後日談3 うちの先輩はおかしい
わたしはフィーフィ。プレンジアの街の領主様のお屋敷でメイドをしている。
孤児院で育って13歳となったとき、孤児院にきたカティナねえさんから、屋敷で働かないかと誘われた。
カティナねえさんはメイドを辞めて、孤児院の手伝いをはじめるので、代わりの人間がほしいそうだ。
街で聞く領主代行様は、前回の戦争の英雄であり、住民の声を反映してくれる為政者という評判が流れていて、ときどき街中で奥様と一緒にいる姿を見かけることもあり素敵な方だと思っていた。
そんな屋敷で働けるならと思い、すぐに了承した。
屋敷に勤め始めて、なにか粗相をしないか緊張していたが、そんな緊張感なんてあの人にあったらすぐに薄れた。
ときどき孤児院でみかけることがあり、もしかして孤児院に昔いた子が遊びにきてるのかなと思っていたが、まさか屋敷で会うことになるとは思わなかった。
最初は、自分より年下にしかみえない子に色々教わるのは抵抗があったが、その仕事ぶりをみて考えがかわった……
なんで、客間やアレキサンダー様や、エリザベス様の居室のシーツとかの洗い物をいっぺんにもっていけるんだ!?
山になってて、姿が見えなくなり、洗濯物が歩き回っているようだった。
なんで、脚立を使わずに庭木の手入れをしているんだ!?
本格的な手入れは専門の庭師さんに頼むらしいが、普段から草抜きや庭木のちょっとした手入れをいていると聞いた。庭木の形を整えるために普通は脚立を使って上のほうの枝を切るのだが、身軽に木を上っていきひょいひょいと終わらせてしまった。
さらに、芝生を刈るときは巨大な鎌を取り出しあっという間に終わらせていた。
なんていうか、とうていわたしにはマネできそうもないことばかりで唖然とさせられた。
自分より大きすぎるものをみるといろんな基準が狂ってくるんだと実感した。
それ以来、この年上にはとてもみえないひとを“ユエ先輩”と呼ぶようになった。
「ユエ先輩~、ちょっときいてくださいよ」
「フィーフィちゃんどうしたの?」
「最近、ジークハルト様がスカートをめくってくるのですよ。孤児院なら、そんなガキにはゲンコツを落としてこらしめていたのですが、そういうことをするわけにはいかないので困っているのですよ」
「ああ、フィーフィちゃんもやられてたのか。アレキサンダー様に似てずいぶんとイタズラ好きな子になったなぁ」
ユエ先輩はにこにこ笑いながら、わたしの話をきいていた。
なんというか、ユエ先輩はものすごーくジークハルト様に甘い。そのせいか、ジークハルト様はユエ先輩にすごくなついていて、まるで兄妹のようだった。
わたしがお屋敷に入ってきたころ、ジークハルト様はまだ3歳で、いつもユエ先輩の後ろをちょこちょことついて回っていた。
その様子をみていたアレキサンダー様が
「ジークハルトはほんとうにユエが好きだなぁ」
と笑いながらいった。
「ちちうえ、おおきくなったら、ユエねぇとけっこんします」
それを聞いたアレキサンダー様はそうかそうかといいながら大笑いし、エリザベス様はあらあら楽しみねといいながら嬉しそうに笑っていた。
アレキサンダー様とエリザベス様のユエ先輩に対する接し方も、主人と使用人というよりも気安い友人同士のようで、とてもうらやましかった。
ユエ先輩に相談したあと、ジークハルト様からのスカートめくりはなくなった。あれも一種の親愛の表現だと思うと、ちょっと寂しい気分もした。
ただ、そのあとユエ先輩を後ろからつけねらうジークハルト様をみると、やっぱりやめてもらってよかったと考え直した。
初顔合わせのとき
カティナ「仕事でわからないことがあったら、ユエにきいてね」
フィーフィ「え、こんな小さい子で大丈夫なんですか」
カティナ「ユエはあなたより3歳年上のベテランメイドだよ」
フィーフィ「ファッ!?」( ゜Å゜;)




