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233.猫の尾を踏む貴族


宿屋にて。


ネルとまったり過ごしていると、珍しい訪問者が現れた。


近衛兵を引き連れているところから見ると、貴族っぽいな。

ここは貴族が泊まるほどの宿ではないのだが、何の用なのだろう。



「宿の責任者を出せ!」



近衛兵が偉そうに叫ぶ。



「はーい。どちらさまでしょう?」



お昼の料理を作っていたナンシーさんが出てくる。

代わりにネルが台所へ向かう。


俺はナンシーさんに付いて行く。



「伯爵様の前で、頭が高いぞ!」


「これは失礼しました」



ナンシーさんが頭を下げる。

基本的に貴族というのは、怒らせてはいけない、下手に出るように、と一般家庭では教えられている。


にしても伯爵様、ねぇ。



「この宿を許可していたベルチェ男爵が取り潰しとなった。

そこで、今後はこちらにいらっしゃるホーア伯爵が代わりに許可を出すこととなった。

光栄に思うが良い!」


「……」


「返事は?!」



何だこの高圧的な奴は。

だいたい、さっきから喋ってるのは近衛兵ばっかりじゃないか。

お前は別に偉くもなんともないだろう。



「は、はい」


「そうだ、下民は下民らしくしていろ!

今後は税を利益の5割から8割に引き上げるからな!」


「そ、それは厳しいです……」


「黙れ! 文句があるのならこの宿を取り上げるぞ!」


「いえ、文句はありません……」



近衛兵は言う事を言ったのか、伯爵様っぽい人に報告していた。

伯爵さまと思しき人はにっこりして去って行った。

挨拶くらいしろよ。


ナンシーさんはテーブルに着き、う~んどうしましょう、と頭を抱えている。



「猫さん」



ヨツバが影から現れた。

分かってるって。



『ちょっと王城に行ってくる』と書く。



そして、王城にて先ほどの貴族について文句をタイピングして打つ。

王様はふむふむ、と真剣に聞いていた。


後日、ホーア伯爵は国家反逆の罪で投獄されたそうだ。

大魔導士様の機嫌を逆なでしないように貴族に言い渡しているはずなのに、それを破ったからだそうだ。


なんて怖い。俺も大魔導士様には逆らわないようにしよう。

ん? 伯爵はいつ何をして、大魔導士様の機嫌を損ねたんだろう。

あれ? 大魔導士様って俺だったか?


違う、俺はエセ大魔導士で、王様達に大魔導士様と呼ばれてはいるが、本物は別人だ。

ややこしいな。


本物の大魔導士様に会えたなら、是非とも本を書いてもらいたいのだが。

金ならたくさん出すぞ。


ちなみに、宿の許可を出す貴族はバロム子爵が引き受けたそうだ。

何と税金は利益の1割で良いらしい。


それから宿の食事に、おかずが1品追加されるようになった。



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