140.人ごみに紛れ行く
・フランベルジュ視点
我は町の入り口に着くのである。
そして、不思議猫から貰った看板を見せるのである。
『我はフランベルジュである』と書かれているのである。
この看板と、王からの招待状を見せれば、城へと案内してくれるらしいのである。
王からの迎えの兵よ、早く来るのである。
まったく、聖竜を待たせるとは、しつけがなってないのである。
◇ ◇ ◇ ◇
・トミタ(猫)視点
「まだ迎えの兵士さんが来てないです~」
物陰に隠れたアウレネが呟く。
「まだ朝日も昇ってない時間じゃ。
あのガーゴイル、人間の活動時間を分かっておらん」
「にゃー(ふぁぁ……眠い)」
俺達はこっそりとフランベルジュを見守っていた。
が、何も変化がなく暇になったので、トランプで遊ぶことにした。
現在、ポーカー勝負中だ。
「にゃー(ツーペアだ)」
「スリーカードです~」
「フルハウスじゃ」
む、また負けか。
って、いつの間にかフランベルジュを迎える兵がやって来ているぞ。
「キュオオオオン!(遅い! 遅いのである!)」
「えっと、フランベルジュ様ですか?
招待状を見せていただけますか?」
「キュオン!(ほれ!)」
「はい。確認しました。
どうぞ、案内致します」
フランベルジュは、兵士達に連れて行かれた。
「……さて、そろそろ作戦開始じゃ」
「まず町に3軒ある奴隷商館を調べます~。
続いて王城にある奴隷留置所を調べますよ~」
「我らの目的は、あくまでエルフ奴隷の解放じゃ。
国が勝手に犯罪者に仕立て上げているだけで、彼らは悪くないのじゃ。
その他の種族や犯罪者連中は知らん。バステト様、協力していただけぬか?」
「……」
確かに、捕まったエルフ奴隷を解放してやりたいという気持ちは俺にもある。
だが、俺がもし協力すれば、それは王様やこの町に喧嘩を売ることになる。
そうなった時、俺の居場所はどうなるだろう?
ネルやマック君は今まで通り付き合ってくれるだろうか?
ヨツバは俺を邪魔者扱いするんじゃないだろうか?
勇者少年達は俺を討伐せざるを得ない状況に追い込まれはしないか?
恐らく、俺は町に居られなくなるだろう。
だから、見て見ぬフリをする。
アウレネ達がエルフ奴隷を解放するのを、見逃す。
他人の振りをする。
俺は薄情な人間だな。
……人間じゃなくて猫か。
「ま、バステト様が敵対しないだけでも良しとするかの。
アウレネや、出発じゃ」
「よ~し、やりましょ~。
えい、えい、お~!」
フランベルジュがやって来るということで、今日、王様は各地の貴族連中を招いている。
貴族が来るということは、その付き添いの世話役や兵士なども来るということだ。
物好きな領民もフランベルジュを一目見ようとやって来ているかもしれないな。
そのせいで町は大賑わいとなり、シルフ婆さんやアウレネが紛れたところで目立たない。
俺は手作りローブと仮面を身につけ、小人獣人のフリをすることにした。
今日はしばらく2足歩行だ。
俺達は町の喧騒に紛れて、ひっそりと奴隷商館へ向かった。




