005 ギルド
無職。無能(涙)
でも、一文無しではないのである!
実はトリップ数日後からノンちゃんが少しだけ稼いでくれていたのだ。本猫はそのつもりはなかったようだけど。
四苦八苦していた時、ノンちゃんがフラッと戻ってきた。
「お帰りノンちゃん。どこ行っ…」
「ニャ!」
咥えていた物をドヤ顔で目の前に置いた。
「ネズミーーーーーーーーーーーーーーー!」
一階までダッシュし、ギルドカウンターのアレグラさんに泣きついてしまった。この時の走りはラビットガルー並(動物の中で最速)だったと近くに居た冒険者さんが言っていた。
収穫物を荒らすネズミはギルドに駆除以来として出ていたそうで、1匹につき10Nの報酬となっていた。ギルド登録していない人も小遣い稼ぎで受託できる。しかしその場合の報酬は6割。それでも貰えるだけありがたいので、ノンちゃんが持ち帰る度に換金してもらい小金を稼いだ。
追い出された時点で2,020N所持。その為近くの安宿に泊まることができ、野宿せずに済んだのだ。
ノンちゃんありがとう。ダメ飼い主でごめんね。
素直にそう言えればいいのだが、うっかり「飼い猫のくせに稼ぐなんて生意気」と言ってしまったがために高速猫パンチを食らい、しばらく赤鼻で過ごす羽目になった。
***
放り出された翌日からどうにか稼がないと!と意気込んでいた。
だがアルバイト情報誌なんてない。農家のお手伝いや店番とかやらせてくれる所ってあるかな。アレグラさんに相談してみよう。
朝一でギルドカウンターへ行くと
「よかった。こっちから行こうと思っていたのよ」
「忘れ物でもありました?」
放り投げられたもので全部だと思ったけど。
「そうじゃなくて。カノコちゃん、ギルド登録しない?」
「え? 私、武器なんて使えないですよ。」
「植物採取で生計を立てることはできるわ。町周辺の採取なら危険も少ないし、ネズミや害虫駆除ならノンちゃんに協力してもらえば大丈夫よ。だから当面は生活費を貯めながら仕事を探せばいいんじゃないかと思って」
「それいいですね!」
「ニャ!」
ノンちゃんもやる気のようだ。
「じゃあ早速登録ましょうね」
よかった。なんとかなりそう!
アレグラさんがカウンター下から水晶玉を出す。水晶内で紫の渦が動いている。
「これに両手を翳して。」
手をかざすと、真ん中からスウッと指輪が出て来た。うおっ。面白い。どうなっているの?
驚いたノンちゃんが水晶玉に猫パンチを食らわせる。すると水晶から水が噴射され、ノンちゃんはびしょ濡れになった。突然の攻撃にノンちゃんと私は茫然。なにこの水晶玉?!
アレグラさんは爆笑しながら
「あはは。指輪を中指にはめて『ステータス』と言えばデータが出るわ。『アレグラにも見えるように』と思いながら言えば二人しか見えないのよ。」
指輪は小さな青い石がついている。早速はめてみるとピッタリだった。
「じゃあ…『ステータス』」
青い石から自分の前に情報が表示される。うっわー。面白い!
「これってどういう原理で表示され……アレグラさん?」
アレグラさんが情報を見たまま固まっていた。
***
2015/01/16 金額一桁変更。
2015/02/21 訂正。