001 ここはどこ?
拙作ですがお読みいただけると幸いです。
「ノンちゃん、ここはどこなんだろうねぇ」
「ニャ?」
日曜日の午後。
玄関に座って飼い猫のノンちゃんに邪魔をされながら通学用ローファー磨きをしていた…はず。
うん、絶対にしてたわ。
手元にローファーもクリーナーも見当たらないけど、手はクリーナー臭いもん。
しかし周囲はどう見ても自宅玄関ではない。
森だ。木漏れ日が気持ち良い。
「白昼夢?にしては木の手触りは感じるしなぁ。」
葉っぱは檜だが樹皮が茶とこげ茶のストライプという不思議な木を撫でながらそう独り言ちる。
新種?いやいや、こんなに新種があったら既に大騒ぎになっているはずだ。
とりあえず帰り道を探そうと周囲を見渡すと、木々の隙間から砂利道が見えた。
「ノンちゃんあっち行くよ」
「ニャ」
1m程の砂利道。
どこかへは繋がっているだろうと、先を行くノンちゃんの後をついて行く。
数十メートル歩いた所でノンちゃんが「ニャニャッ」と声を上げた。
先を見ると木製の大きな門。
両脇には中世の兵士のような格好の人が立っている。
なんかのテーマパーク?それとも学祭の門かな。
でも近所にそんなのないよね。
「とにかく聞いてみようか。」
「ニャ」
「すいませ…。」
「そこの子供止まれ!どこから湧いてきた!」
いきなり門番さんが怒鳴る。
周囲を見るが私以外いないよなぁ。
子供って、もしや私?
「湧くってなんですか。それに子供じゃないてすよ。そこの脇道から出て……はっ?脇道が無い?!なんで?」
指した先には脇道が無かったのだ。
さっき出て来たばかりのに!
「脇道が無くなった?もしや……ボソボソ」
「…おそらくそうだろう。不可思議な服装だしな。でもどう見ても子供じゃないか?」
門番さん同士でなにやら話し始めた。
私は脇道があった辺りを何度も見るがやはり無い。
急に怖くなりノンちゃんを抱っこし撫でて落ち着こうとするが、不安が募る。
ノンちゃんも耳を後ろに倒し警戒している。
「お嬢ちゃん、どうやら説明が必要なようだ。ちょっとついてきてもらえないかな。」
「怪しくないよー。おぢさん達はここの門番で、どうしてお嬢ちゃんがここにいるのか説明してくれる人の所まで案内するだけだよー。だからこっちおいでー。」
怪しい発言をした人が後頭部を殴られ、ベシャッと地面に倒れた。
「いてーな!怪しくないアピールしただけだろう。」
「アホか。誘拐犯としか思えない発言やめろ。」
漫才みたいなやりとりに思わずクスッと笑ってしまう。
どうも悪い人ではないみたい。
意を決して近づいてみる。
「ごめんなお嬢ちゃん。本当に説明する人の所に送るだけだから。」
「はい。宜しくお願いします。」
ツッコミおじさんがホッとしながら「こっちだ」と門の中へ歩き始めた。
後ろを振り返ると怪しい(?)おじさんがバイバイと手を振っていたので振り返し、後をついていく。
2015/02/16 訂正。
2015/05/05 校正。