14 訓練終了と唐突な命令
訓練をすすめていき、鹿狩りの二日前となった。
「どうだ、中心にもあたるようになったぞ。これならみなの前で披露しても問題ないな」
アレキサンダー様はだいぶ慣れた様子で矢を放てるようになっていた。
これなら、鹿狩りでも十分な成果が出せるだろうと思って肩の荷が下りた。
「鹿狩りでの活躍を期待してますよ」
「ん?なにを他人事のようにいっている。おまえもくるのだぞ」
「え、聞いてないのですが…」
アレキサンダー様が爆弾発言をしてきた。
「いってなかったか? 鹿狩りでは、狩りの補助や獲物を捌くハンターを同行するからな、貴様をつれていくことにした」
「そうですか… かしこまりました」
また貴族だらけのところにいくと思うと気が沈んできた。
鹿狩りの前日となり、狩場となる森に馬車で向かっていた。
場所は、王都の南に広がる公爵家が所有している森で、屋敷から半日ほどで到着する。
昼ごろに到着し森の前で野営してから、次の日に鹿狩りを始める予定だそうだ。
アレキサンダー様は朝が早かったので馬車の中で寝ていて、わたしは狩り用の服を着て御者席のクロードさんの横に座っていた。
「はぁ… 最近こんなことばっかりだな」
雲ひとつない秋空をながめがら、わたしはため息をついた。
「ユエさんの働きには助かっていますよ」
わたしの独り言が聞こえたようで、隣で馬車の御者をしていたクロードさんが声をかけてきた。
「アレキサンダー様に振り回されてるだけですよ」
「ユエさんが来る以前と比べると、アレキサンダー様の表情にハリがでてきてとても充実なさっているようです」
クロードさんは微笑みながらいっているが、アレキサンダー様の充実度と交換にわたしの疲労度があがるんだよなぁ。
ため息をつくと、クロードさんが笑っていた。
王都方面への道を進み、途中で狩場となる森の方に進む道に入っていった。
しばらく進んでいくと、野営用のテントが複数張られているのが見えてきて入口に護衛の兵士がたっていた。
「アレキサンダー様、狩場に到着いたしました」
「ああ、ついたのか…」
馬車を止めると、アレキサンダー様は馬車を降りて、大きく伸びをしながらあくびをしていた。
クロードさんが兵士に声をかけて確認をとってもらい、アレキサンダー様は貴族たちが固まっているあたりに進んでいき挨拶を交わしていた。
クロードさんは馬車をとめにいき、わたしはハンターが集まっている場所に向かった。
数人のハンターたちがいて、その中の厳つい顔をした大柄な男が声をかけてきた。
「なんだ坊主、おまえもハンターなのか」
「はい、よろしくお願いします」
「あまりうろちょろして邪魔するんじゃねえぞ。おまえは隅のほうにでもいろ」
高圧的に言い放つとこちらから顔をそらした。
フードをかぶっていたので男と勘違いされたようだが、訂正するのもめんどくさいのでそのままにしておいた。
「坊主、見ない顔だがはじめてか」
白髪交じりのじいちゃんぐらいの年のひとが物腰やわらかく話しかけてきた。
「鹿狩りの手伝いは初めてです」
「それじゃあ、手順を説明しとこうか」
鹿狩りは、発見した鹿を猟犬でおいつめて、貴族たちが弓でとどめをさす流れになっている。
ハンターは獲物の発見および、周囲の警戒が仕事となる。
鹿狩りは明日の朝から始めるので、今日はここで野営する。公爵家のほうで野営用のテントを設置してくれていて、夕食の用意もあり至れりつくせりだ。
配られている夕食を受け取り、護衛をしている兵士や他のハンターたちと混じって席についた。
凶悪な顔の男がタルカス、じいちゃんぐらいの年のひとがコルタナという名前で、夕食の席でいっしょになった。
「いいか坊主、おれは10年前からずっとここで狩りをしててな、毎年鹿狩りのときには公爵家から声をかけられてる」
自慢げにかたるタルカスさんに、あきれたようにコルタナさんが声をかけた。
「鹿狩りを仕切るようになってから偉ぶるようになりおって、小さいときは他のハンターににらまれるだけで泣いておったのにのう」
「やめてくれよ、いつの頃のはなしだよ」
話していくうちに、タルカスさんはコルタナさんの弟子だとわかり、コルタナさんには頭があがらないようだ。
「おれはもう休むからな」
タルカスさんが食器をもって席をはなれていったのをみてから、コルタナさんがわたしに話しかけてきた。
「あいつも嫁さんもらってから張り切るようになってな、いまでは公爵家おかかえのハンターにまでなりおった。きついことをいってくるが、役目を果たそうと精一杯やっておるんだ」
あのひともいっぱいいっぱいなんだな、少しは協力的になっておくか。
夕食をとったあとテントに入り、他のハンターたちと雑魚寝をして眠りに突いた。




