99.フランベルジュの昔語り
・ヨツバ視点
朝起きたら猫さんは帰ってしまったみたいだった。
私はどうやらMP切れで寝落ちしていたらしい。
やはり赤ん坊の体ではMPが少なすぎて駄目だ。
何とかする方法はないものか。
毎晩スキルの練習を繰り返しているから、ステータスが伸びると思ってたんだけど、簡単には成長しないらしい。
もっと気軽にステータスを伸ばす方法は……装備品とレベル上げかな?
どちらにせよ、あの猫さんの助力が不可欠だろう。
今度現れた時に、お願いすることは決まった。
装備品のおねだりと、パワーレベリングだ。
ああ、それと、HPやMPを回復するアイテムが無いかも聞いておこう。
四次元空間に仕舞っておけるし。
いざという時のために持っておいた方が良いだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
・トミタ(猫)視点
昨晩、ヨツバは【レッサーヒール】を覚えた後、すぐに眠ってしまった。
確か、アウレネが言っていたな。MPが0に近付くと体がだるくなる、と。
ま、彼女は未だ赤ん坊だ。
数年もすれば、身体が少しは出来上がるだろう。
スキルの訓練は、その時にでもすればいい。
というわけで、俺は自宅に帰ってきている。
かまどで火を焚きつつ、フランベルジュの昔話をタイプライターで打っている。
「キュオオオオオン!(そう! そこで我とかつての王は、巨大なオーガロードに立ち向かったのである!)」
こいつが古竜フランベルジュと呼ばれていた頃の話をしてもらい、それを文章にする。
これを王様に読ませれば、信憑性が増すんじゃないかと思ったので、フランベルジュに話させている。
それにしてもコイツ、ノリノリだな。誰かに聞いて欲しかったんだろうか。
「キュオオン! キュオン!(奴の放つ衝撃波! それが王の軍勢数十人を吹き飛ばす!
だが! 王は我を盾にして衝撃に耐えるのである! それから……)」
「にゃー(もうちょっと、ゆっくり話してくれ。タイピングが追いつかない)」
アウレネとシルフ婆さんは森を散策中だ。
今ここには俺とフランベルジュしか居ない。
ガチャン、ガチャンというタイプ音と、パチパチと鳴る火を焚く音、フランベルジュの鳴き声だけが聞こえる。
今日も森は平和だった。




