019 多勢に無勢
さて、今日もウォーク茸さんをサンドバッグにしますかね。
と、意気揚々とギルドへ向かったのだが、ウォーク茸の依頼が無い。なんで?
「さすがに全滅させちゃったってことはないと思うんだけど。」
「おっさん。なんで今日ウォーク茸の依頼がないんだ?」
ノンちゃんは隣で掲示板を見ていたマッチョな冒険者に声をかけた。
「時期的にもう孵化しちまったんだろうよ。」
「あーーー。そうですよね。卵は孵りますもんね。」
言われてみればずっと卵なわけないわ。私たち的には良い依頼だったのになぁ。ちぇっ。
「代わりにこれが出てるが、請けるなよ。」
マッチョ冒険者が掲示板を指さす。
《 ランクD ウォーク茸の幼虫討伐 報酬…10匹毎100N、 》
「「幼虫?!」」
珍しくノンちゃんとカブっちゃうくらい驚いた。キノコなのに幼虫で、ランクDとはおかしくない?
「親と違って肉食で凶暴だぞ。」
「はい。絶対請けません。」
安全第一です。
しかし安定の「地球の常識はあてにならない」ですね。
***
なのになんで幼虫に囲まれているのー?!
幼虫がいるのはウォーク茸のいた南門ということで、北門側のマプ花採取を請けて以前の平原で採取していた。うん、決して南には行ってないのよ。
しかし気付いた時には周囲にウォーク茸の幼虫が蠢いていた。
「悪い!こっちの方が風上だったのと草丈が高くて見えなかった。」
「ううん。私も全然気づかなかったし。」
ポイっ
「キューーー!」
慌ててノンちゃんがクロヒョウ型になりつつロボちゃんを木の上へ避難させ…というか、木の上へ放り投げた。
「キチキチキチキチ」
シイタケサイズのウォーク茸。しかし傘部分から歯が見える。気持ち悪っ。
とか言っている場合ではない。ざっと見たところ100匹くらいに完全包囲されている。明らかにこちらを襲う気だ。
所詮キノコなので火の魔法で燃やすのが得策だが私は使えない。どうしよ…
「痛いっ。」
考えている途中でふくらはぎに激痛が走った。見ると幼虫が噛み付いている。引っ張って取ると地面に叩きつけて足で潰す。
するとそれを合図にしたかのように一斉に飛びかかって来た。
「きゃあああ!痛い!」
「くっ。数が多すぎる!」
「キュゥゥゥゥーーーッ。」
撥を振り回すが、叩くそばから体に集られ齧られてしまう。ノンちゃんも足元にいるのを蹴散らすが、クロヒョウ型なので的が大きすぎて体中に噛み付かれている。数の暴力だ。幸い、幼虫は木の上までは行けないらしくロボちゃんは襲われていないようだ。但し私たちの状況を見て悲痛な鳴き声を発している。
私たち(というかノンちゃん)は1対1には強いけど、大勢には弱い事が露見した。多勢に無勢である。
とか冷静に分析している場合じゃない。針で刺されるような痛さと、かなりの出血量だ。退却しないと本気でやられる。でも払っても払っても集られてしまう。痛みを押して走るしかないの?




