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「彼女は死にました。」私はあなたの子を産みません。  作者: Kurakura


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リール・シリッカ子爵令嬢 (1

ブクマ・評価・リアクション付けて下さり

ありがとうございます!やる気の糧にしております(°▽°)

誤字脱字報告。感謝です。助かってます!


「娘を嫁がせるなら、君みたいな意欲のある若者が良いなぁ。どうだい?うちのリールとか?」


 シリッカ子爵邸・応接室…

子爵と話しているのは、一緒に新たな事業を始めようと契約が決まった相手…ダリウス・ターン

 平民で、海を渡った外国出身の母を持つ

濃い琥珀色の瞳に、短く整えられたチョコレートのような焦茶の髪は緩く癖があり、それが色気を添えている。

 褐色の肌は最近では…街では普通に見かける様になったが、貴族の間では見ない色味…

二十二歳と言う若輩者だが、商才を遺憾無く発揮して、母親の母国の親戚筋の伝を活用し、大きな流通の一つの主導権を握り。堅実に利益を上げている。


「評価して頂いてありがとうございます。ですが、まだリール嬢は十二歳じゃないですか…」


「いやいや、貴族の婚約を結ぶ歳なんてそんなもんだよ。」


「ですが僕とは、十歳もはなれてますよ。リール嬢から見たら()()()()です。」


「それぐらいの歳の差の夫婦なんて大勢居るさ。それに君みたいな美丈夫に()()()()なんて思わないよ〜。なぁ?リール?」


「うん♪。わたし、ダリウス様大好きよ♡カッコいいもの♪。」


 父親の隣に座って、甘いミルクティーを飲みながら、濃いオレンジのふわふわした髪をツインテールに結んだ可愛らしい少女は、茶色い瞳をキラキラさせてそう言った。


 シリッカ子爵家はリールの祖父が商才を発揮し、その才能は息子の現子爵にも引き継がれ。シリッカ家は子爵としては、とても裕福だった

 リールはそんな子爵家の三番目の子として産まれた。


 六つ年上の兄は子爵家を継ぐに相応しく勉学に励んでいるし

三つ年上の姉は、伯爵家の子息と婚約を結んでいる。

 子爵家としては安定しているので、これ以上貴族筋の地固めは必要ない。

であるならば…と、リールに望まれるのは、有力な商人筋との婚姻だった。


 しかしそれも、(どうせなら)で、あって…リールに望む相手が出来れば、そちらが優先。

よほど()()()()()()()()相手でない限り、リールに結婚相手の選択権があった。


 リールはダリウスがとても好きだった…

交渉の為に何度か子爵邸を訪れているダリウスに初めて会った時…

 自分の髪と瞳の色を反転した様な色味の容姿に運命的なものを感じた…単なる乙女心とも言えるが…

 そんなこじ付けを()()と呼びたくなるほど、ダリウスは美丈夫で、気さくで話しやすく…リールに優しかった。


「嬉しい事をいってくれるね。じゃあ、リール嬢が学園を卒業して、その時もまだ俺のことを()()()()()って思ってくれるなら、お嫁さんに来てもらおうかな♪。」


 ダリウスの提案は、リールにとっては天使のラッパの様な響きを纏っていた。


「本当?!約束よ!」

リールはいつの間にか父親の隣から移動して、ダリウスに詰め寄っている。

「はははははっ♪。あぁ…約束だ。」

ダリウスは目を細めて、優しく笑い…リールの柔らかい髪を楽しむ様に、頭を撫でた。



◇◇◇


 年に四回開かれる、商会組合主催のパーティー

平民でも有力な商人や事業主、商売に投資している貴族など多種多様な人々が招待されている。


もちろん…シリッカ子爵家も一家で参加


 リールが纏った若草色のドレスはオレンジの髪によく似合っていた。


「やぁ。リール嬢。学園入学おめでとう。」

 「ダリウス様♪。ありがとうございます。」


 リールと子爵夫妻を見つけて挨拶に駆け寄って来たダリウスが、リールに祝いの言葉を送る…

パーティーの為に正装したダリウスは一段と格好良く…リールの胸はドキドキと高鳴る…


「お父様…」

リールは子爵の袖を引っ張って促す…

「ん?…ああ!分かってる分かってる。…ダリウス君。良ければ、リールをダンスに誘ってやってくれないか?」


「!………よろしいんですか?……それは光栄です。リール嬢、一曲お願い出来ますか?」

そう言って…ダリウスは軽くお辞儀をして、リールに手を差し出す。


「喜んで♪。」

リールはダリウスの差し出した手に、手を乗せ…満面の笑顔で答えた


 まだ十三歳になったばかりで小柄なリールに対して、高身長なダリウスは…踊りにくい筈なのに、とてもリードが上手かった。


 それも当然。

パーティー等の社交は顔繋ぎや交渉の場に打って付けで、ダリウスは積極的に参加していた…

 参加すれば、眉目秀麗で美丈夫なダリウスがダンスに誘われるのは必然…ダンスは商談の為の交流の一つ。

ダリウスは場慣れしているのだ…


 ダリウスに…くるくると軽やかにリードされるリールは、楽しげにダンスを踊る。


「素敵な色のドレスだね。リール嬢にとても似合っているよ♪。」


「ほんと?!嬉しい♪。すっごく悩んで決めたのよ!」

 今日のパーティーでダリウスに会えると予想していたリールは、気合を入れた装いだった。

少し大人びたデザインのドレスに普段のツインテールではなく、編み込みハーフアップにして貰った。

 少しでも大人っぽく見せたかった…


「普段、お屋敷でしか会った事がないから…こうゆう場でのドレス姿を見ると、さすが貴族の淑女って感じだ。」


 ダリウスは褒め上手だ…そのお陰で商売上手なのだろう…相手の喜ぶ言葉を上手に読み取って話す。

リールはその言葉を素直に受け取り、素直に返す。


「嬉しい…私もっと頑張って。もっと素敵になるわ♪」


「楽しみだ…」

ダリウスは優しく眼差しを向けてそう言った…



 夢の様なダンスを終えて…歓談や食事を楽しんでいると…

 リールは、ダリウスが他の女性と踊るのを見た…


大人な女性…背中の開いたドレス…妖艶なメイク…

 何よりもショックだったのは、その女性と踊るダリウスが()()()()だったから…


リールは…(大人っぽく)と仕上げて貰った自分が、途端に幼く子供に見えて来る…


 ジワリと目頭が熱くなる…その熱を冷まそうと、リールはバルコニーに出た。


しばらく風に当たっていると…

「リール嬢?」

呼ばれた声に振り向くと、声を掛けてきたのはダリウスだった。


「どうしたんだ?こんな所で一人で……」

リールはプイッと外方を向いた


「いつから居るんだ?。もぉ中に入ろう…風邪を引いてしまうよ?」


「……………もぉ少し…ここに居たい…」

リールがそう答えると


「………そうか……じゃあ俺も付き合おう。」

そう言ってダリウスは、脱いだジャケットをリールの肩に掛けた。


「「……………………」」


しばらくの沈黙の後…ダリウスが口を開く


「何を拗ねてるんだ?」

子供を嗜めるような…その一言はリールの感情を逆撫でた。


「私だけ子供で辛かったの!。私だけ、ダリウス様が踊って来た女の人の中で……私だけが子供なのよ!!。私だけ!ダリウス様に似合わない!」

 自分の言った言葉に自分で傷付き、瞳に涙の膜が張る…


「早く大人になりたい!!大人だったら…自信持ってダリウス様を好きって言えるもの!!」


 叫ぶ様に放たれた言葉にダリウスは目を丸くする。


「どうして私は子供なの〜」

とうとう…リールはグスグスと泣き出した


「…あ〜………ほら…泣くなよ……」

 ダリウスはリールの前にしゃがんで…顔を覗き込みながら、取り出したハンカチで涙を拭う


「……前に言っただろう?…君が学園を卒業しても、俺の事をカッコいいって思ってくれるならお嫁に来て貰うって。それまで俺は…結婚しないで待ってるよ」


 そう話すダリウスの顔は、困った様な表情で…リールは、子供を慰める為のその場凌ぎの約束だと気付く……それでも、その約束に縋りたかった

「…………本当?」

「……あぁ、約束する。」


リールはやっと涙を止めて、少しの笑顔を返した。



 リールは良い意味の人たらしだった。

学園では、友人も多く…男子にもモテる…

だか…学園の男子など、ダリウスに恋しているリールには子犬にしか見えない…故に、相手に踏み込ませなかった。

 たとえ、踏み込んで告白されたとしても…遺恨を残さずに断れる技量がある。有益な人の縁は断ち切らない。


[優位な立場の人と縁づく事は自分の立場を優位にする]

 教えられてはいないが…子爵やダリウスを見て、リールは自然と学んでいた。

子爵の商才を受け継いでいるのだろう、上手に人付き合い出来る才覚がある。

 更には、不利益な縁を断ち切る冷淡さも…自分に優位に事を運ぶ狡猾さも持っていた。


そうやって…学園で、良い立ち位置を確立して行く…



 リールがダリウスに会えるのは、仕事絡みで子爵とダリウスが合う時ばかり…

ダリウスが子爵邸を訪れるか…ダリウスの商会事務所を訪ねる子爵に着いていくか…


リールの気持ちを後押ししたい子爵は、気を利かせて、二人で過ごす時間を作ってくれる。

 パーティーではエスコートはしないが、度々一番にダンスを、踊ったりもする。

幸せな時間と共に、辛い時間も味わう…

常に女性に囲まれるダリウスを見るたび、『大人だったら…』堂々と他の女性を牽制するのに。と…悔しい思いに駆られる。


リールの想いはどんどん膨らんでいく…



◇◇◇


 中学部の最終学年に上がった頃…友人達と街歩きをしていた時

リールは、美しい女性と腕を組みながら歩くダリウスを見つけてしまった…


 二人は宝石店へと入って行く。


 ショックを受け、意気消沈したリールは友人達を置き去り…自邸に逃げ帰った…

自室でベットに突っ伏してモヤモヤと考える…


『誰?…凄く綺麗な人だった…凄くお似合いだった…腕を組んで歩くのって、それだけ親しいって事だよね……誰なんだろう……もしかして………付き合ってるのかな……ダリウス様…待ってるって言ったのに……約束したのに。』


モヤモヤと考えた末に怒りが湧いて来る…


 翌日…リールはダリウスの商会事務所に乗り込んだ。


「ダリウス様!お話があります!」

「リール嬢⁈!」

 「すいません!。ダリウスさんは今、忙しいって伝えたんですけど!」

事務員に引き止められるのも構わずに会長室の扉を開けた。


「昨日一緒にいた女の人は誰ですか⁈」

「?!えっ?!何を、、、あぁ!君はもぉ下がって良い!」

 「は…はい!」

事務員は慌てて部屋から出ていく


リールはダリウスに詰め寄り

「昨日、見たんです!ダリウス様が綺麗な女の人と宝石店に入って行くのを!…誰ですか?お付き合いしてる人がいるんですか?…私の事、待ってるって約束したのに!!私が子供だからダメなんですか?!私だって…私だって!!」


リールは飛び付く勢いでダリウスの顔に手を伸ばし、強引に口付けた。


ダリウスはリールの肩を掴んで引き剥がす。


「何をするんだ!君は子供で、貴族の令嬢なんだぞ!」

そう叱るダリウスの顔は真っ赤に染まっている。


リールはボロボロと涙を溢し、しゃくり上げながら

「……だって…だって…私だって…大人…としてっ…扱って欲しぃ…」


「〜〜〜〜〜〜〜…ハァ…」

その言葉にダリウスはため息を吐く

 そして…リールをソファに座らせて、その前に跪いた。

リールの手を取って諭すように話し出す…

「昨日君が見たのは、商談の時に相手を持て成す為に、接待婦を頼んだ女性だ…アクセサリーをプレゼントするって約束で……本当だよ。彼女に会わせてもいい。」


「やましい事はない」と言い切るダリウスの言葉に、リールは俯く…


「……リール…君は十五になったばかりだ。どうやったって子供なんだ……学園を卒業する十八歳までの間に、新しい出会いだってある…」


リールが反論しようと口を開くのを、ダリウスは優しく嗜めながら続ける…


「….聞いて。……俺は平民で…この世界(業界)じゃ若輩者で………今は自分の実力で実績を積んで行きたいんだ……君と婚約と言う形でシリッカ子爵の後ろ盾を得たら、俺自身を正しく評価して貰えない……」


リールは…まさか自分の想いが、ダリウスの仕事に対する想いの障害になるとは思ってなかった……

涙が止めど無く流れる…


「………でも…私は…ダリウス様が好きなの…」


「気持ちは嬉しい…俺も君が好きだよ。…でも、君には選ぶ権利がある。決められた道に進まなくて良い君だから……だから…もっと沢山の人に出会ってから…唯一の人を決めるべきなんだ……大人になった君はとても美しいだろう……その時に…」


「その時は…その時に考える。」

リールの涙の止まらない瞳は、ダリウスを真っ直ぐに見て…そう言い切る。


ダリウスは頭を抱えた…

「〜〜〜〜〜〜………〜〜〜〜〜〜〜…〜〜…まったく…人の気も知らないで…〜〜〜〜〜どうして待てないんだ……」


思案に思案を重ねたダリウスは…呟いてから、顔を上げ

「…………さっき言ったように、()()、正式な婚約は結べない。……結ぶとしたら、リールが十七歳になってから…そして学園卒業後、直ぐ結婚。

………それまでは口約束の()()()()()止まりだ。……秘密だから、恋人らしい事も無し。これで良いか?」


ダリウスの提案にリールの涙は止まり、瞳がキラキラと輝き出す…

()()()()無し?」


キラキラとした瞳でダリウスに詰め寄る。


「〜〜勘弁してくれ………〜〜〜〜〜〜〜っ…口付けだけ!口付けまでだ!!…それだって本当は…」


続く言葉はリールの口付けによって塞がれた。


ダリウスは心の中で呟く…

『………早く大人になってくれ…』


ダリウスは幼少の頃からモテていたし…大勢の女性から言い寄られて来た。

仕事柄、出会いも多く…その分、別れも多かったが……そのどれもが、後腐れなく遺恨を残さず……良い意味の浮き名を流して来た。

そんな女性経験豊富なダリウスが…リールには形無しだった。



◇◇◇


ダリウスの秘密の恋人になり

誰にも知られないように、秘密の口付けを交わす…

そうして度々逢瀬を重ねて…リールは浮かれていた…

秘密の恋人…秘密の口付け…ダリウスに大人扱いされた事で、自信を付けたリールの雰囲気に…学園での人気も上がって行く


◇◇◇


 目立つ容姿のリールは、高学部に上がってからも直ぐに注目を浴びていた…


 高学部で、園芸部に入ったリールは…中庭の花壇の使用許可を貰い、ダリウスが商談相手に貰ったという花の種を譲り受け、育てる事にした…


『私の髪みたいな…鮮やかなオレンジの花が咲くって言ってた♪。ダリウス様の瞳みたいな色って事だわ♪。楽しみだなぁ』


 貰った春蒔きの種は、マリーゴールドだった…

そうして、リールは…花壇の世話をする為に、二日と開けず中庭に出向く。



「……ねぇ君…一学年?…いつもここに居るよね…」

話しかけて来たのはウィリアムだった。



リール嬢の回、収まりきらないので2回になりました。

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