我が城へようこそ
書きたい話が多すぎる・・・。調子に乗らないで早く異世界転生させなくては(使命感)
タワーマンションの前に高級車が止まった。街灯はもうポツポツと消えており、サルスベリやツバキなどの樹木の葉々が近くの焼き鳥屋の風とともに揺れている。そこからコツコツヒールを響かせ運転席から下りる絶世の美女、
「выглядит вкусно【美味しそう】」
「・・・。」
えええ・・・。おれどんなリアクションすれば良いのだ。
「こんな夜更けに女の子送るってラブホか実家くらいだろう。まさかお引越ししている男女がいるなんて想像もできないだろうなあ。ところで、おれどこに連れていかれるかそろそろ教えてください。」
「したかナイデスねえ。ズバリッ。あそこのマンションです。私の荷物も持ってくれるなんてくるしゅーないデス。感謝してあげマス!」
はいはい。先を急ぎましょう。なんか高級そうな建物だなあ・・・。ぼんやりしながら額の汗を拭いながらおれは疲れ足に鞭を打ちエレベーターに乗り込む。
大きなダブルベットさえ入りそうである。あっという間に最上階へと登っていく。112、113、167・・・。いやここ何回まであるの? 無音で恐ろしい速さで上がり続けているエレベーター。タッチ鍵を入力しセンサーに認識させ止まる階が指定されていたのだろうか。
乗り込んですぐに女神さまがしていた手順を脳内で反芻し次困らないように備えておく。
「新居ってまさかタワマンなんですか? マジか・・・。」
「なんですかそれは? 日本めちゃくちゃ狭いです。少しお値段張りますが、私の稼ぎならよゆーデス。ご心配なく♪」
どうやらこのお姫様は高所得者らしい。年収何千万あったらこんな所に住めるっているのだ?
あまりにも冴えないおれの人生にとってそんな知識を得られる機会なんてないから知らん。
エレベーターを出ると廊下及び通路、天井、なにもかもが高級ホテルのような作りである。カーペットの上をシュナリシュナリと歩く絶世の美女。しかしそれも5歩までだった。
全身から喜びをあらわにしおれを置いて駆け出して行ってしまう。
「наш замок!!!!【私たちのお城よ】」
部屋を見つけて振り返っておれに話しかけてくれたのだろう。ロシア語全然わからないが、なんとなくそんなこと言っていてくれてそうだ。おれまだ君の後ろにいないけどね。
おれがようやく追いついた頃、彼女は入り口でおれのことを待っていてくれたようだ。
ふわりと優しい甘い香りとともに髪を後ろに払い肩にのせ、彼女は大真面目な顔をしてまた言った。
「наш замок!!!!【私たちのお城よ】」
えええ・・・。同じ言葉をまた言ってくれるなんて。この子絶対いい子だよ。本当。全人類男女問わず心臓を止めにかかってくるような破壊女神の一撃で真のフェチに目覚めてしまった。
おれ愛妻家になるよう分からされちゃいました。タスケテ。誰かタスケテ。
「へい。カモン!」
「あ、ごめん。楽園が見えてしまってました。ふう。」
「荷物もてくれて、ありがとデス。感謝。」
「これくらい気にしないで下さい。」
手を合わせて首をかしげてウインクまで!? 艶やかな厚い唇は月の女神と称するほどのやわらかな微笑みを浮かべており、もはやあざとさや可愛らしいとおれが思うのさえおこがましい気がしてきた。
その存在自体が尊いってこういうことをいうのか。おれはアイドルには興味がなかったが、きっとこういう気持ちのことを言っていたのかも知れない。
ドアも開けてくれて、スリッパまで並べて出してくれた。パタパタ動く彼女が可愛いすぎて、かがんだときに神聖なる谷間が見えただろうに、つい見逃してしまった。
「ありがとう。ここにいったんおいておいてもいいかな?」
トンッ。と玄関の方に軽く突き飛ばされ驚いて見とれてしまう。彼女が視界に入ったら人類なら見とれてしまうのだからこればかりは仕方ないだろう。
「あの・・・。」
クルリっ。振り返り彼女はひまわりが咲くような笑顔で真夏の昼下がりの艶やかな花びらが風に揺れ動く風景をおれの脳内に授けてきた。
「お帰りなさいっ。あなた!」
「ただいま!(煩悩完全消滅昇天不可避)」
な、なんだったんだ今の不意打ちは!?
「私これでもお仕事夜まででして・・・。たぶんたっくんより仕事終わるの遅いデス。だからまあ言ってみたかったのデス。ほら日本人男性ってごはんにする? お風呂にする? それともウォッカ!? みたいなの好きって聞いたデスから。」
うんうん。そう言ってじゃあ部屋を案内すると言っておれの手をひき連れていってくれた。
おれは話真剣にちゃんとしっかり耳の中かっぽじってまじめに聞いていたのだけれど。心の中では明日から残業死ぬほどいれようと誓った。
「あとは~。あんまり残業しないで下さいね。2人の時間がとれないデス。それは寂しいデス。」
定時で退社をしようと再び誓いなおした。もう手の平くるっくるである。会社がおれの行く手を阻むのならば壁を爆破でもして直帰しようぜひしなくてはと。
おっといけない。彼女のその大きな魅了的な瞳がおれをまだ見つめている。なんて美しい瞳なんだ。まるで宇宙のようなぽっかり開いた空間に吸い込まれていく、そんな錯覚を水色の宝石のような目に圧倒されてしまう。
いつの間にかリビングに行きついていたおれたち。
大きな白いふかふかなソファーに彼女は座り、片膝に足をのせる。その流れるような品のある女王様のような仕草におれがみとれていると、彼女は眉をひそめおれが隣に座るよううながしてきた。
「では失礼して。」
おれが隣に座ると彼女は笑顔になった。
もうすぐ手を伸ばせば2人の手は今にも絡みありそうで。これはおれから握りに行く流れだよな。もうおれ彼女のこと良く分からないけど好きだし。これは身体の相性も確かめないとな。決して変な意味などではない。断じて!!! だが紳士諸君なら誰だって行動に移したくなるだろう! こんな美女の前にはどんな男だって野獣になってしまうのさ。
おれが勇気を振り絞って彼女の顔を覗き込んだとき。
「スマホ貸して欲しいデス。」
有無を言わさぬ勢いで言われてしまった。笑顔の下に圧があるようで怖い。
「どうぞ・・・。」
これは、あれか。今流行りのヤンデレパターンでGPSアプリなどを仕込まれてしまうやつだろうか? まったく仕方ないな。おれは彼女の束縛が世界一酷くてもそれでも耐えてみせる。いや多分なんとか頑張れるはず。
「ええ・・。カメラアプリはどこデスカ。あ~そのままで大丈夫デス。もう見つけましたので。うん。こんな感じでよさそうなのデス。」
パシャリッ。おれとの初2ショットがおれのスマホに納められた。
おれの心配はどうやら奇遇だったようだ。疑ってしまい本当に申し訳ないです。
「この写真使って欲しいデス。これで日本にあるという地獄からの誘い合コンに行かずにすみますね! 良かったデスネ!」
ジーーーーーーーンンン。こんな細やかな心遣いできるのかこの子。
「あ、ありがとう。一生大事にします。」
「ええ。あたりまえデス。私は世界一いい女なのですから。ふふーん。だから・・・。あなたは世界一妻を愛し大事にする夫になる必要がありますデスネ!」
「任せて下さい。おれも世界一妻に愛される夫になれるよう頑張ります!」
顔が真っ赤っかになってしまった彼女。彼女に瞳の中にはおれの顔が映っていて。それがなにより幸せに感じた。おれを見てくれている。こんなにも好意をよせてくれていて。
本当におれなんかにもったいない女神さまです。
ああ。もうこのまま時間止まってくれないかな。これキスしてもいいかな? おれもう我慢なんてできなっ。
「も、もう時間が遅いデスから。眠りましょうか。」
「で、ですね。」
「部屋まで送ります。」
「ええ。」
廊下を歩いて行くとき、ただ歩いているだけで。彼女と一緒にいる時間が最高に幸せに感じた。
無情にもお別れのときは来る。扉の前でおれはありったけの力(?)を振り絞って別れの言葉をつむぎかけた。
だが彼女は魔性の女神さまだったらしい。
「ここは私の部屋ですが。」
「そのようですね。」
「夫婦ともなれば一緒に寝なくてはと思うのです。」
「よろしいのでしたらぜひ。」
「良いデスカ? 今日はただ一緒に寝るだけですよ?」
「クッ。善処します。」
「フフフッ。」
なんだかからかわれた気分である。
そう言っておれの袖を引っ張りベットまで連れていく。
ササッとベットに潜り込み包布を上半身だけ起こしてたくし上げ、シーツをぽんぽんと叩く。
「今夜は添い寝してあげますデス。」
「光栄ですよ。」
そう言ってなにげない顔をしながらおれは彼女の横に寝っ転がった。おれはなにかと胆力はある方なので心臓はバクバクうるさいのになぜか落ち着いていた。
「頭に包布被ってて下さいね。そのまま大人しく決して覗き見したらダメなんデス。わかりましたか? 約束デス。」
彼女はおれをベットに残したまま、なにかをするのだ。そこまで鈍くないおれは寝間着に着替えるのだと思いつく。
布切れが擦れる細やかな音。ススーっと着脱をしているのがリアルに想像できる。
だが男の約束をしたのだ。おれは決して覗きなどしない。
「もう、いいですよ。」
ぼそりと耳元に囁かれた。
「か、可愛い。」
「ではご褒美をあげましょう。背中をそのまま私に預けて下さい。」
「ええ。」
ふわりと優しく彼女は抱きついてきた。
「たっくんは覚えていないかもしれないけど・・・。私はやっと君に合えたのデス。とても嬉しかったデス。こんなにカッコ良くなっていてくれて。結婚してくれてありがとデス。милый【ダーリン】」
まるで天使の羽に包まれているような安心感と鈴の音のような甘い言葉。それはおれがこれまでの人生の中で一番の熟睡へと誘うにはあまりに易かった。
「フフッ。もう寝ちゃいましたか。私ももうこのまま顔を埋め・・・。て・・・・。スア・・・・。」
まだ部屋には夜光灯がついていたが消してくれる人は誰もいなかった。仲睦まじく添い寝をする2人の影が淡い光に照らされていた。
読んでくれてありがとう♪