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「彼女は死にました。」私はあなたの子を産みません。  作者: Kurakura


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王妃の嘆き


(…どこで間違えたのか…)

王妃は頭の中でずっと自問している




 レイナの涙が止まり、様子が落ち着いたら王妃も立ち上がった

レイナ達の元へやって来て、夫人に向けて話しかける。

「クラリス、少し二人だけで話したいの…良いかしら?」

 そう夫人に尋ねた時


「あら?ここは王城ですか?」


レイナが()()と入れ替わった。


「レイナ?」

公爵が尋ねると

「お父様!お久しぶりです  ()()()って何ですか?」

 コテンと首を傾げて聞き返してくる自分の娘に、大きな喜びが湧き上がる。今一番会いたい()では?と


堪らず夫人がクレア()の両肩を掴んで尋ねる

「クレア!?」


「お母様  お母様もお久しぶりですね 」

ニッコリ笑うクレア()に、夫人の目からは涙が溢れて、そのまま強く抱きしめる。


「クレア!あぁ…クレア…」


「お母様?…どうしたの?大丈夫?」

夫人の背中を摩るクレア()

 夫人は完全に()()()だと思っているが、他の面々は困惑している。


陛下がリッター医師に問いかける

「これが解離性同一障害か?……こんなに突然入れ替わるのか?」


 その声にクレア()が先に口を開いた

「えっ?!陛下?!……王妃様も!ご挨拶申し上げます!…お母様離して…ご挨拶出来ないわ…」


 元気な声で話すクレア()。その様子を見て公爵は夫人に話しかける。


「クラリス…一旦落ち着こう…」

公爵の気持ちは夫人と同じだったが、自死しようとした後でこの態度は()()と分かってしまった。


セイン医師はアニタに視線を向けると、アニタはフルフルと首を横に振った。

(自分の知らない人物(人格)だ)と言う意思表示だ。


(アニタさんも把握して無い()()…)

クレア()様…最後に覚えている事は何でしょうか?」

セイン医師がクレア()に問いかける


「あら、セイン先生。お久しぶりです。……最後に?……ウィリアム様とダンスレッスンしてました ………あれ?………………」


クレア()はしばらく考えた後

「……ダンスしてた事()()覚えてないわ?」


 その言葉に夫人は抱きしめていた体を離し、まじまじとクレア()の顔を見る。


(……違う……この子も()()クレア……)

 夫人の目から更に涙が溢れ、両手で口を押さえる。声を上げない様にだ


「ぅう……」

「お母様?!」

驚くクレア()を公爵が押さえ、泣き悶える夫人を王妃が支える。


「クラリスは私が…」

そう言って、王妃は夫人を連れて応接室の続き部屋に連れて行った。


 側に付いていた侍女に、タオルを用意する様に指示して

王妃は夫人を連れて続き部屋に入る。

 夫人をソファに座らせたところへ侍女がタオルを持って来る


 王妃はタオルを受け取り、口を押さえて俯いて泣く夫人の顔の前に持って来る。

「クラリス……思い切り泣いて大丈夫だから…」


その言葉に、夫人は受け取ったタオルに顔を突っ伏し、叫ぶ様な鳴き声をタオルに吸わせた。


 王妃は蹲り泣き叫ぶ夫人の背中を摩って

(ごめんなさい…きっと私が間違えた……もっとちゃんと…もっとクレアを気にかけて……もっとウィリアムを……)


 王妃のヘルミナとクラリスは、学園時代に同じクラスになり

侯爵という同じ家格だったのもあって、直ぐに仲良くなった。


 当時、王太子アルベルト(国王陛下)の婚約者だったヘルミナが様々な重圧を乗り越えられたのは、友人のクラリスの支えがあってこそだと思っている。

 婚姻が結ばれて王太子妃になっても、王妃になってからも、掛け替えの無い存在だ。


だからクラリスの娘のクレアとウィリアムの婚約が結べた時、王妃は本当に嬉しかった。


(あの時からウィリアムはおかしくなった…)


 婚約を発表する夜会が行われた日

ウィリアムはクレア以外の令嬢とファーストダンスを踊った


 王妃は目を疑った

今日はウィリアムとクレアの晴れの日になるはずだった。

華やかな舞台で、幼くも凛々しく装ったウィリアムと可憐に美しく着飾ったクレアのファーストダンスを、母として楽しみにしていたのだ。

 ドケーシス公爵夫妻の方を見れば、焦った様子でクレアを探している様だった。

王妃が簡単に席を立つ事は出来ず、焦りと困惑を微笑で隠す事しか出来ない。


 半階上の王席からは会場がよく見える

遠目に、庭園に走って出て行くクレアと後を追うヘクターが見えた


ダンスを終えて、クレアを探しに庭園へ出るウィリアムが見える


 しばらくして子供達が戻って来る

その後、他の貴族達が挨拶に来て気を配れなくなり

ウィリアムがクレアと()()踊り続けていた事に気付いたのは、パーティも終盤の頃だった


(……よくない…これではクレアの印象を下げる…)


パーティの終了の挨拶をする為、王席まで上がってくるウィリアムとクレア。


 クレアをウィリアムの婚約者として紹介した時

何処からか…


「でも、ファーストダンスはクレア様ではなかったわよね…」

「ファーストダンスを断られたのかしら…」

「ウィリアム様は本意じゃないんじゃ…」

「ファーストダンスをしなかったから、その後はずっとクレア様がウィリアム様を独り占めしてたのよ…我儘なのねぇ」

「ウィリアム様は他の子とも踊りたかったんじゃ無いかしら…」


 (やっぱり…)と王妃は歯痒く思った

ドケーシス公爵夫妻の方を見ると、流石は高位貴族と言った佇まいで笑顔を纏っている。


 ウィリアムの隣に立つクレアは顔色を悪くしていたが

少しすると、表情を整え柔らかい笑みを浮かべた。

(………なんて気丈な…)

王太子妃に相応しい佇まいを取るクレアに、ウィリアムとの安泰した未来を見た気がした。


《この時のクレアの様子に慢心してはいけなかった…》


 パーティの後、ウィリアムには厳しく叱責し、ドケーシス公爵家に謝罪の書簡と個人的にクラリス宛に謝罪の手紙を出した。


しかしウィリアムは度々繰り返す、クレアを傷付ける様な行為を


 その度に厳しく注意するのだが、段々(またなのか…)と、叱る方も慣れて来る


その内、ウィリアムのこの行為がクレアへの拗れた愛情表現と気付いてしまえば、『仕方の無い子』と言う甘い目線にもなってしまった


(もっとウィリアムを咎めるべきだった…)



 王妃主催の薔薇の鑑賞会

自由に花を摘んでいいエリアでブーケ作りを楽しむ子供達、そして作ったブーケは身内や婚約者に贈るのだが

 あろう事かウィリアムはクレアではなく、見ず知らずの令嬢に渡した。


 王妃は慌てて侍女に、ウィリアムとクレアを休憩室に連れて行くよう指示する

目線の先には青褪めてクレアを宥める夫人が見える


 王妃と夫人は会場のご婦人達に

ウィリアムはブーケは身内か婚約者に渡すと言う不文律を()()()()()()と伝えたが、後の祭りだった


「クレア様にブーケを渡すのがお嫌だったのね。」

「クレア様は婚約者に相応しくないと思ってらっしゃるのでは?」

「より大きなブーケをだなんて…ウィリアム様も大変ね。」

「ウィリアム様、振り回されて可哀想。」


クレアを嘲る言葉の数々に王妃は頭を抱える


「ウィリアム!!!いい加減にしなさい!クレアを失う事になるわよ!」

流石にこの時は、声を張り上げて叱責した。

ウィリアムも()()()反省していた。

反省している様に見えた…


(私はウィリアムを分かってなかった…)


ウィリアムはやめない…やめられないのだろう。

それでも、後から()()()()()する事を愛情表現としていたから、埋め合わせをする為の()()()()()なのだから


愚かなウィリアムが、埋め合わせを()()()()()()()()とは思わなかった


(私が一番に気付かなければいけなかった…)


 妃教育では王妃とのお茶会も組み込まれている、王妃は夫人よりもクレアに会う機会があったのだ。


(可愛いクレア……可哀想に……気付かなくてごめんなさい……)



 夫人の背中を摩りながら、王妃の瞳からも涙が溢れる

(ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…)


何をどこから謝ればいいのか分からず、謝罪の気持ちは声に出来なかった。



しばらくして落ち着いた夫人は、タオルから顔をあげる

すると涙でボロボロの王妃と目が合う…


「!……なんて顔をしてるんですか…」

そう言って手元のタオルをたたみ直し、タオルの綺麗な部分で王妃の目元を拭う。


「……だって……私がもっと………ごめんなさい…」


 王妃がやっとの想いで口にした謝罪の言葉に、夫人はふるふると首を横に振る。


「みんなです。みんなが少しずつ()()()()()()

配慮が…気遣いが…認識が…


「……ヘルミナ…クレアを助けてくれますか?」

「勿論よ!」

ヘルミナはクラリスを抱きしめて誓った。



 様子が落ち着いたのを見計らって、冷たい飲み物が運ばれて来る。


二人が好きなレモネードの入ったグラスに

ミントが爽やかな香りを添えている。

 二人は目元を冷たいタオルで冷やしながら、それを飲む


ガターーーン

凄い音が応接室の方から聞こえて、王妃と夫人の肩が跳ねた


「何?!何事なの?!」

「大変!!きっとフュリアスだわ!」


二人は立ち上がり、応接室へ急ぐ

扉を開けた王妃は目をむいた…


セイン医師とハーミット公爵に押さえられている、暴れるクレア(フュリアス)が見えた。




まさか、陛下と王妃にも名前を付ける事になるとは

思ってもいませんでした。


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