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後日談4 うちの坊ちゃまはかわいい

後日談はこれで打ち止めです。書いてたら楽しくて4話もできていました。

わたしはユエ、領主様のお屋敷でメイドとして8年勤めている。


わたしの主人であるアレキサンダー様とは色々あったが、いまではよい主従関係を築けていると思う。


エリザベス様がプレンジア家に嫁いできてから、屋敷はますますにぎやかになった。

エリザベス様はプレンジア家とフェアウッド家の共同経営の織物工場を立ち上げ、フェアウッド家から羊毛をつかった製品を楽しそうに作っている。


そんな屋敷にも、ひとつの変化が訪れた。

エリザベス様が第一子ジークハルト様を出産なさった。


エリザベス様ゆずりの明るい栗色の髪をしていて、アレキサンダー様に似た男の子だっただった。


生まれた直後はエリザベス様が授乳をしていたが、その後の世話は乳母のミモザさんがしていた。

ミモザさんは20代後半の女性で、二児の母だそうで育児はお手の物だそうだ。


屋敷の掃除をしていると、気がつくと育児室の前ばかりを掃除していた。

ジークハルト様の泣き声がきこえると、あわてて育児室のドアをあけて中の様子を見に来てしまった。


そんなわたしをみてエリザベス様が苦笑しながら

「ユエも、抱いてみる?」


そういいながら、ジークハルト様を差し出してきた。


「…よろしいのですか?」


わたしはおっかなびっくり受け取った。


「頭を支えて、胸にしっかり抱えてね」


幼いジークハルト様の手足は短く、指は触っただけで折れてしまいそうだった。

こわごわと抱いていると、うでの中のジークハルト様が笑いかけてきた。


「か、かわいい~」


おもわず、頬がゆるんだ。


それから、ヒマをみつけてはジークハルト様のところに訪れた。

ミモザさんにおしめの取り替え方などを教えてもらいながらお世話の手伝いをした。


オルレアン様も孫が生まれたときいてやってきた。

ジークハルト様の顔をみていままでみたことがないデレデレした顔をしていた。立派な孫バカと化したオルレアン様は、砦から屋敷にもどってくる回数が増えた。


生後4ヶ月が過ぎ、首がすわってきて表情が増えてきた。部屋に入ると嬉しそうな顔をしてくれるが、用事ができて部屋をでていこうとすると不機嫌な顔をするようになった。


生後7ヶ月を過ぎたあたりから、体もしっかりしてきてひとりで座れるようになった。そのへんにあるものを手にとっては口に入れようとして、慌ててとめることがあった。

あるとき抱き上げていたら、メイドキャップをとられてしまい、頭の獣耳がでてしまったことがあった。

そのとき、ミモザさんにも見られて最初はびっくりした顔をしていた。でも、もともとわたしのことはウワサできいたことがあったそうで、納得した顔で

「このことはヒミツにしとくね」

といってくれた。

触ったときの感触が気にいったのか、ジークハルト様はずっと触っていてくすぐったくて困った。


生後9ヶ月を過ぎ、ハイハイで部屋のなかを動き回るようになった。いきおいよく動いて壁に頭をぶつけて泣いているのを、抱いてあやしたりしたこともあった。


生後10ヶ月、イスにつかまって、必死にバランスをとりながら立ち上がろうとするようになり、みててはらはらした。


生後11ヶ月、とうとう言葉をしゃべりだした!!

エリザベス様やミモザさんをみて「ママー」といい、アレキサンダー様が期待に満ちた顔をしていたが、何も言わなくてがっかりしていた。


生後1年がすぎ、手を突かずにひとりで立てるようになり、屋敷の中を動き回るようになった。


「ねーね」


「はいはい、どうしました。ジークハルト様」


屋敷で掃除をしているとジークハルト様がまだおぼつかない足取りで近づいてきて、抱きついてきた。


ジークハルト様が2歳になったとき、ミモザさんの家の仕事が忙しくなったそうで辞めることになった。そのとき、ジークハルト様は寂しそうにして、ミモザさんに抱きついてしばらく泣いていた。


3歳になったころ、カティナねえさんが辞めることになった。しばらく前から、孤児院のタニアばあちゃんの腰が悪くなってきたので、孤児院の手伝いを始めたいと考えていたそうで、ジークハルト様も成長したので辞めようと決めていたそうだ。

代わりに、孤児院にいたフィーフィちゃんという子が新しくメイドとして入ってきた。なかなか反応が面白くかわいい子だった。



4歳になったころから、口が達者になってきて、ジークハルトさまが質問攻めにしてくるようになった。

「なにをしてるの?」からはじまり「どうして、なんで」ときいてきた。


質問にひとつひとつ答えているうちに、自分もやりたいといいだしたが、使用人の仕事をやらせるわけにはいかないと止めようとした。

しかし、エリザベス様が何事も経験だし、好きにやらせなさいといわれて、後ろからついてくるジークハルト様にやり方を教えながら一緒にやっていった。

できたときに褒めるとうれしそうに笑っていた。

このころから呼び方が、“ねーね”から“ユエねぇ”に変わっていた。



5歳を過ぎたあたりから、領主となるための勉強や、剣の訓練が始まった。

勉強についてはクロードさんが担当し、剣の訓練はアレキサンダー様がはりきって教えていた。弓の訓練については、わたしに一任してもらえた。


6歳になり、ただ的に当ててるだけでは飽きてくるとおもって、許可をいただいてから森に一緒に狩りに出かけるようにした。

初めての獲物はウサギで、うれしそうにアレキサンダー様とエリザベス様に自慢していた。


7歳になったあたりから、アレキサンダー様に似たのか、イタズラ好きな性格となり色々と仕掛けてくるようになった。


「ユエねぇ、プレゼントがあるんだ」


そういって、カエルを手のひらに乗せてきた。


「ありがとうございます。でも、このカエルは皮にどくがあるので食べられないんですよ。今度食べられるカエルをとりにいきましょう」


不満そうな顔をした後、同じことをフィーフィにもしてようで、遠くでフィーフィの叫び声が聞こえた。


あるときから、うしろからこちらの様子をうかがいスカートをめくってこようとするようになった。

スカートをめくられると中の尻尾をみられてしまうので避けていると、ムキになって何度もするようになってきた。

わたしの獣耳や尻尾は、幼い頃に一度みられったきり見せないようにしていた。普通のひとにも、同じものがついていると勘違いしないようにしなくてはいけない。


フィーフィちゃんにもスカートめくりをするようになったので、条件をつけてやめさせることに成功した。

しかし、その日からやる気をさらに出して訓練に励むようになり、相手の動きを読む方法を質問するようになってきた。


そして、8歳となり、貴族学校での寄宿生活を始める前日に、ジークハルト様から模擬戦を挑まれた。


「ユエねぇ、屋敷からしばらくはなれるから、その前に一本とらせてもらうよ」


これまでに、模擬戦の相手を務めることがあり、まだ一本とられたことはないが、成長が楽しみだ。


模擬戦は裏庭の訓練場で行われ、アレキサンダー様とエリザベス様が横でみていた。

ジークハルト様は身長にあわせた木剣を両手でもって、正眼に構えていた。

わたしは、両手に一本ずつナイフ程度の長さの木の棒をもって構えた。


「セイッ!!」


ジークハルト様は気合をいれる掛け声と共に、するどく振り下ろしてきた。

わたしは体をずらしながら避けて、反撃をいれようとしたが、すばやく後ろにさがられて範囲外に逃げられた。

それから、攻撃をしかけては逃げることを繰り返してきた。どうやら、ジークハルト様は武器のリーチの差を生かして、慎重にスキを伺っているようだ。


それなら、今度はわたしから突っ込んでいった。

急に切り込んできたわたしに、焦って剣を振り下ろしてきたが、体勢をくずすように片手の棒で剣をすべらせて、もう片方の棒で攻撃を加えようとしたら、ジークハルト様が顔から地面にむかってこけてしまった。


「だ、大丈夫ですか」


わたしは慌ててジークハルト様に駆け寄った。


すると、ジークハルト様が手を伸ばしてきてスカートに端に指が触れた。


「く、ふふふ、やったぞ、とうとう触ったぞ!!」


ジークハルト様は顔に土をつけたまま、勢いよく立ち上がると満面の笑みを浮かべていた。


「よーし、よくやったぞ!! ジークハルト」


「父上、ありがとうございます。作戦はうまくいきました」


やられた…… これはアレキサンダー様がオルレアン様にやられた状況と同じじゃないか。


二人はハイタッチを交わし喜び合っていて、エリザベス様は横で呆れたような顔をしていた。


「はぁ…… お見事です。完全にだまされました」


さて、どんなことをお願いされるのやら、ある意味楽しみだ。


「ボクの願いは、父上と母上が隠しているユエねぇの秘密を教えてもらうことだ!!」


隠していることはなんとなくばれていたのか。ここで、見せても良いのかアレキサンダー様のほうをちらりと視線を送ると


「まぁ、いいだろう。そのうちバレたのだろうから、見せてやれ」


「はい、かしこまりました」


わたしは、頭のメイドキャップを取って頭の獣耳を露にした。


その姿をみて、ジークハルト様は固まっていた。

そして、なぜかエリザベス様が手を怪しげにわきわきと動かしていた。


「ゆ、夢じゃなかったんだ…… ネコミミのユエねぇは本当にいたんだ」


ジークハルト様は顔を赤くして、じっと見ていた。


「ぼくは、夢のなかでネコミミの生えたユエねぇに会ったことがあるんだ」


幼い頃にみた記憶のせいで、夢にでたのかもしれない。


「ね、ねぇ…… 触ってもいい?」


「えーと、はい。どうぞ……」


もじもじしながらジークハルト様がお願いしてきて、わたしは頭を差し出した。


「ふにふにしてて、やわらかい……」


「ああ~、ずるいわよ、ジークハルト。わたしだってめったに触らせてもらえないのに!!」


エリザベス様からよく頭をなでさせてくれないかとお願いされることがあるのだが、なんか目が怖いので断っていた。


しばらく触って満足したのかジークハルト様が開放してくれた。


「ユエねぇ、もう一つお願いがあるんだ」


「だめですよ。お願いはひとつまでです」


「じゃあ、こんどはユエねぇから一本とることができたら、もう一つのお願いを聞いてもらえる?」


「はい、受けて立ちますよ」


決意を秘めた目でジークハルト様が見つめてきたので、わたしも目を見ながら返した。


その様子を見ていたエリザベス様が、あらあらこれはと嬉しそうに笑っていた。


次の日、馬車に乗って王都の貴族学校にむけてジークハルト様が出発した。


「ユエねぇ。学校で腕を磨いて必ず一本とってみせるから、待ってて」


「はい、楽しみにお待ちしております」


(うーん、あそこまで意気込んだお願いってなんだろう)


成長したジークハルト様が帰ってくる日を楽しみに待つことにした。


貴族学校でジークハルトがなにげなくとった行動が、周囲の常識からはずれ騒動を起こしていくのは、また別の話。

ユエ「ジークハルト様、かわいすぎです」

アレキサンダー「おまえも結婚して子供をつくったらどうだ」

ユエ「結婚かぁ、いいですね~」

アレキサンダー「お前を選ぶ相手はきっと幼女趣味なのだろうな」

ユエ「どういう意味ですか!?」

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