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「彼女は死にました。」私はあなたの子を産みません。  作者: Kurakura


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クレアの絶望・前


「あぁ……もう…無理……耐えられない…………約束したのに……」


そう呟きながらクレアは溢れる涙を止められずにいた。


どうやって帰ってきたのか分からない…

気付けば自室の鏡の前に座っていた。



****************


 私とウィリアム様は、随分幼い頃から一緒に過ごしている


 ゆるい癖のある金髪が太陽を反射してキラキラ光って、澄んだ青い瞳に自分が映る…

「クレア行こう♪」そう言って私を呼ぶ声 差し伸べる手

 私はウィリアム様が全部全部。大好きだった。


 お父様とお母様から

私はウィリアム様の婚約者候補なのだと教えられた時は

嬉しくて嬉しくて天にも昇る気持ちだった。


 ウィリアム様と正式に婚約が結ばれた時は緊張で震えそうだったけど

「クレアが婚約者で凄く嬉しい♪ これからもよろしくね♪」

 そう言って、手を繋いでくれたウィリアム様の笑顔は、ふんわりと優しくて…私の緊張はスルスルと溶けていく。

この時は、ウィリアム様の隣でずっと笑っていられると信じていた。



 ウィリアム様と婚約して間もなく、王城でパーティが開かれた


 初めてのパーティ…

初めてのドレス…

何もかもが初めてだった…


 正装したウィリアム様は凄く凄く格好良くて…

そんな素敵なウィリアム様が自分の婚約者で、今日はファーストダンスを踊るのだと…気持ちがフワフワしていた。


 ウィリアム様は少しの間、陛下と一緒に挨拶回りにと離れてしまわれたので、その間は幼馴染のヘクター様と話していた。

ヘクター様は同い年なのに、私よりずっとしっかりしててお兄さんみたい。

 私と同じ黒髪だから、余計にそう思う。

ウィリアム様と同じ様な青い瞳が羨ましい。私の赤い瞳と取り替えてほしい。


 しばらく経っても戻ってこないウィリアム様が心配になり、ヘクター様と一緒に探しに行こうかと動き出した時

 音楽が鳴り始めて、私は焦った。


(大変!ウィリアム様とファーストダンスを踊るのに…)

と思った瞬間、目に入ったのは


 見知らぬ令嬢と踊るウィリアム様


「……えっ?…」


 踊る二人の姿を見て身体がカタカタと震え出す

(どうして?どうして?どうして?…)


 今夜はパーティの最後に婚約発表をするって

だからウィリアム様のファーストダンスは私だって

約束したのに…


私は庭園に飛び出した。

「クレア!」

ヘクター様が追いかけて来る。


 噴水の所まで来て縁に座り込む

「クレア…大丈夫?」

 追い付いたヘクター様が私の顔を覗き込んで尋ねて来たけど

「ううう〜〜っ」

声を出さない様にするのが精一杯で、答えられない…目からは涙がポロポロと溢れてしまう。


「クレア!!」


ウィリアム様が息を切らしてやって来た。


「ウィリアム……何やってんだよ!今日はクレアとファーストダンスを踊る約束だっただろう!」

 ヘクター様の荒げた言葉に


「ご…めん…」

ウィリアム様は小さく呟く様に謝った

 そんな()()()謝罪が逆に癇に障って


「ひどい!ひどいわ!!ウィリアム様とのファーストダンス…凄く!…凄く楽しみにしてたのに!!」

 涙をボロボロと溢しながら叫んでしまった。


こんな風に泣いて喚いたら、困らせてしまうって分かってるけど…涙も言葉も止まらなかった。


ウィリアム様は焦ったのか

「ごめん!本当にごめん!! 今日はもうクレア以外とは踊らないから!」

そう言って、ちゃんと謝って慰めてくれた。


涙を拭いながら「……本当に?」と尋ねると


「うん!今日はもう、クレアとしか踊らない。」


 そう言ってもらって、ようやく私の涙は止まった。

ウィリアム様に涙をハンカチで拭われ、会場までウィリアム様のエスコートで戻る。


それから何曲もウィリアム様と踊って、とても楽しかった。

 とても楽しいひと時だったのに


 パーティ終了の挨拶で、ウィリアム様の婚約者として紹介された時

何処からか


「でも、ファーストダンスはクレア様ではなかったわよね…」

「ファーストダンスを断られたのかしら…」

「ウィリアム様は本意じゃないんじゃ…」

「ファーストダンスをしなかったから、その後はずっとクレア様がウィリアム様を独り占めしてたのよ…我儘なのねぇ」

「ウィリアム様は他の子とも踊りたかったんじゃ無いかしら…」


 私は青褪めた

お祝いの言葉も沢山聞こえてるのに、耳に残ったのは貶める言葉ばかり


 王城から帰る為に馬車乗り場まで歩く間も、貶める言葉が頭の中をグルグル回る。


「…ハァ……」と、

思わずため息が溢れてしまった

 お見送りについて来てくれてたウィリアム様は、私がまだファーストダンスの事を気にしてると思ったみたい。

私の耳に寄せて

「次のパーティの時は必ず一番最初に踊ろう。」

コッソリとそう言った。


 私はコクコクと頷いて赤くなる耳を押さえながら

(でも…もうそれは()()()()()()()のダンスじゃ無い。)


心の中ではそう思っていた。


 馬車の中では

「ウィリアム様はどう言うつもりであんな事を!」

お母様は怒っていた


「まぁ…婚約発表の後じゃなかっただけマシだと思おう…」

お父様はお母様を宥めていた


「後とか先とかの問題じゃないでしょう!大事なファーストダンスなのに!……今後…クレアが何と言われるか……」


 お母様の憤りは中々収まらなかった。



 あの王城でのパーティから、ウィリアム様は少し変わった気がする。

 婚約する前はもっと気遣ってくれてたと思うのに、私の思い違いだったのかしら


 だってあれからウィリアム様は、度々あまり知らない令嬢に凄く優しく接する。


元々優しい方だったけど

優しいのは良い事だけど

私はそれが凄く嫌だった

私が我儘だからそう思うのかな…



 とあるパーティに招かれた時

ウィリアム様は私をエスコートして入場した後、突然手を離して再び入り口に戻った。

そして、全然知らない令嬢の手を取って入って来た


 ーー凄くショックだったーー


「あの子が困っていたからだよ」

どうやらその令嬢は、会場にご父君が先に入ってしまい困っていた様で

 それに気付いたウィリアム様は、助けてあげただけ


「誰か他の人に頼んでも良かったじゃない…」

私が涙目でむくれると

「!…そーだね!ごめん!人にご父君を探させても良かったのに…ごめんね!」


 ウィリアム様は一生懸命謝ってくれた。

謝ってくれたから もうよかったのに…


「クレア様のエスコートが嫌だったんじゃない?」

「少しの間でも一人残されたら可哀想ね。」

「ウィリアム様の優しさなのに、クレア様ったらお心が狭いのね。」

「独占欲が強いのかしら。」


また、貶める言葉が聞こえる。



 王妃様主催の薔薇の鑑賞会

自由に花を摘んでいいエリアでは、子供達がブーケ作りを楽しんでいる。

そして作ったブーケは身内や婚約者に贈る


当然、ウィリアム様は私に下さると思ったのに

見ず知らずの令嬢に渡していた…


 私は作りかけのブーケを握りしめて、涙を溢さないよう堪えてたけど、耐えきれずにポロポロと溢れてしまった。


 王妃様とお母様は青褪めて、侍女にウィリアム様と私を休憩室に連れて行かせた。


休憩室に入ってすぐ、私は蹲って泣いてしまった。


「ごめん!ごめんよクレア…あの子が(私は婚約者が居ないから、誰からも貰えない)って言ってたから………本当にごめん!

これから、あの子より大きな花束を作って贈るよ!だから…ね♪…機嫌を直して…」


私は機嫌が悪い訳じゃない…悲しいだけ…


 王妃様とお母様は、会場のご婦人達に

ウィリアム様はブーケは身内か婚約者に渡すと言う不文律を()()()()()()と伝えたみたいだけど、きっと誰も信じてない。


「クレア様にブーケを渡すのがお嫌だったのね。」

「クレア様は婚約者に相応しくないと思ってらっしゃるのでは?」

「より大きなブーケをだなんて…ウィリアム様も大変ね。」

「ウィリアム様、振り回されて可哀想。」


貶める言葉が、頭にこびりついて離れない。


 お母様から

王妃様がウィリアム様に注意したって言ってたのに、ウィリアム様は度々他の令嬢を気に掛ける


「ごめんね……あの子は初めてのパーティだから親切にしただけなんだよ。」


そして直ぐに謝って

「ほら、今からは三曲続けて踊ろう♪」

直ぐに私のご機嫌を取る


ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ……


そして私は貶める言葉に取り囲まれる。



繰り返し

「君が見当たらなかったから適当な子に声を掛けたんだ」


繰り返し繰り返し…

「僕の色の宝石を贈るから機嫌を直して♪」


 ヒソヒソヒソヒソヒソヒソ…

  ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ……

ヒソヒソヒソヒソヒソヒソ…




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