17話 悟の誕生日
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
この17話は、ちょっと気持ち悪いシーンがあるので、読まれる時に、ご注意下さい。
【悟の一目惚れ 17話】
10月に入って学校が始まってから、由紀が忙しくなり、悟と会えなくなったが、連絡はちょくちょく取っていた。
そして、11月に由紀からLINEが来た。
「こんばんは、1週間後の夜9時に◯△公園に来れない?」
「僕は大丈夫だけど、由紀は大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。少しだけなら」
「分かった。行くよ」
そして、1週間後の夜9時に、悟は◯△公園に来た。
ここは、ブランコや滑り台がある、普通の公園だ。
(由紀は、まだ来てないみたいだな)
悟は、携帯を取り出すと、由紀からLINEが来ていた。
「ごめんなさい、課題が長引いて…後、15分だけ待ってくれない?」
(ほんとに凄く忙しいんだな)
「大丈夫。15分と言わずにまだ待てるから、ゆっくりどうぞ」
「ごめんね…」
(しかしまぁ、寒いなぁ…)
今は11月下旬で、夜はかなり冷え込むようになっていた。
それから待つこと25分、由紀が公園の入口に駆け足でやってきた。
入口を入るなり、辺りを見回している。
悟を探しているのだ。
(あっ! 由紀だ!)
「おーい! 由紀〜!」
悟は、由紀の姿を見るなり声を上げた。
由紀は、悟の声が聞こえ、声のする方を見ると、パッと表情が明るくなった。
その先に悟がいたのだ。
「さとるく〜ん!」
由紀は、名前を呼びながら、慌てて駆け寄った。
「ごめんなさい、遅くなって…寒かったでしょう?」
由紀は、走ってきたためか、ハッハッと息が切れている。
「いや、全然大丈夫だよ。由紀こそ、忙しい中、来てくれてありがとね、それでどうしたの?」
「あっ! これ…プレゼント」
由紀は、小さな包を悟に渡した。
「僕にくれるの?」
悟は、ビックリして目が丸くなると共に、堪えきれない程、嬉しい。
「もちろんよ。悟君、今日お誕生日でしょう? だから、どうしてもあげたくって…」
「ありがとう…開けても良い?」
「うん。いいわよ」
悟は、ワクワクしながら、包を開けた。
中には、明るい青緑色の石のペンダントが、入っていた。
「うわぁ…こういうの初めて貰ったよ、凄く嬉しい」
「うん。この石は、ターコイズって言うんだけど、悟君、この石、知ってる?」
「いや、知らない」
「この石には「成功」「繁栄」「健康」「幸福」「旅の安全」といった石言葉があるの。これがあなたを守ってくれると良いなって思って」
「ありがとう…大事にするね!」
悟は、心の底から沸き上がる喜びが、満面の笑みとなって現れた。
(悟君、ほんとに嬉しそう…あげて良かったなぁ…)
「あっ! せっかくだからつけてあげるね」
「ありがとう」
由紀は、ニコッと微笑み、悟は照れくさそうに礼をいった。
そして、悟の首にペンダントをかけた。
「ありがとう!」
悟は、ペンダントの石を持って眺めていた。
すると…
チュッ!
悟の頬に、由紀が軽くキスをした。
悟は、ビックリして由紀の方を向くと、由紀は口に手を当てて、微笑んでいた。
「これも…誕生日プレゼントよ」
由紀は、少し恥ずかしそうに頬を赤く染めながらも、いたずらっぽく笑った。
悟は、呆気にとられているが…死ぬほど嬉しくてたまらなかった。
「じゃあ、私はこれで。明日も早いの」
「あ、ああ…ありがとう…」
「バイバーイ!」
由紀は、大きく手を振ると、走って去っていった。
(由紀…ほんとに忙しいのに、わざわざ僕のためにこれを…)
悟は、心の底から嬉しくてしかたなかった。
そして、帰りにコンビニでトイレに寄ると、鏡に映る自分の顔の頬に赤いものが付着していることに気が付いた。
それは、唇の形をしていて、由紀の唇が触れた場所だった。
もちろん、由紀の口紅の跡でキスマークだった。
悟は、そっと触ってみた。
すると、指が紅く染まった。
(これ…由紀の口紅の跡だよな…)
「ウヒヒヒ…」
悟の鼻の下が、一気に伸びた。
鏡に映る、悟の顔はなんとも締まりの無い表情をしている。
(家に帰るから落とさないといけないけど…勿体ないなぁ…)
悟は、トイレに戻り、何度も自撮りした。
そして、泣く泣くキスマークの跡を落とした。
(あの感触を忘れないために1日1度は思い出そう)
悟は、ニタニタしながら帰路に着いた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。