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現実社会のホラー

作者: 雪河馬

現実は小説より奇なり・・・・・と言う話もあるが、比較対象が何かによって異なると思う。


そもそも人生というものはすべてオーダーメイドで、同じストーリーなんか存在しないもんだ。

似たような話でもどこか違うものであるし、シナリオ作家は気まぐれなので何が起こるかなんて予測もできない。

予測がつかないから面白いのであって、飽きたからといって自分から放棄する人が一定数いるのは非常に残念なことだと思う。


かく言う私の人生、現実は実に個性的で平凡なものだった。

地方の国立大学を出てそこそこの大企業に入社。

20代は希望を持って働き

30代は同期の連中に焦り

40代は希望は消え

50代は自分が大した人物でないことを受け入れて、がむしゃらに働くということも無くなった。

60歳になるまで数年といったところで子会社に出向し、あとは給料と同様に下がったモチベーションで年金をもらえるまで働き続けるだけ・・・・そう思っていた。


発端は同じ時期、私より数ヶ月だけ早く親会社からやってきて私の上司になった奴。

これがとんでもなく無能だったのである。

仕事はできず、プロパー社員にスルーパスする。

そのくせに、威張りちらしているので誰も相手にしない。

ほとんど日和見で、たまに下す判断は間違いばかりで、労働問題など支部に解決に行って逆に炎上させる始末だ。

結果、他の社員たちは私を頼ることになる。

さすがに申し訳ない気持ちもあり畑違いの仕事までカバーしているうちに私の仕事はどんどん増えていった。

そうこうしているうちに辛抱たまらなくなった社長が直訴し、無能な上司はいなくなり、私は新設された別部門の部長となった。子会社とはいえ一応の出世である。


そして元の部門には再び出向者がやってきたのだが同じことの繰り返しだった。

無能な人間だから出向させられるのだろうか。

それとも大企業の社員というのはそもそも一人で仕事ができない役立たずなのだろうか。

これではたまったものではない。

あ、私も出向者だった・・・・。


新任部長が慣れるまでの数ヶ月ということで前職場の肩書きも引き続き持っていたのだが、そんな様子でいつまで経っても解放してもらえない。

そのうち、会社の基幹システムが老朽化し更新しなければならないということになり、以前システム立ち上げを経験した私がプロマネとなった。

仕事がさらに仕事を呼び、アフターコロナで取引先の信用不安が相次ぎ、監査部門をつくらんとあかんなあという話になり、過去に少しばかり経験のあった私がその役目を引き受けることになった。

そして気がつくと、営業以外のほとんどのバックオフィス業務を引き受けてしまっていたのだ。


で、作品タイトルなのだが、実は私に超能力があり、そうなるように仕向けたのかって?

言っておくが()()()()()()ので私に超能力なんかないし、どんだけ頑張っても私の給料は変わらない。会社にとってコスパはいいが。


社員は会社の歯車というが、私は大きな歯車になりすぎたのである。

私ももう還暦、たいがい衰えが見えてきている。

身体もすこしずつガタがき始めているし、記憶力も落ちてきている。

親会社にいる時は小さな歯車であり、私が抜けても代わりがいたが、今は違う。

今、私という歯車ががさっと抜け落ちたらどうなるのだろうか・・・・・。

上も気づいて優秀な人間を私の部下につけ、後継者として育ててくれというのだがすぐ育つものではない。

それなりに手間もかかる。


気がついたら私は仕事の無間地獄に落ちていたのである。

ほんと、せめて給料が良ければねえ・・・・・・。









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