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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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悪役令嬢のいない王国

作者: 山田 勝
掲載日:2026/02/28

「はじめまして、私、カゲのリリーでございます」


と監視対象に挨拶すると。

後ろめたさのないご令嬢は。


「そう、よろしく。ゾフィの隣にいなさい」


歓迎される。さすが、ゾルゲ公爵家フランソワーズ様だわ。


さて、私が報告すると純潔と証明できる。



フランソワーズ様の婚約者、王太子オルテシス殿下には同じく従兄弟のケビンがついている。


この国のカゲは公表なので、婚約破棄などの問題は起きにくい。


何故なら浮気をしたら、すぐに陛下に報告されるからだ。


学園に行く。さすがに授業中は外だ。

学園の庭にはお爺様がいる。ベンチに腰掛けて騎士科の練習を見ている。


ゼムお爺様だ。定点観測を受け持っている。


「リリーかい?それともフランかい?」

「お爺ちゃん。リリーですよ」

「うむ。ワシの若い頃はな。カゲ同士がバチバチやりあっておったのじゃ」

「へえ、そうなんだ」


「それでな。これをやる」


お爺ちゃんからボールくらいの玉をもらった。


「煙玉じゃ」

「ありがとう。お爺ちゃん」

「特異点じゃ。熱狂に対抗するには特異点を作り出すのじゃ」


「分からないよ」

「分かるかもな。最近、校庭が騒がしいのじゃ」


変なの。


平和になった世ではカゲによる空中戦は起きない。

むしろ。他家のカゲとは協力関係にもなる。


さて、お嬢様の後をつけますか。次は二階の生徒会室に行くのかしらね。


お嬢様の後をつけ。階段を登ろうとしたら。


「キャアー!」


1人のご令嬢が階段から落ちてきた。


私はドン!と床を踏み抜いて駆けつける。


ドタン!と音がした。辛うじて、ご令嬢を助けた。


「怪我はございませんか?」


何だ。一瞬、不服そうな顔をしたが・・・。


「大丈夫です」

「私、任務中ですからどなたか保健室につれて行って下さい」


しかし、ご令嬢は。


「大丈夫ですから!」


バタバタと逃げ出した。

ピンクブロンドの小動物を思わせるご令嬢だった・・・



後にマン男爵令嬢メロディだと知った。

彼女とは何回も遭遇したからだ。


フランソワーズ様が噴水の近くでご学友達と話していたら、その後ろをメロディ様が通る。これはマナー的にはOKだが、遠回りをすれば良いじゃないかと注視したら。

「キャア!」


バシャンと音が響き。水が飛び散った。


「大丈夫ですか?」


私が噴水に飛び込み。メロディ様を支えたのだ。


(チィ)


え、舌打ち?メロディ様が舌打ちをしたように聞こえた。


「まあ、リリー、大丈夫かしら・・?すぐに着替えを用意させますわ!ゾフィ!」

「はい、お嬢様」


「申訳ございません」

「いいえ。学友を助けたのですから当然ですわ」



これはお言葉に甘えた。

しかし、ケビンからおかしな報告が上がる。



「リリー、大変だ。王太子殿下が・・・男爵令嬢を寵愛し始めたぞ」

「そう、我らは報告するのみ」


あのマン男爵令嬢メロディ様が接近したのだ。


おかしい。側近候補がいるはずだ。宰相、近衛騎士団長、魔道師団長、大商会のそれぞれの子息がついているはずだわ・・・


5人がメロディ様に夢中のようだ。


これに対するフランソワーズ様の反応は貴族らしかった。


「まあ、殿下の愛妾候補かしら・・・」


歓迎はしないが阻害もせず。そんな感じだ。


「でも、それは王太子の勤めを果たしてからにして欲しいわね」


跡継ぎが生まれてからだと言いたいのね。

これで万事解決だ。


陛下と王妃殿下は・・・そうか、国際会議だわ。

我らは王直轄だから、宰相府に届けるのも違う・・・


そんなセクションイズムに陥ったら事態は急変した。


ケビンに呼び出されたのだ。


「リリー、学園の裏庭に来て欲しい」

「ケビン、何?」

「来れば分かる・・」


裏庭に来たら・・・王太子殿下と側近候補たち。その他、有力家門の子息、令嬢たちがいた。

メロディ様が先頭だ。


「ケビン、これは何?」

「リリーにもメロディ様の素晴らしさを分かってもらいたくて・・・」


逃げよう。と思ったら、メロディ様の目が光った。奇妙な歌を口ずさむ。



「(オルグは楽しい♩オルグ、オルグ♩貴方の出身成分を教えて♩)」


不思議な言語だわ。南方系?原始的にも聞こえる・・・が。力が強い。言霊力はある。


このような時は・・・

動く指で二の腕をつねる。こうすると過去のトラウマがよみがえる。



☆☆☆回想


「お父様、わたし、大きくなったらお父様のお嫁さんになるっ!」

「はは、リリー、それは嬉しいが母さんがいるしな」

「グスン、グスン」



・・・・・・・・・・・・・・・



うわ。おかげで頭が覚めた。

懐にあった煙玉を地面に打ち付ける。


ボム!


急いでケビンの手を引き離れた。

ケビンを思いっきりビンタして覚まさせたが・・・


「あれ、何で・・・」

「ケビン、もうお役御免だよ」

「ええ、そ、そんな」

「一度、汚染されたら・・・」


ケビンは平民になる。これは罰かご褒美か分からない・・・


更に深刻な事態になった。


「お嬢様、危ない!」


フランソワーズ様が学園に行く。階段を登っている最中、男子生徒に押されそうになった。

私は間に入り腕を取りねじ伏せ。床に顔をつけて制圧をした。


「なにゆえ?」

「真実の愛を邪魔した・・反愛分子だ。それにフランソワーズがメロディ様を階段に突き落としただろう」


「王国カゲとして証明します。そんな事実はございません」


どっかの伯爵家の子弟だ。

こんなことが続く。


「反愛分子を潰せ!」

「殿下とメロディ様のが真実の愛よ」

「家父長制度打破!」


変な造語を叫び始めた。


公爵閣下夫妻は領地か・・・・お嬢様は手紙を書いた。早くても一月後には来るとの予想だ。


後、一月もてば、屋敷に籠もればいいのに。


「いいえ。リリー、学園には先生たちもいますわ。私はゾルゲ公爵家の総領娘として逃げません」


先生はつるし上げに合っている。学園生のうち三割程度だが、王太子を中心とした高位貴族たちだ。皆、声を出せない。更に、フランソワーズ様の義弟君も姿を見せなくなった。


「しかし、義弟君もいませんね・・・」


義弟君は王宮に入り浸りだ。これ、陛下が帰ってきたらどうなるのだろう。

王国が侵食されるイメージがわく。



そんなこんなで、今、学園の庭で、私とフランソワーズ様とメイドのゾフィの3人で取り囲まれているのだ。


もう、万事休すだ。




・・・・・・・・・・



「フランソワーズよ。反愛分子にして、家父長制度の奴隷よ!」



殿下もおかしな造語を使い始めた。いや、学園の三割ぐらいだ。

しかし、その三割の声が大きい。


「殿下、何を仰せになっているか分かりませんわ」


「そうであろうな。所詮、真実の愛は分からぬか!」


殿下の隣に男爵令嬢メロディがいる。こいつは危険だ。奴の背後に数百万人の人族の熱狂を感じる。


私、リリーは栄光ある王国のカゲである。フランソワーズ様の前に立つ。背後はレディスメイドのゾフィが守っている。

大勢に取り囲まれて、我が方はたったの三人。


絶望的な状況だ。


その時、何故かお爺さまの言葉が浮かんだ。


『特異点じゃ。熱狂に対抗するには特異点を作り出すのじゃ』




煙玉が特異点か・・・何とかなるのか?一個しかなかった。

その時、お爺ちゃんがやってきた・・・えっ、えっ!



「おう、最近の若い者は騒がしいのだ!」


裸だ。肌色が目立つ。


誰かが叫んだ。


「爺!裸だぞ!」

「何じゃと、こりゃ、服を着るのを忘れた!」


その時、メロディが叫んだ。


「(スチル絵が・・・台無しじゃない!保存!保存・・・出来ない。帰れない!)」


お爺ちゃんはわざとか。メロディの前でブランブランをしたわ。


「まあ、どなたか。服を、お爺さまに服を!」


フランソワーズ様が呼びかけた。皆、躊躇する。それは・・・裸に直に自分の服を着せるのは嫌だ。


「まあ、では、私の膝掛けを!ゾフィ」

「はい、お嬢様」


「すまなんだのう」


お爺ちゃんは膝掛けを腰ノミのように身につけて。中立だった学生達に連れられてどこかに行った。


「フランソワーズ様、今です。逃げましょう」

「ええ」


メロディは頭を抱えてうずくまっている。

周りの親派はうろたえているだけだ。



後に取り調べたら、皆、夢を見ていた気分だったそうだ。

メロディを拷問して取り調べたら。意味不明な言葉が続く。

どこかの民衆派のサロンの回し者と結論がついた。


死刑にもなるであろう。


お爺ちゃんは。


「特異点を出したのじゃ。熱狂には冷ます特異点じゃ」

「お爺さまの裸が?」

「そうじゃ。ニライカナイから来た客人は綺麗な物しか見たがらない」


「お爺ちゃん・・・」

「そうじゃ。三十年ほど前に異世界人の侵略があったのじゃ。結束した側近候補もたやすく崩れた。女はほんまに怖いものじゃ・・機密事項じゃ。それ以来、カゲは公表になったのじゃ」


フランソワーズ様は敬老精神があると評判になった。

また、三十年前と同じで王太子殿下たちは闇に葬られるのだろう・・・・


歴史は繰り返す・・・ただ、学ぶだけだわ。

私はこれからもカゲを続けると決意した。


最後までお読み頂き有難うございました。

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