15話 サンセットマリーナ⋯そして告白
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
【悟の一目惚れ 15話】
この日は、雲一つない快晴で、ジリジリと日差しが照りつける暑い日だった。
豊原は、真っ白な花柄の模様がある日傘を差した。
「暑いね」
「うん…」
「向こうの屋根があるところにいこうか」
「うん、そうね」
多村と豊原は、木造のベンチ、テーブル、屋根がある場所に向かった。
屋根と柱には、少しツルが巻き付いていて、日陰を作っていた。
多村と豊原は、隣に腰かけた。
(うーん、告白すると決めたものの、いつが良いのか…豊原さんは夕方までって言ってたよな、何時くらいまでだろう)
「豊原さん」
「うん?」
「今日って何時くらいまで大丈夫?」
「そうね…17:30くらいまでかな」
「そっか、分かった」
(すぐ告白してフラレたら、その後の時間が気まずくなって地獄の時間になるよな…ここを出るのが16:30過ぎぐらいとして…後半か…)
現在、14:00頃だ。
暫くの間、雑談した後
「ね、向こうに行ってみない?」
「ん?」
豊原が、指を差した先は、砂浜と小石が混ざった砂利浜とも言うべき場所で、穏やかに波が打ち付けていた。
また、波打ち際から反対側に、大きな木々が生えていて、木陰になっていた。
「うん、行こうか」
「うん」
2人は、その後日陰沿いに歩いていき、砂利浜の木陰に腰掛けた。
「ね、海を見てると何だか癒やされない?」
「そうかな?」
「じゃあ、海を見ててみて」
「うん」
多村は、海を黙って見ている。
すると、緩やかに水面が波打ち、大きく広い海が穏やかに包み込んでくれるような感覚を覚えた。
「あ…確かになんか癒やされる」
「でしょう? 私、海を見てるの好きなの」
「そうなんだね」
「うん」
暫く、2人は黙って海を眺めていた。
(そ、そろそろかな…う〜、緊張する…!)
「あ、あのっ!」
「ねぇ…」
「あっ…!」
2人同時に口を開いた。
2人は、思わず顔を見合わせた。
多村は豊原の瞳を、豊原は多村の目を真っ直ぐに見つめ合った。
2人は、直ぐに頬が紅くなり、磁石が弾くように互いにそっぽを向いた。
「あっ! 先にどうぞ…」
「多村君こそ、どうぞ…」
「い、いや、話を聞いてからにしようと思うので、豊原さんから先に話して」
「そ、そう? じゃあ…話すね」
「う、うん」
(な、何を話すんだろう…?)
多村は、ドギマギしながら耳を傾けた。
「私ね、前の彼氏がいたんだけど…」
「うん…」
「その人に、浮気されて、一方的にフラレたの…」
豊原は、視線を落とし、表情には悲しみが漂っていて、元々少し潤んでいる瞳が、潤みが増した。
涙目の一歩手前ってところだ。
「えっ!?」
多村は、ビックリした。
(なんて酷い元彼だ…豊原さんを傷付けて…許せない…)
多村は、怒りすら感じていた。
「それで、少し男性不信っていうか…」
「うん…」
(うーん…それは仕方無いよな…んっ!? も、もしかして…ぼ、僕も!?)
「でも…」
「で、でも?」
多村は、同様を隠せない。
(多村君の隣は…心地良くて…安心する…だけど…い、言えないよ…ど、どうしよう…)
豊原の口から内心思っていることが、言葉として出かかっているが、恥ずかしさと男に対する恐怖心が、最後の壁となって阻んでいた。
2人とも、しばしの間黙って、時が過ぎていく。
時間にすれば、数分なのだが、2人とも何時間にも感じられた。
多村は、1度大きく深呼吸をし、話を整理し始めた。
(ええと、豊原さんは、元彼に浮気されてからフラレた過去があり、男性不信な感じがあるらしい、でもって言って…そこで止まった。でもって…なんだろう? 男性不信…の割には僕とは3回も会ってるし、少なくとも僕からは、僕と会うのが嫌だとは思えない…と、いうことは…?)
「ご、ごめんなさい! 急に変なこと言って…」
「ううん。全然、変なことじゃないよ」
多村は、ほんの少し声が震えている。
だが、気持ちを落ち着かせて、なるべく平静に近づけようとしている。
「そ、そうかな?」
「むしろ、辛い過去を打ち明けてくれてありがとうね」
「そう…かな?」
「うん」
多村は、動揺しつつも、笑ってみせた。
「あっ…」
(ホッとする…そんなあなただから…私は私は…もう1度信じてみようって思うの…でも、どうして…なんで言えないの…?)
豊原の瞳に、涙が浮かんできた。
(タイミングが適切かは分からない…だけど、僕は僕は…この人を守りたい! だったら言葉にするべきじゃないか。フラレたって構わない! それでも僕はこの人が好きなんだ! だったら伝えよう!)
多村は、意を決した。
「豊原さん」
「はい?」
豊原は、潤んだ瞳で、多村を見つめた。
多村の顔には、緊張の二文字が書いてあるのが明白で、ガチガチに固まっているが、続けた。
「僕は…」
「僕はね…」
「?」
(言え! 言うんだ! 俺!!)
「僕は、豊原さんが好き」
多村は、とうとう告白した。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。