幕間2
最初見た時にわかった。
ああ、俺は嫌われているんだな、と。
それはきっと誰が見てもわかるくらいに、わかりやすかった。
敵意、嫌悪、悪意。
それをそのまま表に出せば、きっとこんな眼をするんだろう。
俺は”こいつ”に一体何をしたのか? 一瞬頭を悩ませ、しかしそんな事をしても意味がないのだと自嘲する。
昔からそうだった。
こんなあらかさまな”敵意”は初めてだったけれど、でも俺は人から嫌われると言う事を、何度も経験して来ている。
だから悟った。
無意味だと。
考えたところで、悩んだところで、答えなど出るはずもない。
俺は、目の前の相手に何かをした覚えもなければ、関わった事がほとんどないと言っていい。
この学校の風習もあって、挨拶をした事ぐらいは何度もあるだろうし、会話した事も……多少はあるかもしれないけど、それだけ。
知り合いとして関わって来た事はあっても、友人としての付き合いは皆無。
そんな人間が俺の事を敵視すると言うならば、俺が何かをしたのだろう。
だけどそれが何なのかは理解できない。理解したくてもできない。
そういうものなんだ、きっと。
だから、これ以上考えるのをやめてできるだけ関わらないよう決心する。
そうすることが一番なはずだと自分自身を納得させて、それを考えるのをやめた。
そうして。
俺と相手の接点は終わり。
どれだけ嫌悪されていても、こちらから何もしなければ、相手はよほどの事がない限りこっちに関与することはないだろう。
ずっと昔からそうだったのだから、今回もそうなるはずだと。
そう、思っていた。
だけど、あの時はそうはならず。
俺が考えていた未来とはまったく違った結果を生んで。
――一体なにがあったのか。
俺は当時の事を時々思い返しては首を傾げるが、これも『あれ』と同様で答えはでない。
試しにその相手に尋ねてみても。
『そうだねぇ。強いて言うとするなら』
『するなら?』
『キョウさんが類を見ないほどに馬鹿だったって事かな?』
『……あのさ、結局それってどういう事だ?』
『あははっ』
そう笑うばかりで、それ以上の事は教えて貰えず、今に至る。
結局。
当時、一体何があったんだろうか?