番外話 ある日森の中でケモミミ少女に出会った(中編)
次の日の朝、ユエが起きたのにつられてオレも目が覚めた。
「~~~~~~」
「おい、大丈夫なのか。具合悪そうだけど」
外に出ようとしたユエがこちらに何かをいってきたが、うごきはぎこちなく本調子ではないのだろう。
オレもついていこうとしたが、手で押しとどめられた。この中にいろってことか。まあ、昨日あんな醜態をみせれば、うろつかせるのは危ないと思われるだろうな。
ユエがいなくなったあと、うろの中で考え事をしていた。
「どうすれば、元の世界にもどれるのかな。あー、全然わっかんねえ」
まるで答えのでないことを考えてると、憂鬱になってきた。
「だー、もうやめやめ。こんなときは猫のことを考えて落ち着こう」
猫のことを考えようとしたら、まずユエのことが頭にうかんできた。
「あのふわふわした毛並みなでさせてくれないかなぁ。というか、あの子めっちゃかわいいよな」
整った顔はテレビでみたアイドル以上のかわいさだった。
そんな子と一緒に寝たと思うと頬が熱くなってきた。
「いやいや、おれはロリコンじゃないからな」
猫の目が大きく丸っこい顔って子供特有の顔立ちと似てるから、猫好きはロリコンでもあるとネットで知り合った猫好きが言っていたのを思い出した。
もんもんとしていると、ユエが戻ってきた。
「~~~~~」
手には水筒のような革袋と、赤い果物をもっていた。
うろの中からでると、果物を手渡された。
果物はみずみずしくシャクシャクした歯ごたえで、酸味のある味だった。
食べ終わると、水筒を手渡された。
「どうやってのむんだ?」
おれが手渡された水筒を見て戸惑っていると、ユエがお手本を示すように飲んで見せてから、また渡された。
「ああ、そこのフタをコルクみたいにひきぬけばいいのか」
フタをひきぬいて口をつけると、なかにはひんやりした水が入っていておいしかった。
飲んでから気づいたが、これって、か、間接キスだよな。
耳が赤くなるのを感じながら水筒をユエに返すと、不思議そうな顔をされた。
それから、ユエはまたうろの中に引っ込み寝はじめた。
具合の悪そうなユエをなんとかしてやりたいが、オレは医者じゃないし、町がどこにあるかもわからない。
2,3時間たったころ、ユエが起きてうろの中からでてきた。
「~~~~~」
ユエがなにかいってきて、どこかにいくようだ。
「うし、オレもついていくぞ」
さすがに、ずっとなにもしないままお世話になりっぱなしになるわけにはいかなかった。
やる気をみせているオレを見て、ユエは不安そうな顔をしていたが、手をつかんで一緒に歩き出した。
握った手からユエの手の皮膚が硬くなっているのがわかり、こんな年で苦労してるんだなとしんみりとした。
歩いていると、じたばたと暴れるウサギがみえた。
ウサギの首には縄がかかっていて、罠にかかっているようだ。
「~~~~~~」
ユエがウサギを指さし、満面の笑みを浮かべていた。
なにをするのかと見ていると、ナイフを抜き、ウサギの首を落としてから逆さにして血を抜いていた。
(うわっ、グロい)
顔が強張るのを感じながら、ユエが手馴れた調子で内臓を抜き皮をはぐのを見ていた。
やがて、スーパーでみるような肉の状態になった。
肉をもってうろの前にもどると、ユエは近くの地面におちている枯れ枝や枯葉を集め始めたので、オレも手伝って集めた。
いままで何度か焚き火を起こしているようで、焚き火跡に集めた枝や枯葉を山にし始めた。
ユエは金属片と硬くとがった石をぶつけ始めた。
これが火打石ってやつか、始めてみた。しかし、ここは文明の利器の出番ってヤツだな。
「ユエ、火付けならおれにまかせろ」
ポケットから取り出したジッポライターをユエにみせて、さがるように手で示した。
「~~~~~~」
フタをはずし火をつけると、ユエは驚いた顔をしていた。
なんで高校生がライターもっているかというと、中学生のころ映画でみたジッポがかっこよくて購入した。フタを開け閉めする手遊びをして、雰囲気にひたっていたりもした。
火が枯葉に燃え移り、太目の枯れ木が燃えるようになり火勢が安定しだした。ユエは、削ぎ切りにしたウサギの肉を枝に差して焼きだした。
「なにこれ、うまっ!! なんていうか…… ウサギの味がする」
焼けた肉を受け取り、さっきまで生きていたウサギを食べているんだと思うと複雑な気分がした。
1週間が過ぎた頃、さすがに体を洗いたくなってきた。
「ユエ、近くに体を洗える場所ないかな」
オレは体をあらうジェスチャーをすると、ユエに手をひかれて小川まできた。
なるほど、毎日ここから水を汲んできてたのか。
ユエはにこにことこちらを見ていた。女子にみられている中、服を脱ぐのははずかしいなと迷っていると、ユエが服を脱ぎだした。
え、ちょっと、ユエさんやそれはまずいですよ。
ユエはすっぽんぽんになると、手ぬぐいを水にひたして体をぬぐいだした。
なんというか見とれてしまいそうな体だった。きめ細やかな白いはだと、すらりと伸びる手足、それでいてしなやかさをかんじる筋肉がついていた。
そして、なによりも尾てい骨のあたりから生えているしっぽがたまらなかった。
だけど、問題は他にあった。
「そのケガはどうしたんだ…」
ユエの体には多数の切り傷や刺し傷が治りかけのものから、まだ生々しい傷跡を残すものもあり、とくに腹部の傷がひどかった。
「~~~~~~」
ユエは傷にしみるのか顔をしかめていた。
それから、服も川で洗って、服の水気をしぼり出していると
「~~~~~~」
ぬれている服を指差して、平らな岩に服をたたきつけた。
「なるほど、こうすると脱水できるのか」
まねしてたたきつけてみると、少し湿った程度まで水分を飛ばすことができた。
まだ寒い季節なので、風邪を引かないうちに焚き火にあたって暖をとることにした。
おれはうろの中においていたバッグの中からあるものをとりだした。
「これ薬なんだけど、ぬってみないか」
おれは、コロナイン軟膏の容器をとりだしてユエにみせた。
人間だろうと猫だろうと、切り傷打ち身なんでも効く万能塗り薬だ。怪我した猫にぬるときのためにもっていた。
おれは、中身を見せて塗るジェスチャーをすると、ユエは中身をみてにおいをかいだら、理解してくれたようで、上着をとり上半身はだかになった。
おれは間近にみる女の子の素肌にどきどきしながらも、慎重に軟膏をぬっていった。
傷にしみるようで、ンッ、とか妙な声を上げるので塗り終わる頃には頭がのぼせそうだった。
「…よし、おわったぞ」
「~~~~~」
声をかけると、ユエは笑顔でなにかいってきた。
あ、いまのはありがとうだとなんとなくわかった。
ユエは、おれが何かすると表情がころころと変わり、わかりやすいというのもあり、この1週間のやりとりで、なんとなくユエの言っていることがわかるようになってきた。
「ほんと、子猫みたいなやつだな、おまえは」
そうおもうと自然に手が伸びて、ユエの頭をなでていた。
ふわふわした髪の毛をなでている間、ユエは気持ちよさそうに目を細めていた。




