109.(?)無能
新魔王軍が森に入って来た。
それを俺、アウレネ、シルフ婆さん、フランベルジュの4人で迎えることにした。
日が沈み、俺達の前に、2本の角を持った黒い筋肉ダルマな魔獣が現れる。
後ろにたくさんの魔獣を連れて。
「貴様が金眼夜叉か……?」
「にゃー(誰だそれ)」
「余は魔王ゴルン。この森に居る余の仇を討つために」
「ブブブ!(魔王様! そいつが金眼夜叉です!)」
魔王ゴルンさんと俺の会話の最中、豚顔魔獣が言う。
「なるほど、貴様がそうか。貴様が、ハイ・オークのデビッドを殺したのかあああああああ!」
ゴルンさんが叫ぶと同時に、ゴルンさんの後ろの魔獣達から火や雷が飛んできた。
俺達は後退し避けた。
「許さんぞおおおおお!」
ゴルンさんも俺に殴りかかる。
それを転がって避ける。
「にゃー(待った。ハイ・オークだが、向こうがいきなり襲ってきたから攻撃したんだよ。
当然の正当防衛だ。俺は悪くねぇ)」
ヨツバを背中に乗せていなければ、ハイ・オークと話し合いする余裕があったかもしれない。
いや、相手が聞く耳を持っていればの話だが。
「ふざけるなあああああ! 魔王たる余に意見する気かあああああ!
黙って余に殺されろおおおおおお!」
……何だこのイカれた奴は。
新魔王ってのは、人の話を聞かないのか。
「グルルルル!(魔王様、お下がりください!
ここは我らがグフッ?!)」
全身真っ赤のヒョウのような魔獣の頭に矢が突き刺さる。
ああ、猫っぽくて可愛い魔獣なのに!
全身7mくらいあるけど!
「雑魚は任せてください~」
アウレネの放った毒矢だ。
彼女は次々と的確に矢を射ぬいている。
シルフ婆さんは、物陰から電撃を放っている。
フランベルジュは、襲いかかって来た魔獣を倒して食らう。
「キュオオオン(我の体復活まであと107体である……)」とか言っている。
「何故だああああああ! 何故余の兵が、こんな雑魚どもに負けるうううううう?!」
こいつの連れてきた魔獣は、統制が全然とれていない。
それにここの森は複雑な地形をしているから、昨日今日来た奴だと動きが緩慢になってしまう。
加えてアウレネはああ見えて勇者少年達を圧倒するくらいの弓の名手、シルフ婆さんは元魔王、フランベルジュは元は竜。
数では負けるがこちらの方が格上なのだ。
「にゃおん(撤退してくれるなら、追い打ちはしないぞ。
早く帰ってくれ)」
ゴルンの攻撃を避けつつ言う。
フェイクも何もしてこない、力任せの単調な攻撃だ。
先ほどから何度も説得中だ。
この魔獣の群れの大将であるコイツが帰ってくれるなら、他の魔獣も無駄死にしなくて済むからな。
だが、頭に血が上っているのか、言う事を聞いてくれない。
俺の説得の仕方が悪いだけかもしれないが。
「にゃー(お前が撤退すれば、多くの魔獣の命を無駄にしなくて済むんだぞ。
早く撤退命令を出すんだ)」
「余に指図するなあああああああ!」
駄目だ。何を言っても聞いてくれない。
このままでは、多くの魔獣が、この無能な魔王のせいで命を散らすことになるだろう。
それくらいなら。こいつを倒して、連中の心を折る方がいいか。
俺はゴルンに飛びかかり、その首を咬み千切った。




