13話 海にドライブに行こう!
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
【悟の一目惚れ 13話】
今は、9月の下旬。
大学の夏休みは、9月いっぱいで、もうすぐ終わる。
多村は、考え事をしていた。
(豊原さんとの仲は、悪くないはず…次にもし会えれば、3回目だし、そろそろ告白しないとイカンよな…)
(僕にそんな勇気が…あるはずだ! 高校の時を思い出せ…あの時はフラレたし、今度もフラレるかも知れない…だけど、言わなきゃ関係が変わらない。もしかしたら恋人になれるかも知れないし、なれないかも知れない。それは相手の気持ち次第だ。結果は分からないけど、言わないで後悔するよりは、言って結果を受け止める方が良いはずだ)
多村は、うつむいて考え事をしていたが、顔を上げた。
その表情は、引き締まっていて、覚悟が決まった。
(恋は、タイミングが大事って言うしな、次のデートで告白できるようにムードを作れれば…)
(ムード作り…か。作り方は、さっぱり分からない…な)
多村は、苦笑いを浮かべた。
(だけど、とりあえず誘わなきゃ、何も始まらない)
多村は、携帯電話を取った。
そして、豊原にLINEを送った。
「こんにちは、近々また遊びに行かない?」
すると、すぐに既読が付き、返事が来た。
「うん。良いよ。9月いっぱいなら大丈夫だと思うよ。私、学校が始まったら、忙しくなると思うから」
「分かった。じゃあ、今度の土曜日に」
ここまで打って、手が止まった。
(どこに行くか…? 告白するんなら、ムードが良さそうなところが良いはず…って僕、知らないなそんなとこ)
多村は、慌ててモテる友達に良い場所が無いか、電話して聞いた。
幸い、友達はすぐに電話を取り、昼ならここ、夜ならここと教えてくれた。
「サンキュー! 助かったよ」
「武運を祈るぜ」
多村は、電話を切り、すぐに豊原にLINEの続きを打った。
「分かった。じゃあ、今度の土曜日はどう?」
「大丈夫よ」
「昼と夜ならどっちがあいてる?」
「その日は、昼から夕方までなら空いてるよ」
(昼…か、じゃああそこだな。天気予報は?)
晴れ。
降水確率0%だった。
「じゃあ、サンセットマリーナに行かない?」
「うん。良いよ」
「じゃあ、13:00に、こないだ別れたT字路で待ち合わせでどうかな?」
「良いけど…どうしてそこなの?」
「あぁ、その日なら親から車を借りれるから、車で行こうかなって」
「へぇ〜! 多村君、運転してくれるの!?」
「うん。僕の隣に乗ってよ」
「うん。嬉しい。よろしくね」
「こちらこそよろしく」
そして、土曜日の朝になった。
多村は、朝からソワソワしている。
例えると、トーナメント戦の決勝戦の直前のような気分だ。
(ここまで来たら、今更気負っても仕方ない。いつも通り過ごすか)
多村は、いつものように恋愛シュミレーションゲームを始めた。
そのゲームも、告白シーンを迎えており、ゲームでは見事に成功。
現実の彼は、告白し、ゲームのように上手くいくだろうか?
そして、早めに昼食を取り、身なりを整え、車で待ち合わせ場所へ向かった。
多村は、待ち合わせの10分前に到着し、近くのコインパーキングに駐車した。
「ちょっと早いけど着いちゃった。時間通りで大丈夫だよ」
多村は、豊原にLINEをすると、直ぐに既読がついた。
そして間もなく、先日豊原を見送った、脇道から見知った女性が見えた。
その女性は、茶髪で、自動車学校の頃よりも髪が伸び、今はミディアムヘアというよりセミロングヘアの方が近い。
薄化粧に、紅いリップが映えている。
また、この日は、つばが広い白い帽子を被り、水色のロングワンピースを着ていた。
そよ風がふいていて、髪とスカートが少しなびいている。
その女性は、もちろん豊原だ。
(おお…今日はまた一段と綺麗だ…)
豊原の後ろから、陽光が眩しく照らしていた。
豊原は、その光の中でもひときわ強い輝きを放ち、また一段と美しさが増していた。
多村は、思わず見とれていた。
コンコン…
助手席のドアを叩く音がする。
「多村君? 開けて」
ドアの向こう側から、小さな声が聞こえる…豊原が呼びかけていたのだった。
「ご、こめん…」
多村は慌てて、助手席のロックを解いた。
豊原が、ドアを開けた。
「お邪魔します」
豊原は、多村を真っ直ぐに見て、ニコッと微笑んだ。
豊原は、ワンピースのスカートをまとめて助手席に乗り込んだ。
「ごめん、気付かなくて」
「いいえ。大丈夫よ」
「それじゃあ、行こうか」
「うん」
多村は、PからDにシフトチェンジし、サイドブレーキを倒して、車を発進させた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。