6話 祝! 初デート!
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
【悟の一目惚れ 6話】
多村は、待ち合わせの場所に着いた。
(豊原さんは…まだ着てないか)
それもそのはずで、多村は、待ち合わせの30分前に着いていたのだ。
多村は、ジッと待っておれず、また、遅刻しては行けないと、早めに家を出たのだ。
もっとも早すぎだが。
(土壇場でキャンセルとか、からかわれてるとか無いよな…)
早く来すぎると、こんな事を思ったりする。
(あっ…)
その後、待ち合わせ時間の5分前に、遠目に女性を見つけた。
茶髪を後ろで結び、眼鏡をかけた女性が、歩いてくる。
その女性は、もちろん豊原だ。
「お待たせ。待たせたかな?」
「いや、早く来すぎちゃって…」
「そうなんだね」
豊原は、微笑んだ。
何度か見たことがある、美しい微笑みだ。
(やっぱり…可愛いなぁ)
今日の豊原は、先日の筆記試験時よりも化粧の色が鮮やかで、特に紅いリップが、厚めの唇に映えていた。
服装は、胸元が広めに空いた上着と、ジーンズの組み合わせだった。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
2人は、洋食屋の店に向かった。
多村は、スッと車道側に立って歩いた。
(車から守らないとね…最も車に突っ込んで来られたらどっちも危ないけど)
(私を守ってくれるのかな? ちょっと嬉しいかも…)
待ち合わせ場所から歩いて5分程で、店に着いた。
店内は、あまり広くないが、厨房の周囲にカウンター席が4〜5つがあり、その周りに4人がけのテーブルが4〜5つある。
また、暗めの店内に、ランプが灯してあり、昔からある、レストランといった感じの店だ。
多村は、メニューをとって、2人の前に広げた。
「へぇ〜、美味しそうなのがいっぱいだね」
豊原は、目を輝かせている。
「でしょう?」
「多村君、何かオススメはある?」
「そうだね…ここは、ハンバーグがとっても美味しいよ」
「へぇ〜、そうなんだ! 頼んでみようかな〜♪」
多村はAセットを、豊原はBセットを注文した。
しばらくして料理が運ばれてきた。
Aセットは、ハンバーグ、ポークのチーズ焼き、バジルのパスタ、ベーコンが2枚、ミックスベジタブル、ライス、コーンスープ。
Bセットは、ハンバーグ、貝柱のフライが2個、サラダ、ライスだった。
早速、豊原は、肉汁がしたたり、湯気が出ている、ハンバーグをナイフで切って、口に入れた。
「美味しい!」
豊原の目がキラッと輝き、歓声を上げた。
「でしょう?」
「うん!」
AセットもBセットもボリュームがある料理だったが、2人とも美味しさのあまり、あっという間にたいらげた。
「あ〜、美味しかった♪」
豊原は、ペーパーで上品に口を拭き取りながら話した。
その表情は、ほころんでいる。
「お客様、食後のコーヒーでございます」
「ありがとうございます」
多村は、ミルクと砂糖は入れずに、コーヒーカップに口をつけ、コーヒーをすすった。
多村の喉を、コーヒーの程よい苦味がゆっくりと染み渡る。
(これこれ、この店はコーヒーも美味いんだよ)
多村は、コーヒーの余韻を噛み締めていると、自分を見つめる瞳に気が付いた。
その瞳は、豊原の瞳だ。
瞳には、羨望と感嘆が込められていそうだ。
「豊原さん? どったの?」
コーヒーカップを横手に、多村が訪ねた。
「えっ?」
豊原は、一瞬目を背けて、少しうつむいた。
ほんの少し頬が、赤く染まっている。
思わず、見とれていたようだ。
「え、ええ、多村君、ブラック飲めるんだな〜って…」
「え? あ、ああ…」
「凄いなぁ、私、ブラックは飲めないから」
(ちょっと悔しいけど…歳下なのに)
「そうなんだ…」
「うん」
(まぁ、ブラックコーヒーをグビグビ飲まれるより、甘いミルクコーヒーやミルクティーを飲んでくれた方が合ってそうだなぁ)
「なぁに?」
多村の視線に気が付いた、豐原が訪ねた。
「何が?」
「何か言いたそうに見えたんだけど…」
「あ、ああ…豊原さんには、甘いミルクコーヒーを飲んでる方が、イメージに合ってそうだと思ってたの」
「へぇ〜、そうなんだ…」
豊原は、少しキョトンしている。
(ま、まさか、地雷踏んだとかじゃないよな!?)
多村は、内心ドキドキしている。
最早、コーヒーの苦みを舌が感じず、喉の伝わりも感じにくい。
2人の初デートは、まだ終わらない。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。