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第二話:迷い込んだ勇者と秘密のダンジョン

森の奥の隠れ家カフェは、今日も静かな時間を刻んでいた。リゼットはカウンターの向こうで、丁寧に紅茶を淹れている。琥珀色の液体が湯気を立ててグラスに注がれると、甘い香りが空間に広がった。


「いらっしゃいませ」


扉が静かに開き、冒険者らしき男が顔を覗かせた。鎧は擦り切れ、顔には疲労の色が濃い。彼は一瞬ためらいながらも、足を踏み入れた。


「ここが…隠れ家カフェ?」


リゼットは微笑みを浮かべ、温かく迎えた。


「ようこそ。疲れたあなたにぴったりの場所ですよ」


男はカウンターに座り、息を整えながら言った。


「俺はアルト。長い旅で心身共に疲れている。噂のカフェと聞いて来たが、まさかこんな場所だとは…」


リゼットは彼に手作りのクッキーを差し出す。クッキーは、ほんのりとシナモンの香りがして、口に含むと優しい甘みが広がった。


「このクッキーには、疲れを和らげる特別な魔法を込めてあります。どうぞ、ゆっくり休んでくださいね」


アルトは驚いたように目を見開いた。


「魔法……?」


リゼットは微笑んだまま、カウンターの奥の壁に手をかざす。壁が揺らぎ、再び異界への扉が現れた。


「もしよければ、こちらのダンジョンへもご案内します。戦いに疲れた心に、少しの癒しを」


アルトは少し迷いながらも、扉をくぐった。そこには、星々が瞬く洞窟、光る泉、妖精が舞う庭園が広がっていた。まるで夢の中にいるような不思議な空間だ。


「なんだこれは…」


彼の目には涙が浮かんだ。長い旅路で忘れかけていた、心の安らぎがそこにあった。


「ここは私の作り出した空間。あなたの心が少しでも軽くなれば、それが私の喜びです」


アルトは深く頷き、そっとリゼットの手を握った。


「ありがとう、リゼットさん。ここに来て本当に良かった」


森の奥のカフェには、今日も新たな訪問者が癒しと驚きを求めて集まっていた。


しかし、その噂は少しずつ外の世界へと広がり、やがて彼女を追放した者たちの耳にも届き始めていた――。

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