31.千客万来
おはよう。
昨日はさんざんだったな。
朝ごはんにと、イノシシもどきの肉を焼いていると、人間の声が聞こえてきた。
俺は石壁にひょいと登る。
「何だこの堀は?!」
「いつの間に出来た?」
「肉を焼いている匂いだ。誰かいるぞ」
お、人間たちが堀の周りを歩いている。
渡している木に気づき、渡ってきた。
その様子を、石壁の上から眺める。
「おい! ここに誰か住んでいるのか?!」
「にゃー(俺が住んでるぞ)」
「よっ!」
男達は身軽らしく、石壁を乗り越えた。
ビシャアアアアアアン!
急に雷が男の前に落ちてきた。
俺の仕業じゃないぞ。
「なっ?!」
「ふぇっふぇっふぇ」
雷の落下地点に、とんがり帽子を被った白髪の老婆と、この間の金髪長耳少女が現れる。
「誰だ?!」
「小僧ども、王に伝えるのじゃ。
この森はワシ、魔王シルフがもらった、とな」
魔王? 確か王様が悪者呼ばわりしてた奴だよな。
魔王というか魔女だろ、その見た目。
それも毒りんごを持ってそうなタイプの。
「魔王シルフだと?!
くっ! ギルドに伝えなければ……!」
男達はまた石壁を乗り越え、走って行った。
慌ただしい。
「にゃんこさん、また来ましたよ~」
っと、そろそろ肉が焼けるな。
俺はかまどに近付く。
かまどで串を焼いていたのだ。
ロース肉ですよ奥さん。
焼けた串を一つ取り、ぱくり。
美味い。豚肉に似た上質な味だ。
ビールが欲しくなるな。
猫だから飲めないが。
「無視は寂しいです~!」
やれやれ、相手したくなかったから放っておいたのに。




