フェーヴ教団
文法破壊気味な文章をめげずに読んで下さる読者様ありがとうございます( ;∀;)
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誤字報告様の活躍で文がまともに修正され感謝です(^人^)
「???…今…何が起きました?」
レイナは困惑の表情を浮かべて目の前のウィリアムに尋ねた
(いつもの入れ替わりと違う……背中の中心を後ろに引っ張られた様な…)
「あ…今……別の人格に入れ代わって……自分はウィリアムだと名乗った…」
そう説明したウィリアムの表情も困惑で固まっていた
「……はい?」
レイナは扉の側で控えていたアニタにパッと目を向ける
普段からアニタとキャロルはレイナに付いていて、どちらかが抜ける事はあっても二人共離れる事はない。
この日キャロルがメインに対応する、フュリアスとレアは現れたから。もう今日は出る事は無いと…絶対とは言えないが、そう予測して
『出来るなら二人きりで』と言うウィリアムの要望に
『アニタは外せませんがキャロルは扉の外に控えさせます』
とレイナは譲歩した。
そうしてアニタは一部始終を見ていた。
(まだ知らない方が…しかも…)
今まで現れた人格は、性格は違えど全てクレアだった
しかし『ウィル』と名乗った人格の口調は完璧にウィリアムで…アニタは初めて多重人格と言う障害に戦慄し呆然としていた。
レイナの視線で我に返り
首を横に振り『知らない人格』だと意思表示する。
少し青ざめたアニタの様子にレイナの困惑は募るばかりで
「……それで…そのウィリアムは他に何か言いました?どんなお話を?」
レイナがウィリアムに尋ねると
「…あっ…えっと…」
今度はウィリアムがチラリとアニタを見て『話して大丈夫なのか?』と指示を仰ぐ様な視線を向ける
気付いたアニタは『お話し下さい!』と言わんばかりに激しく頷く
ウィリアムはうろ覚えになる筈も無い、つい数分前の事を一言一句違わぬよう話した。
◇
レイナは手を組み右手を顎に当て、ウィリアムの話した内容を頭で咀嚼する
「……ウィル」
(『眠らせた』?クレアの事?ウィルは他の人格と話せるの?私は話した事無いわよ?『深くへ逃げて』?何処へ?…心の奥?思考の奥?……ウィリアム様に会ったからクレアが起きたの?起きちゃダメだったの?……シェイムは?ウィルはシェイムにも会えるのかしら?……分からない事だらけ…自分の頭の中の事なのに…もどかしいわ)
『君に出来る事は…せいぜい謝り続ける事くらいだね』
(それを言いに来たのかしら?…………謝り続…)
そこでレイナは大きく目を見開く
(あぁ…そうだったわ…リール嬢との事を聞いてたんだった…)
ウィルが現れた混乱で頓挫した。
直前までウィリアムと何を話していたのかを思い出した。
(……自分でも驚くくらい怒りが湧いてたのに…何処かへ消えてしまったわ…)
レイナは冷静さを取り戻してウィリアムを見た。
急に視線を向けられたウィリアムはビクリと体をこわばらせ緊張が走る。
「ウィルの事は一旦置いておいて。先程伺った事についてお話ししましょうか」
レイナはニッコリ笑ってそう言った
「あ…うん…」
ウィリアムは身構えていた怒りを向けられる覚悟を取り払われ意気消沈してしまった
ウィリアムはあの日の詳細を伝える。
登校してすぐリールに話しかけられ、放課後中庭で春蒔きの種を蒔く約束をした事
「僕に選んでもらいたいって言われて…」
(クレアの瞳の様な赤い花を選んだ……)
初恋の相手であるウィリアムに初めての口付けをあげたいと言われた事
「断ろうと…思った時。中庭の入り口にクレアが…居るのに気付いて…」
ウィリアムはグッと唇を噛んで言葉を続けられなくなる
「何故ですか?」
「え?」
「何故リール嬢に口付けをしたのですか?リール嬢の事を好きな訳ではないでしょう?王族が軽率な行動をするべきじゃ無い事も分かってましたよね?いくら何でも……ウィリアム様でも。口付けは行き過ぎです。……何故したんですか?」
((他の子と口付けしたら、流石に怒ったり泣いたりするはず…))そう思った事を思い出す。
(クレアにヤキモチを焼いて貰いたかったから…)
言葉に出さないでいるとレイナが口を開いた
「クレアを傷つけたかったんですか?」
「違う!」
咄嗟に前のめりに否定する
「じゃあ何故?」
レイナは冷静に、だがしっかりと厳しい目を向ける
「………クレアに……ヤキモチを焼いて貰いたかったんだ」
レイナは瞳を大きく見開き…少ししてクビを傾げて再び問う。
「何故ですか?」
その瞳は厳しい物ではなく、純粋に疑問が浮かんでいた。
「……え?」
そこを掘り下げられるとは思ってなかったウィリアムは間抜けな声を出す。
「何故クレアにヤキモチを焼いて貰いたかったんですか?」
(……何故?)
「…………ヤキモチを焼いてもらうと……気分が良かったんだ。…ヤキモチを焼くって事は…僕の事を好きだって事の……証明だから?」
(…?……何だ?)
ウィリアムは胸の奥がモヤモヤとして嫌な気分になってくる
「……証明して欲しかったんですか?」
続くレイナの質問にウィリアムは胸に拳を当てる。
「……証明…うん……それに…ヤキモチを宥めて…慰めれば……僕の気持ちを伝えられるし…」
胸の拳を強く握る
「ウィリアム様の気持ち?」
「うん……クレアを一番に想ってるって慰めれば伝えられる…」
苦しそうな顔で言うウィリアムにレイナは疑問を投げかける
「『僕を好き?』って聞けば良かったのでは?」
顔をコテンと傾げて尋ねられ、ウィリアムはレイナを見開いた目で凝視する
「……………………」
黙ったままのウィリアムにレイナは続ける
「『クレアが好きだ』と言えば良かったのでは?……私の記憶にある限り…ウィリアム様から好きと言われた事も聞かれた事も有りませんが……何故ですか?」
ウィリアムは豆鉄砲を喰らったような驚きの表情でレイナを見ている
(……そんな事…聞けない……………聞けない?何で?…)
ウィリアムは視界が広がった様な感覚に襲われる
(言えば良かった……言ってよかった…言っても大丈夫だった筈だ……怖くて……何かが怖くて………僕は…僕が……僕は臆病……だったのか?…)
クレアを見つめたままウィリアムの頬を涙が伝う。
レイナは突然泣き出したウィリアムにビクリと体を強張らせて驚く。
(あ!…あっ…どうしよう…泣かせてしまった…えっ?私が泣かせてしまった?…)
「……あの…ウィリアム様…お話は分かりました。今日はもう戻られて…明日また…今度は父と母も一緒に………やはりクレアに関する事は家族にも伝えませんと……それはウィリアム様からの言葉であるべきだと……思います」
『父と母も一緒に…』の所で体を強張らせて、涙が止まったウィリアム。その表情は憔悴しきっている
「…………ん…明日改めて来るよ。自分の口で夫妻に話す。父にもその旨を伝えて…ドケーシス家に伝達してもらう。………今日は時間を取ってくれてありがとう」
精気の抜けた様子で立ち上がったウィリアムは応接室を出て行く。
扉の外で控えていたキャロルがウィリアムの背中に向かって礼をしていた。
レイナとアニタも扉の所でウィリアムを見送っている
「ウィリアム様は大丈夫でしょうか…」
アニタがレイナに尋ねると
「…大丈夫じゃ無くても仕方ないわ……過ぎてしまった事はどうしようも無いもの」
レイナとアニタはキャロルを引き連れ
ウィルと言う人格の確認を伝えにセイン医師の所へ向かった。
****************
フェーヴ神殿
王妃宮によく似た外観のそこは恵みの神・フェイバー神を祀っている神殿。
そこに拠点を置いている教団をフェーヴ教団と呼ぶ。
「第二王太子妃とはどう言う事だ!!!」
神殿の奥にある教皇の間に大司祭の怒声が響く。
大司祭・レーヴェン。老年に差し掛かった白髪交じりの金髪に碧眼の男。
神殿で生まれ…神殿で育ち…教団に仕えて大司祭まで登り詰めた
「あの時ちゃんとエタンセル・フラムを始末しておかなかったからこんな事態になったんだ!」
そんな怒声を受け止める男は、麦色の髪に氷の様な薄い水色の瞳で、神官の服を着ている。
「妊娠の可能性が無くなって婚約者候補から外れたんです。あの段階では充分と言う判断になるのは当然では?…むしろしつこく命まで狙えばこちらの関与を疑われかねなかった」
「……くっ………せめて…あの女がちゃんと仕込んでくれれば…」
「……人選ミスだったのです。だからあの女には無理だと進言しましたのに」
「うるさい!!」
(あの女…馬鹿な女だ…恐怖だけで縛ろうとするから…失敗は見えていた。飴を与えずムチしか振るわないとは…次段階に行く前に破綻してしまった。価値観教育に向いてなかったんだ)
リセンス・ブレーニーがクレアを教団に引き込む足掛かりになる筈だった。
神に救いを求める様に。
上手くやる筈だった…まさか自分の夫婦生活のストレスをクレアにぶつけるとはその時は誰も思わなかった。
レーヴェンはイライラと机に置いた手を握る
(何をやっても上手く進まない…クレア・ドケーシスに接触を図ろうとしても尽く逃げられる。
ならば自ら足を運ばせよう…神に縋らせようと画策しても…王太子やエタンセル・フラムに駆除される…
やり過ぎれば教団の関与を知られるから大きくは動けない…)
握られた拳は机に敷いた真っ白なクロスにシワを寄せた。
「やっと側妃を娶ると言う話がでたのに…それも王家主導だと言うでは無いか……腕輪の所有権は教団にあるのに」
(所有権なんて大層な物じゃない。置き場所でしょ。神聖な置き場所)
神官のシュマンは表情には出さずに心の中でレーヴェンに物申す。
「………シュマン!側妃になる令嬢が何処の家の者か調べろ!」
「…………承知しました」
シュマンは恭しく頭を下げる
(……そろそろ此処も引き上げ時かな…)
****************
王城の庭園
幼いクレアがウィリアムを探して庭園をウロウロしている
(ウィリアム様……どこ?……)
表情に不安をいっぱいに広げて涙目でキョロキョロと辺りを探す
(あ……あそこに誰か…)
遠くに白い人影がある…その影はゆっくり近付いてくる
(………や……こわい…)
「どう たの か?迷わ た な?」
(えっ?!なに?なんて言ってるの?)
ゆっくり近付いて来る白い人にクレアは恐怖を覚える
(こわい!こわいこわいこわい…)
「 がらな て大丈 で よ。私は神 に るもの す」
(なに言ってるかわかんない!こわい!)
「恵み ・ イバーに える者で 安 して さい。少 お話を ませんか?」
白い人影が笑って近付いてくる顔が見えないのに口だけがパックリと開いて笑っている
(お話?いや!聞きたく無い!!こわい)
「 様の事 えて差し ますよ。お話 しま う」
(イヤ!…こわい!こわい!こわいこわいこわい……誰か!誰か助けて!)
クレアは逃げ出したいのに足がすくんで動けない
白い大きな手がクレアに伸ばされた
「こっちだクレア!」
振り向くとウィリアムが手を伸ばしている
(ウィリアム様!)
「おいで!」
クレアはウィリアムに向かって走り出した。
(ウィリアム様!ウィリアム様が助けに来てくれた!)
差し出された手をぎゅっと掴む
ウィリアムはクレアの手をしっかり握ると走り出した
奥へ奥へ…庭園の奥へ
クレアが振り返ると白い人影はゆらりゆらりと付いて来る
(やだ!こわい!)
クレアはウィリアムの手を強く握り、足に力を込めてしっかりついて行く
庭園の行き止まり…此処から先は暗い森が広がる
クレアはガタガタと震えウィリアムの手を強く握った
「クレアはここに隠れてて。僕が来るまで動いちゃダメだよ」
(……いや!ウィリアム様!行かないで!……こわい…こわいこわい!一人にしないで)
ウィリアムはクレアの肩をグッと押して生垣の陰にしゃがませて隠した
そうして来た道を戻って行ってしまった
クレアは蹲りガタガタガタガタと震えている
(ウィリアム様…ウィリアム様…早く帰って来て……こわい!こわい!助けて…助けてウィリアム様…こわい…こわい…こわい…こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい…)
(…クレア…)
ボロボロと涙を流していたクレアは顔を上げた
(クレア行こう)
ウィリアムが手を差し伸べている。
クレアはウィリアムの手を取って立ち上がる。
(ウィリアム様…どこにいたの?)
(遅くなってごめんね)
(もう…いなくならないでね)
(うん。どこにも行かないよ)
(ずっと一緒?)
(ずっと一緒だよ)
(約束よ?)
(約束するよ。……ほら。ガゼボが見えて来た。あと少しだよ。がんばろう)
(………うん。がんばる)
王妃宮の客間のベッドで目を覚ましたレイナはぼんやりと天蓋を見ている
「…………?……何か…夢を見てた様な……思い出せない…」
感想ありがとうございます。
ありがたく読ませていただいてます。
お返事出来ず申し訳ない(>人<;)
前話、ウィルの登場に「驚いた」感の感想にムフフとなり( ^ω^ )
やっぱり居た感の感想の待ってました感にこちらが楽しませていただきました(//∇//)
初登場でヒーローの座を掻っ攫ったウィル君!ビックリです(笑)
お読みいただきありがとうございます(*^▽^*)




