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16.英雄はどこに?

・フランベル4世視点



ここは城の中。

王室に兵士が入り、フランベル4世に対して敬礼する。



「陛下! 冒険者がバジリスクの討伐に成功したようです!」


「本当か?! 良かった、本当に良かった……」



王はさっそく報酬を与えるための書類を作ろうとする。



「……あの」


「どうした?」



書類作りをしながら聞く、



「本当に冒険者がバジリスクを討伐したのでしょうか?」



フランベル王の手が止まる。



「どういう意味だ?」


「回収したバジリスクの皮に、不自然な穴が残っていました。

戦闘で生じたにしては、えらく規則的な穴が」


「ふむ?」


「そして今回報告した冒険者、とてもバジリスクを討伐できる技量を持つとは思えません」


「しかし、現に死体があるのだろう?」


「極めつけは、彼らは頭部以外のバジリスクの肉を1kgたりとも持っていなかったことです」


「旅の食料として食べたのであろう?」


「彼らもそう言いました。

残った肉は腐るから捨てた、と。

ギルドで討伐の証として肉も差しだすよう要請されていたにも関わらずです」


「つまり、何が言いたい?」



フランベル王も、兵士の言いたいことが何となく予想出来た。



「討伐した者は、おそらく別に居ます。

それもギルドとは無関係の」


「冒険者が嘘をついている、と?

本当に討伐した者から盗みを働いたと?」


「拷問にかければ分かるでしょう」


「今、町で英雄扱いされて、もてなされている彼らを、か?」



そんなことをしたら王の名声が、がくっと落ちるだろう。

下手したらクーデターを起こされかねない。



「詐欺に慣れていない彼らはいずれボロを出すでしょう。

討伐したと申しているのは5人。

それぞれを別々に呼び出し、話を聞き出すのです。

もちろん公に呼び出しては警戒されるので、信用出来る兵士を使い、酒にでも誘い話を聞きます。

もし話が食い違えば、後日城へ呼び出し、バジリスクの皮の件を持ちだし問いただします。

本当のことを言うのを拒否するなら、その時拷問すればよろしいかと」


「う、うむ……そこまでする必要が?」


「国から金を騙し取ろうとする賊には、当然の報いを受けさせなければなりません」



◇ ◇ ◇ ◇



国王は冒険者を信用していた。

だからこそこの兵士の言う通り、冒険者5人から討伐の様子を聞き出した。

どうせ杞憂に終わるだろうと。


だが悲しきかな、彼らは口裏合わせが甘かった。

ボロはすぐに出た。


兵士の言う通り、置いてあった物を盗んだだけだった。

バジリスクの討伐報酬に目がくらんだのだ。


冒険者5人が王や民を騙していたというニュースは、やがて冒険者ギルドの信用を大きく落とすという大事件となり、冒険者ギルドには国から監査官が設置されるようになる。



「それで、バジリスクの皮で作ったテントの持ち主、というのは見つかったのか?」


「いえ、手がかりすら掴めていません」


「そうか。ところで、勇者達の育成は順調か?」


「はっ! バジリスクの脅威が去ったため、例の森で魔獣討伐の訓練をさせています!」


「うむ」



バジリスクを討伐した者がもし名乗り出たなら、討伐報酬を与え、さらに魔王討伐隊に加えたいと王は思った。


それほどの力がある者なら、わざわざ探さずとも、いずれその名が世界に知れ渡ることになるだろう。



「いったい、どこの誰だったのだろうな?」



名前の分からぬ英雄に心の中で感謝して、王は仕事を再開した。


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