第一話:森の奥、異界への扉
この作品は他の作品に比べ、本編を短めに作成しております。
霧深い森の奥。木々のざわめきの中、ひっそりと佇む小屋からは、淡い琥珀色の光と甘い香りが静かに漂っていた。
「いらっしゃいませ……」
扉を開けて入ったのは、一人の青年冒険者だった。彼は疲れた表情を浮かべながらも、不思議と心が落ち着くその空間に吸い込まれていく。
小屋の奥に立つのは、リゼット。かつては忌み嫌われた魔女であり、追放された存在。だが彼女の瞳は澄み渡り、その微笑みは優しく温かかった。
「ここは、誰にも知られていない隠れ家カフェ。扉をくぐれば、あなたの知らない世界へご案内します」
そう言って差し出されたのは、星屑マカロン。淡い青色に煌めき、口に含むとほろ苦く甘い味が広がった。
その瞬間、壁の一部がゆらりと揺れ、次元の扉が現れる。扉の向こうには、地下の泉が琥珀色の光に包まれ、星空のように輝く洞窟、妖精が舞う迷宮の庭が広がっていた。
「このダンジョンは、私の心が映し出された場所。ここで癒されて、また強くなってほしい」
冒険者は目を輝かせた。疲れた体も、心も溶けていくのを感じる。
それからカフェは、異界の扉を通じて訪れる客を癒し続ける場所となった。
だが、そんな穏やかな日々も、彼女を追放した魔女狩りの者たちの耳に、カフェの噂が届き始めていた――。
お読みいただきありがとうございました。
この後の話も基本的には1000文字以下で書いておりますので、お読みいただければ幸いです。