007 初討伐
「ふわぁああ」
ギルドの依頼掲示板前で大あくび。
「おはよう。どの依頼受けるか決めた?」
「ふわぁあー。おはようございますアレグラさんんん…」
「あはは。眠そうね」
「昨夜はノンちゃんが運動会して眠れなくて」
猫は夜行性である。だいぶ私の生活サイクルに慣れたとはいえ、たまに夜行性スイッチが入る。昨夜は部屋中を走り回った後、ネズミ10匹とヘビ1匹捕まえてきた。相変わらずの捕獲名人である。
「ん~。今日もモプ花とホポの若葉にしようか」
MP回復薬とポーションの材料なので常時発注だ。
「ニャー」
ノンちゃんが隣の依頼を前足でペシペシする。
「これがいいの?」
「ニャー」
「…ノンちゃん確実に文字読めてるよね」
「ニャッ」
なにそのドヤ顔!元々頭良かったけど、これは加護のおかげだと思われる。ラクビトならぬラクネコ?
「ニャニャッ!」
ペシペシッ
「わかったわかった。…これ、一番遠い畑だよ。しかも討伐系じゃん」
《 ランクF 一本橋の先の畑のモグー退治 報酬…1匹につき30N 》
「初討伐にちょうどいいと思うよ。ただの駆除だし報酬もいいし、ノンちゃんもできるでしょう」
アレグラさんが後押しする。
「ニャーー」
自慢げに鳴く。腹が立つけど否定できない。
モグーとはいわゆるモグラだが歯が極端に出ている魔物で、野菜の根を食べまくるだけで襲っては来ない。普通は畑の所有者が自分で処理するのだが、数が多すぎる為ギルドに依頼したらしい。
自立には先立つものは必須。そろそろ懐に余裕を持っておきたい。
「よし、やってみよう!」
***
畑へ行く前に雑貨屋に寄ってモグーが苦手とするトガーラ液を購入。巣穴にかけまくる → かけた穴から出てこられない → かけなかった穴を見張る → 出て来たらモグラ叩きの要領でスコップで殴る
私が逃してもノンちゃんが逃すはずがない。狩り上手いもんなぁ。しかもトカゲとか私が苦手なのをわかっていて見せに来る。ノンちゃんは絶対にSだ。断言する。
「よし。この穴で待とう。逃げたのがいたらノンちゃんよろしくね」
「ニャッ」
穴の前でスコップを構えて5分。モグーが頭を出した。ボコッ!出た。ボコッ!
一時間で24匹。8匹逃したがノンちゃんが余裕で狩る。得意気に咥えてくるのが憎たらしい。ちょっと大振りしたら当たらなかっただけじゃん。
そのうち穴からモグーが出てこなくなった。43匹。大量だ。これは作物がやばかったわけだわ。
討伐証明部位の前歯をパキッと折ってリュックへ。他は食材や材料にもならないので穴を掘って埋めて処理。
次は隣の畑だけど、お腹がすいたしお昼を食べてからにしよう。
「ノンちゃん。あっちの丘でお弁当食べるよ」
丘に向かって歩きだすがノンちゃんがついてこない。
「どうしたの?」
まだ穴を見つめている。
シッポの毛がボワッと逆立っている。
ヤバい。なにかいる。
2015/01/16 金額一桁変更。