23. ある日のアレキサンダー様
スラム地区での仕事がひと段落してきたころ、アレキサンダー様がまた嫌がらせをしてくるようになった。
以前のやってた洗濯物をひっくり返すことなどに加えて、いれたお茶をまずいといって何度も入れなおさせてくる。
「…というわけなんですが、また嫌がらせを始めたのはどうしてでしょうか」
カティナねえさんに相談すると、腕を組んで悩みはじめた。
「えーとね… 孤児院のヤンがモニカにいじわるするのと似たようなものじゃないかな」
ヤンがモニカによくいじわるしているのを見かけた。この前もかえるを背中にいれて怒られていた。
そういえば、モニカにイタズラをしたときのヤンをみているパロマの表情が、今のカティナねえさんと似ていた。
よし、パロマにも聞いてみよう。
カティナねえさんに礼をいって、孤児院に寄ることにした。
次の日、屋敷での仕事を終わらせてから、昼過ぎに孤児院にいった。
「やあ、これお土産ね」
出迎えてくれたモニカにお土産の鹿の肉を渡した。
「いつもありがとうね。ちょっと、ヤン手伝って~」
ヤンを呼ぶと二人で台所の方に運んでいった。
パロマを探して見回すと、食堂のテーブルでお茶をのんでいるのを見つけた。
「パロマ、ちょっと教えてほしいことがあるんだ」
「いいよ。ぼくにわかることなら答えるよ」
戸惑いながらわたしをみてくるパロマの隣に座った。
「あのね、ヤンがモニカにイタズラする理由ってなにか心当たりある?」
パロマは例の生暖かい目をしてから、どういおうか悩んでいるようだ。
「うーん… ヤンがイタズラをするのはモニカだけなんだけど、その理由ってわかる?」
そういえば、ヤンが他の子たちにイタズラするのを見たことないな。ちびっ子たちの面倒をよくみてて慕われているし、タニアばあちゃんの手伝いもよくしてる。
「ヤンにとってモニカが特別だってことなのかな」
「そうだね、モニカにたいして特別な思いがあるからああしてちょっかいかけてるんだろうね」
「なるほど、ありがとうね。パロマ」
なんとなく分かった気がした。その後、ちびっ子たちと遊んだりしてから屋敷に戻った。
パロマから聞いたことを参考にすると、アレキサンダー様はわたしを特別視して、特別な感情を抱いている。だけど、特別な感情とはなんなんだろうか…
給仕してるときや、掃除をしてる姿をアレキサンダー様がじっと見ているときがあるけど、そこから考えると…
まさか、あのことがばれたのか!?
そういえば鹿狩りのとき頭を触られて何かに気づいたみたいだし… わたしを観察していたってことか。
それから、なるべくアレキサンダー様の視界に入らないように、アレキサンダー様がくる気配を感じたら別の場所に移動して隠れるようにした。
「ユエ、あなたアレキサンダー様になにをしたのですか」
アレキサンダー様の観察の目をごまかすようにしてから数日後、メールビットさんに呼び出された。
メールビットさんがいうには、アレキサンダー様がユエに最近さけられているといって落ち込んでいるらしい。
どういうことだ、観察から逃げられて悔しがるならわかるけど、落ち込むというのはなぜだ?
「政務に支障がでるので、アレキサンダー様と話し合っていらっしゃい」
わたしは執務室をノックして中にはいると、アレキサンダー様がわたしを見ると、顔をこわばらせ視線をあたりにさまよわせていた。
「アレキサンダー様、わたしに何か至らぬ点がございましたら、おっしゃってください」
「い、いや、なにもないぞ」
アレキサンダー様は口ごもるように言ったあと視線をはずした。
なにもなさそうだったので、部屋を退出しようと扉にむかった。
「ユエ、おまえはどこかにいったりしないよな!!」
振り向くと、焦ったような声をだして半分腰を上げたアレキサンダー様がこちらを見ていた。
「当分の間、アレキサンダー様にお仕える所存ですよ」
「そうか… それならいいんだ」
不安を和らげるようにゆっくりとしゃべると、アレキサンダー様は深く息をはいてイスに深く腰掛けた。
その後、アレキサンダー様からのイタズラはなくなったけど、こちらを見る姿をみかけた。
また逃げると、メールビットさんに呼び出されてしまうので、アレキサンダー様の方を向いて笑いかけたら、顔をしかめて逃げていった。




