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34. 開戦

アルステーデ王国の南には幅の広い河が流れ、カスール神聖帝国との国境となっている。さらに河から王国側には山脈が連なっているため、帝国側から王国側に入るための道は限られている。

その経路をふさぐようにガプラス砦が建てられ、王国を守る盾となっている。

ガプラス砦はプレンジア領の南端に位置し、石造りの頑丈な高壁と、分厚い扉によって強固なつくりとなっている。


砦に詰めている兵は、1年間の砦守備の任務に入り、任期が終了すると故郷にもどることができる。

兵士たちがいつものように高壁の上に立ち、国境方面に目を向けて監視を行っていた。


「異常はないか?」


「異常なし!!」


昼になり交代のためにきた兵士と引継ぎを行い、明け方からの監視の仕事から解放されて、兵士はほっと息をついた。


「あとはまかせて、ゆっくり休んでろよ」


「そうさせてもらうよ」


兵士は任期が終わりに近づいていて、故郷に帰る日を指折り数えていた。


「ん?おい、なんだあれは」


交代に来た兵士が指差す方向には、河を渡ってくる船団がみえた。


「あれは…、帝国のやつらの軍用の船だ」


「おれは隊長に報告してくる!!」


先ほどまでの空気は消えて、兵士たちはあわただしく動き始めた。



屋敷の掃除をしていると、門の方から兵士が急いで入ってくるのが見えた。

兵士は執務室に通されて部屋の中に入っていった。

少しすると、兵士は執務室からでてきて、そのまま足早に屋敷から出て行った。

兵士が急いでいるときなんてロクでもないことが起きる前兆だろう。


アレキサンダー様が緊張した面持ちで指示を出す声がきこえた。


「クロード、すぐに準備をはじめる。各機関に通達せよ」


「かしこまりました」


屋敷には衛兵隊長、各ギルド長など街における重要な地位にいる人たちが集められた。

食堂が会議室として使われ昼をすぎ日没をすぎたころ、ようやく終わったようだ。

出てきたひとたちの顔はみな緊張していて暗かった。


次の日、街中に戦争が起きるという知らせが出された。

プレンジアの街からは、国境砦への援軍を送ることになった。

国境近くのプレンジアの街では、市民は予備兵として兵役を課せられていて、戦時には砦の防衛戦力となる。

街は戦争への緊張で騒然とした雰囲気に包まれた。


砦に兵を送るための準備でアレキサンダー様とクロードさんはあわただしく動き回っていた。

夕方になったころホールに使用人たちが集められた。


「現在、帝国が国境砦前に布陣し、王国に降伏を求めてきている。だが、国王陛下は断固として屈することは選ばないと返答し、帝国からの宣戦布告をうけた」


もう、すでに帝国軍が迫ってきてるのか。


「国軍は防衛のための準備をすすめているが、国境砦にたどり着くまでに時間がかかる。そのため、プレンジアの街からの援軍をすばやく送り届ける必要がある」


アレキサンダー様はここで言葉を切り、ここにいる使用人たちを見回した。


「明日、オレは援軍を率いて砦に向かう。お前たち、この街のことをたのんだぞ!!」


アレキサンダー様の言葉をきき、みんな緊張に満ちた顔をしていた。


このときのアレキサンダー様は決意に満ちた立派な顔をしていた。だけど… どこか思い詰めていて不安を感じた。


「わたしもついていきます」


「だめだ、おまえは残れ」


アレキサンダー様は厳しい顔で断った。


「たしか、ハンターにも召集がかかっていたはずです。わたしもハンターなので大丈夫ですよね」


わたしは、銅版でできたハンター証をみせた。


「ふん、おまえがきても。やることなどない、ここでおとなしく待ってろ」


突っぱねるようにアレキサンダー様はいってきた。

しょうがないので、奥の手を使うことにした。


「しかし、あの夜、アレキサンダー様にずっと共にいろと言われ…」


わたしが言い切る前に、アレキサンダー様があわててわたしの口を抑えた。

口を抑えられながら、アレキサンダー様の目をじっと見つめた。


「はぁ… 好きにしろ」


あきらめたように言ったアレキサンダー様にいったので


「はい!!」


元気よく返事した。

このやり取りをみていた、他のひとたちはなんだか微笑ましいものを見るような顔をしていた。


次の日の早朝、街の門の前に兵士が並び、先頭に馬にまたがったアレキサンダー様が立っていた。

わたしはハンター用の服を着て弓を背負い、アレキサンダー様のそばに控えていた。

出発する兵士たちを見送るために、街の住人たちが門の前に集まっていた。


「街のものたちよ、われわれは必ず帰ってくる。安心して待っているがよい」


アレキサンダー様は住人たちの方をむいて、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「がんばれよー」

「帝国軍のやつらなんかに負けるなー」


住人たちは声援の声をあげ、その声を背に受けながら兵士たちは出発した。



朝に出発した援軍は夕方前に砦に到着した。


砦に到着したプレンジアの街からの援軍は、歓声と共に迎えられた。


「父上、ご無事でしたか」


「きたか… 待っていたぞ」


オルレアン様は複雑な心境を隠すように、アレキサンダー様を出迎えた。


「戦況はどうでしょうか?」


「正直、きびしいな。国軍がくるまで持ちこたえられればいいほうだ」


砦前にはおびただしい数の帝国の兵士が布陣していて、それをみた兵士たちの顔は暗かった。


「む、ユエ、おまえもきていたのか」


アレキサンダー様の背後で控えていたわたしに声をかけてきた。


「少しでもお役に立てれば幸いです」


「そうか、頼りにしておるぞ」


砦の防衛のための会議が行われ、アレキサンダー様は高壁守備の指揮を執ることになった。

わたしも弓隊に配置され、高壁の右側の方で待機していた。

砦の各所にかがり火がたかれ、相手の動きへの警戒をが常に行われた。


「なんだ、嬢ちゃんおまえもきちまったのか」


「おじさん、よろしく」


配置された隣には城門でよくみかける衛兵のおじさんがいた。狩りにでかけるときなど、城門で会うことが多く顔見知りになっていた。


「はぁ、まったく、おまえさんみたいな子供まで駆り出されるとはな…」


「いいんだよ、おじさん。わたしは来たくてここにいるんだから」


おじさんには娘がいて、よくその親バカっぷりをきくことがあった。わたしも子供ということで、気に掛けてくれていた。

そのまま夜が明けても敵の動きはなく、兵士たちには緊張状態が続いた。


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