205.雑貨屋、解体開始
今日は、とうとう雑貨屋クローバー店の解体開始日だ。
柱や基礎のうち、使える物は残して、後は綺麗に新調することになっている。
完成するまでは、出店、言い換えれば露店という形で商売する予定だ。
リオン君の財産が入った金庫は、オリバー君達が森のエルフの里へ一時的に移動したらしい。
住居についても、一時的にエルフ達と同居することにした。
「旦那、まずは倉庫、それから雑貨屋、そして鍛冶場と研究室に……図書館?だったっけ」
俺は頷く。
雑貨屋は今より広くなり、飲食スペース、エルフ特製の薬コーナーも設置される。
エルフの生薬の中でも、俺が厳選した物を販売するつもりだ。
というか、地球には無かった珍しい生薬もあって、実験がなかなか大変だ。
植物魔獸マンドラゴラの日干しなんてものもあるんだからな。
生きたそいつの鳴き声を聞くと、発狂死すると言われている。
なので取り扱いは狂気耐性のある者が行うのだとか。
倉庫については、ヨツバの案により金属製のものを作ることにした。
俺が錬金術を用いて、チャールズ君はじめとする大工エルフ達の監修の元で作る。
鍛冶場は、リオン君の本に載っていた物の中で一番上等な炉を作る。
オリハルコン製だっけか。
確か在庫が少なくなってたはずだから、また採掘に行かないと。
図書館は、貴族の紹介状を持ってきた者に無料公開する予定だ。
本当は全員に無料公開したかったが、ヨツバから、貧民に本を盗まれるのが目に見えているから駄目だと言われた。
「そういや、研究施設は、森に作るとか言ってたような?」
タイプライターで『作ると言ったな、あれは嘘だ』と打つ。
「何で?」
そりゃ、俺が森で【森の主】称号を使って実験しても、意味が無いからだ。
実験というのは再現性、つまり、誰が何処で行っても同じ結果になることが何よりも重要だからだ。
そう考えると、町の中に有る方が他の研究員の利便性を考えるとベターだ。
ということをリオン君に書いたが、良く分からないという顔をされた。
10歳の少年には少し話が難しかったか?
「楽しみだなー、新しい店。
大きくなるってことは、もっとたくさんの人を雇うってことだよな。
どんな仲間が増えるんだろう?」
……。
……仲間?
俺は大きくなった店を、頭の中で運営シミュレートしてみた。
……。
しまったぁああー!
全然人手が足りないぞ!
タイプライターで『まだ誰も雇ってないし手配もしていない』と打つ。
「ええー?!
……いや、まだ店の改築が終わってないから間に合うか」
ヨツバと相談しよう。
そうしよう。
◇ ◇ ◇ ◇
「アー、大変デスネ。タシカニ人手ガ足リナイデスネ」
宿に入り、昼寝中のネルとナンシーさんを傍目に、ヨツバに相談する。
何故か棒読みの返事をしてきた。
タイプで『どうする?』と打つ。
「奴隷を雇いましょう! そうしましょう!
いやー、こんな時のためにお金を溜めておいてよかったです!
さあ、今すぐ奴隷商の所へ連れて行ってください!」
何でこんなにも生き生きとしてるんだヨツバは。
そもそも、そんな場所に2歳児を連れて行くと、何言われるか分かったものではない。
なので断った。
ヨツバが頬を膨らませているが、無視して宿を出ることにした。




