アウレネに向かって聞く(書く)。
『何しに来た?』と。
「この森を支配下に置くために」
「バステト様! どうかこの老婆の話を聞いてくだされ!」
アウレネの話を遮り、シルフ老婆は語りだす。