20話 非常事態
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
【悟の一目惚れ 20話】
「し、将…さん…」
由紀は、それ以上の言葉が出ず立ち尽くした。
一切の連絡手段を断ち切った男が目の前にいたのだ。
その男は、大柄で185センチはあるだろうか。
更に筋肉質で引き締まった体付きで、端正な顔立ちをしていた。
由紀の元彼だ。
由紀は、思わず後ずさりした。
由紀の心の底から、恐怖の二文字が湧き上がってくる…
「由紀…どうして何も言ってくれない?」
「い、いや…来ないで」
元彼が近づくと、由紀は、更に怯え後ずさりする。
「待ってくれ! 由紀!」
由紀が、後ずさりした際に、たまたま女性の友人がいるのが見えたので、急いで駆け寄った。
「あっ…!」
元彼は、立ち止まった。
「どうしたの? 由紀ちゃん」
「う、うん…も、元彼が来てるの…」
「えっ!?」
この友人は、由紀とは親しく、元彼との事情も知っていた。
「と、とりあえず、私の後ろに隠れて」
「ご、ごめんね…」
由紀は、友人の後ろに隠れるように立ち、友人の服を掴んだ。
その手は、震えている。
「なんなのあの人…ずっと立ってる…怖い…」
「ま、まだいるの…?」
(女の友人か…ここは、友人と話をつけてみるか、それとも一旦退散するほうが良いか…?)
暫く様子を見ていたが、元彼は、その場を離れようとしなかった。
由紀は、怖がっていて元彼の姿を見ることが出来ない。
「ここにいたら危ないね、どこか別の門から出ましょう」
「…!!」
由紀は、恐怖のあまり、言葉を発する事が出来ず、黙って頷いた。
友人に着いて別の門へと向かった。
「中に戻ったか…」
元彼は、苦々しそうに呟いた。
「ここなら…いないみたい…」
門の周辺を友人が伺った。
「こ、来ないうちに、は、早く、行こう?」
「ええ、そうね」
由紀と友人は、別の門から学校を後にした。
「由紀ちゃん、今日は家まで送るね」
「え…? で、でも…悪いよ…」
「もう…こんな時まで、人に気を使わなくて良いのよ。そんな状態の由紀ちゃんを放っておけないよ」
「あ、ありがとう…」
由紀は、その日は、友達に付き添ってもらった。
由紀は、その道中殆ど言葉を発さず、うつむいて歩いていた。
肩が震え、両方の瞳には涙が溢れんばかり溜まっている。
(こんなに怯えて…可哀想に…)
友人は、かける言葉も見つからないまま、黙って一緒に歩いた。
「つ、着いた…」
「うん、良かった。無事に着いたね」
由紀は、絞り出すように呟き、友人もホッと一息ついた。
友人も、元彼に出くわしたらどうしようかと不安はあったのだ。
「じゃあ、由紀ちゃん。家に帰ったら鍵をかけてね」
「うん…ありがとう…」
由紀は、玄関を開けて中に入り、直ぐに鍵をかけた。
友人は、それを見届けると何処かに去っていった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。




