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27. エリザベスの夢

翌朝、エリザベス様といっしょに、メイド服やドレスを注文しているなじみの服屋にいった。


「ブラウンさん、おはようございます」


「やあ、ユエちゃん… おお、すごい美人さんじゃないか」


店の中にいた店長のブラウンさんに挨拶すると、エリザベス様に食いついてきた。


「新しい服がほしいのだけど、相談にのってもらえるかしら」


「よろこんで承ります」


エリザベス様が微笑みながらいうと、ブラウンさんはもみ手で返事をした。


「最近の流行の服がほしいのだけど、いくつかみせてもらえるかしら」


「青や黄の服が主流でしたが、最近白を基色として服がはやり始めています」


そういえば、この間つくってもらったドレスは純白だったな。


「あれは挑戦的な作品だったよ。ユエちゃんの真っ白な髪をみた瞬間ビビっときたのさ。ユエちゃんが着ている姿をみて、問い合わせがけっこうきたよ」


わたしは宣伝につかわれたのか。ブラウンさん軽そうにみえるけどけっこう商売上手なんだな。


「でもね、純白の布ってのは手に入りにくくてね。注文がきても数がつくれなくてこまってるんだよ」


そのあとも話をききながら服を見せてもらい店をあとにした。


「なかなかいい店だったよ。おかげで参考になることが聞けたわ」


エリザベス様は熱心に手元の紙にさっききいたことを書き付けていた。


「それでは、南商業区に参りましょう」


道の脇に天幕をたてて商売をしているものが多数おり、食べ物やアクセサリー、服飾など様々なものであふれていた。


「へえ、ウワサどおり活気に満ちているわね」


エリザベス様はあたりを見回しながら、興味を引くものを探していた。


「よっ、ユエちゃんじゃないか!!」


屋台で売り物をしているおじさんに声をかけられた。お使いでくるときによく買い食いしていて顔なじみになっていた。


「あら、おいしそうね。2本いただけるかしら」


「あいよ!!いやあこんなべっぴんさんに食べてもらえるなんてうれしいねぇ」


串に肉をさして焼いたものを注文して、エリザベス様がわたしに手渡してくれた。


肉は肉汁をだしながら、香ばしいにおいをだしていておいしそうだった。


「おじさん、このあたりで服をうってるとこってあるかな」


肉串をたべながら店の場所を教えてもらい、おじさんに礼をいってから行ってみることにした。


いくつか店をまわり、普段着や作業着、旅用の服などいろんな服をみてまった。

ある露天でエリザベス様が片隅におかれた服をみていた。


「店主さん、変わった服だけど、どこで手に入れたのかしら?」


「ん、ああ、この服は売り物じゃなくてオレが使ってるものさ。行商をしていたときに北の街でかったものでね、寒いときに重宝してるよ」


全体的にもこもことしていて暖かそうな服だった。


エリザベス様が服を見ながら、中に綿がつめてあるのか、綿の量を調整すれば…と独り言をいっていた。


「お客さん?」


「ああ、すまない。また寄らせてもらうわね」


怪訝な顔をする店主に謝って、店から離れた。


「エリザベスさん、大体みまわったようですが、いかがしますか?」


「そうだね、十分ネタもあつまったしそろそろ帰ろうか」


宿にもどり女将さんに挨拶をして、預けていた馬を受け取り街から出た。帰りもエリザベス様の後ろで馬に乗って、夕方ごろにフェアウッド家の屋敷に戻ってきた。


「ユエ、ありがとうね。おかげでいい案がでてきそうよ」


エリザベス様はワクワクした顔をしていて、なんだかおもちゃに夢中になっている子供のようだった。



次の日、エリザベス様を手伝って服をつくっていた。


「着心地はどうかしら?」


昨日みた服を参考に、二枚の布の間に羊毛を詰めたものを試作して、わたしが着心地をみていた。


暖かいがもこもこしすぎて動きづらかった。


「うーん、むずかしいわね」


「服のふくらみを抑えるために、こうしたらいかがでしょうか」


わたしは針と糸をもって、全体を方眼紙のように縫っていき中の羊毛のふくらみを抑えた。


「なるほど、これなら羊毛のふくらみをおさえられるわね」


エリザベスさまが調整した服を見ながら、うなずいていた。


「この方法なら、服以外にもつかえそうね」


「羊毛をつめた掛け布団もあると冬は暖かそうです」


思いつきでいってみたが、エリザベスはなるほどといいながら考えこんでいた。


お茶の時間となりいつもどおり、一緒に座って飲んでいた。


「商品の案がだいぶまとまってきたわ。あなたが手伝ってくれたおかげね」


「滅相もありません。エリザベス様のお力ですよ」


エリザベス様がわたしを持ち上げるようにいってきたが、服の作成はエリザベス様がほとんどこなしていた。


「そんなことないわよ、こうやって相談しながらできる相手がいるとだいぶちがうのよ」


そういったエリザベス様は寂しそうな顔をしていた。


「エリザベス様は、どうして羊毛の生産を新しくはじめようとなさったのですか?」


「きっかけは、その服かしらね」


エリザベス様が指さした先には、簡素なつくりのワンピースがあった。


「お父様から羊毛の生地をもらって、好きなものを作ってみなさいといわれて、初めてつくった服なのよ」


フェアウッド領ではそれぞれの家で数頭の羊を飼っていて自分たちの服をつくっている。

そこから服作りに興味を持つようになったが、本業は牛や豚の飼育なのが不満だったらしい。


「あるとき、通いの商人が、羊毛は買い手がおおくもうかるって話をしてるのを聞いたのよ。これはチャンスだとおもって、本格的な羊毛生産をお父様に提案してみたけれど、代々やってきたことだけを続けていけばいいんだっていわれてしまってね」


エリザベス様は眉根をよせながら肩をすくめた。


「説得はやめて、先に結果をだせば考えをかえてくれるとおもって、場所を借り試験的に始めて今に至ってるってわけよ」


最初は放牧中の羊を逃がしたり失敗ばかりで周囲の目が痛かったわと苦笑していた。


「羊の飼い方、頭数を増やす計画の立案、商人との交渉、はじめてのことばかりで戸惑いながらも試行錯誤してやっていくのは楽しかったわ」


エリザベス様はひとりでどんどんすすめていくのが好きなタイプみたいだな。


「アレキサンダー様は領地の管理や街の改善を精力的になさってるようだけど、どういう風にやってるのかしら」


(う… 外部からみるとそういう風にみえるのか)


「ここだけの話なのですが、実務面ではほとんど執事のクロードさんに頼りっきりですよ。領地のお金の管理もメイド長のメールビットさんに頼ってます」


意外そうな顔をしながらエリザベス様はきいていた。


「エリザベス様はどうしてアレキサンダー様を見合いの相手にお選びになったのですか。アレキサンダー様のウワサについてお耳にいれているでしょうに」


「そうね、英雄の放蕩息子だとか、プレンジア領の行く末が不安だとかきいているわ」


やっぱり、そのへんはしっかり調査済みか。


「でもね、最近の行動についてのウワサも聞くようになってね。将来性に期待したってところかしら」


おお、アレキサンダー様の最近のがんばりが評価されているのか。


それから話を続けていると、エリザベス様のカップが空になっていたので注ぎ、ついでに自分のも入れた。


「ユエ、これをいれてみなさい。香りが楽しめるわよ」


そういいながら、なにかの液体が入った小瓶を渡してきた。

数滴入れてみると、薬草のいい香りが紅茶から漂ってきた。


「すごいいい香りですね。なにをつかっているのですか…」


紅茶を飲んだ後、なんだかまぶたが重くなってきた。


「ユエ、どうしたの。大丈夫…」


「申し訳、ありません… なんだか、頭が…」


エリザベス様の声がきこえるが、意識が薄れていった。

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