008 罰?
本日2話up。こちらは1話目です。
「ノンちゃん!」
そう叫んだ時、穴から土が噴き出すと共に何かが飛び出してきた。
大型犬大の巨大モグーだ。
出刃包丁のような出っ歯が見える口から涎をたらし、後ろ脚で立ち上がってテニスラケットのような手を振り回している。
こんなのがいるなんて聞いてないよ!
そんな魔物にノンちゃんは毛を逆立てて立ち向かおうとしている。相手はモグラ。でも大きさが違いすぎる。無謀だ。
未だ使ったことのない短剣を鞘から抜く。汗で滑りそう。でも行かないとノンちゃんが危ない。
右手で握りしめて巨大モグーに向かって走る。
「ノンちゃん逃げて!!!」
ザクッ
巨大モグーのラケット手に一撃。
しかし初めての戦闘の為距離感がわからず、切り傷程度にしかならなかった。頭か体を攻撃したいけどラケット手が邪魔だ。どうしよう。
「ムグーッ」
攻撃されてキレた巨大モグーがターゲットを私に変更し走ってくる。一瞬気を取られて反応が遅れる。
辛うじて左に避けるが、短剣に当たって取り落とす。
しまった。もう武器はない。
狼狽えていたら「ムググッ」と叫びながら巨大モグーが向かってくる。まずい!
殴られる直前にドン!と横から柔らかいものの衝撃があり、吹っ飛びながら転がる。
痛みはない。殴られたのではなく、ノンちゃんが私に体当たりで突き飛ばしてくれたようだ。
ハッと上半身を上げると、巨大モグーと私の間に立ちふさがるノンちゃんの後ろ姿が見える。
私も向かわなきゃ。でもあのスピードじゃ勝てそうにない。
そう思い「ノンちゃんだけでも逃げて」と言おうとした瞬間、巨大モグーがこっちに走りこんできた。
ノンちゃんも相手に向かって走る。
「ダメ!」
巨大モグーがノンちゃんに向かってジャンプする。
「いやあああ!!!」
怖くて手で顔を覆う。
バキッ
「ギャン!」
ドサリ
いやだ。
ノンちゃんがいなくなるなんていやだ。。
罰なんだろうか。
戦闘どころか殴ったことも、刃物もろくに持ったことがないのに討伐なんて受けたから。収入は微々たるものでも採取で生活はできていたんだし、自立なんて先になったってよかったのだ。
討伐なんて受けるんじゃなかった。
区切り良くと思ったら短くなってしまいました。