98.密会
今は真夜中だ。
眠い。とても眠い。
マック君に講義してやった後だから疲れて余計に眠い。
だが、ヨツバと会話する約束をしている。
俺は【念動力】でこっそりと管理人室の扉を開けるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
・ヨツバ視点
猫さんと呼ばれている転生者が約束通り来てくれた。
大きく口を開けてあくびしている。
私はといえば、たくさん昼寝したので何とか起きていられる。
窓ガラスは透明じゃなくて曇っているから、入ってくる月(?)明りは少ない。
猫さんの目が光っているように見えてちょっと怖い。
「にゃー」
猫さんが喋った瞬間、窓から入る光が少し強くなった。
光を作る【ライト】というスキルだ。
ナンシーさんも使っている。
『こんばんは』と猫さんは日本語で書く。
私の手の届く場所に文字盤を立てかけてくれた。
猫さんはその横に座る。
色々と聞きたいことがあるが、とりあえず一つお願いすることにした。
『かいふくまほうのつかいかたをおしえてください』
『【ヒール】?』と返事される。
『はい』
猫さんはしばらく何か考え、返事してくれた。
『呪文は知っているけど、取得条件が分からない。
実際に使ったのを見なければ取得出来ないかもしれない』
なるほど、他人のスキルを見て自分で呪文を唱えることで使用出来るようになる、ということか。
あくまで可能性だけ、ということは、才能や適性などが関係しているのかもしれない。
『ちょっと待ってろ』と書いた猫さんは扉を開け、外に飛び出す。
しばらくして戻ってきた。
何か手に持っている。
バッタ?
足が無いけれど……。
「にゃー」
猫さんが喋ると、何とバッタから足が生えてきた。
猫さんはバッタを木で出来たケージに入れた。
『今のがヒールだ。呪文は『この者に癒しを。レッサーヒール』
あるいは『この者に癒しを。ヒール』だ』
なるほど、回復魔法を実際に見せてくれたわけだ。
よし、やってみよう!
バッタに【フリーズ】を使いHPを削る。
……死んでないよね?
「あー、あー(『この者に癒しを。レッサーヒール』)」
感覚的に成功したと思うんだけど。
というか眠い。MPが少なすぎる。
猫さんが『おお、ヨツバ、取得してるぞ、【レッサーヒール】を』と書いた。
よかった。回復魔法はチート生活には必須だ。
この調子でスキルを増やしていくとしよう。
そして魔力切れでもう眠い。
おやすみなさい。
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名前:ヨツバ
Lv:1(0歳)
種族:人間
スキル:【鑑定Lv10】【四次元空間Lv3】【フリーズLv30】
【レッサーヒールLv1】(NEW!)
【経験値10倍】【習得Lv20】
ステータス:
HP 9/9 MP0/4
ATK1 DEF2 MAT3 MDF2 SPD2 INT35 LUK10
称号:【冷帝】
異世界に転生した人間。前世は椿宝女学園の学生。
美人で秀才だったが、人を寄せ付けない態度から冷帝とあだ名が付けられた。
実は小説家にニャろうの読専。
現在、ナンシーの二女。
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