エピローグ【IFは続いていく】
時間は流れていき、十一月の半ば。
あの日から、今まで色々あった。
まず、当日は色んな人に話しかけられ。
中には舎監の先生すらもいて。
遠巻きに、嫉妬やら妬みを感じながらも、話しかけてくる人達は、基本みんな祝福してくれた。
無論「ねえ、何で付き合ったの?ねえ何があったの、ねえ??」何て、面白半分に聞いてくる人間もたくさんいたけど。
とりあえず、なぁなぁで答えると「っで、本当は何があったの?ねぇ?」って更に聞いてくるし。
いや、もう色々勘弁して下さい。
そう思いつつ、やり過ごしたのだが。
これが、一日じゃ終わらなくて、数日間続いた事に驚きだよっ。
まあ、結局ほとんどの人間はある程度騒いだら、落ち着いて今では俺と華彩が付き合っていることにとやかく言わず「相変わらず仲いいね」ぐらいのモノ。
人の恋愛事だし、そんなもんかと思っている。
『あまり深く考えるのはやめておきなさい。世の中には知らなくていい事もあるの』
などと、意味深に言っていた瑞希の台詞は気にはなるのだが。
それはさておき。
周囲はそんな感じで、後は俺の周りについて。
といっても、俺の関わりある人間は「よかったな」ぐらいのもんで、それ以上の事突っ込むことはなくたまに「仲良くやってる?」と聞かれるぐらいのものだ。
あとは「最近付き合いが悪くなった。やっぱり彼女できるとそうなるのかー」と山岸に言われたくらい。
以前と変わったと言えば、華彩は勿論の事、瑞希と中村君について。
華彩は俺の彼女なので、一緒にいる時間、メッセのやりとり。電話などの時間が圧倒的に増えた。
とはいっても、俺も華彩もそれぞれに友人がいるので、その時間は別々。
それに俺も華彩も地元が別なため、どちらが帰宅すれば、当然その時間は一緒にはいられない。
けれど、それ以外ではだいたい一緒にいる事が多い。
恋人ってこう言うものなんだろうと言えば『なわけあるか』と瑞希に言われるが、俺華彩が始めての彼女なんでわかりませんと答えると『これだからバカップルは』と呆れられた。
『まさか、ここまでイチャつくなんて想像してなかった』
とは瑞希の弁。
それで、残りの2人関してはというと。
特に大きな変化はない。
どちらも以前と関係が変化したわけがないから。
ただ、全く一緒というわけでもなく。
これは瑞希から直接聞いたわけではないので、俺の予想。
あの日、恐らく瑞希が、中村君を自分の”友人”として認めたあの日から。4人で行動する事が増えた。ということだろうか。
【集会】も4人で一緒にやる事が多いし、何だかんだと瑞希に巻き込まれる際、中村君ついてくる事が多くなった。
なので、俺個人の関わりを除けば、俺のグループと呼ばれる人間はこの三人である。
あと、これは後で知った話。
中村君と華彩。ほとんど交流がなかったらしい。
あの報告会で揃った時、「中村君、今回は色々ありがとうございました」「いえいえ」なんて仲良さそうにしていたから、てっきり1年同士仲が良いのかと思っていたら「私、みぃ先輩から話は聞いていたので、中村君の事は知っていましたが、でも直接関わったのは、あの時がはじめてです」と言うし、中村君も「名前や顔、あと会えばあいさつなんかしてましたけど、それぐらいです」と言っていた。
まるで、一年の時の俺らみたい……いや俺みたいに嫌われていたわけじゃないから、違うのか。なんて思ったり。
けれど、あれから関わる事が出来、交友関係ができたことで、今では仲良くなっている。
この前なんか、「中村君が彼女できたら、みんなでトリプルデートをしましょう」「いいですね、とっても楽しそう」と瑞希と華彩で盛り上がっていたくらいだし。
俺と中村君は2人で苦笑い。
ああいう時って、女子は基本乗り気だよなと思っている。
あ、デートと言えば、俺は未だに瑞希の彼氏に会った事がない。
瑞希と付き合える人間って一体どんなヤツなんだろうか……まぁそのうち会えるだろう……という事で。
あとは、華彩との一件に協力してくれた夢野先生。
この人は、何ていうか相変わらずで。
『お前、前より笑うようになったな。良いと思うぞ?』
と、笑って言ってくれて。
後はいつものように、時にからかい、時にアドバイスをして。
何だかんだで見守ってくれるという、教師らしくはないけれど、それでもやっぱり本当に”教師”というのがぴったりの人だった。
……からかいに関しては、もう少し自重してほしいところではあるが。
あと、夢野先生に関連してと言えば”風景画”の課題は概ね好評だった。
俺らしくない、と言いつつ「今の風間を表現している」と言って、「良い絵だな。これからも頑張れよ」と言ってくれた。
そして、その絵は「私、欲しいです」と言っていたので、華彩が持っていたりする。
あと他にもいくつか今まで描いた絵で華彩が気に入ったモノを渡し【風間・コレクション(瑞希命名)】ができているとか、いないとか。
色々話しが脱線してきたが。
とにもかくにも。
これが今の人間関係で。そしてそんな面子で楽しくも騒がしい日常を送っている。
そうして。
学校からの帰り道。
一人で帰宅していると、瑞希が俺に声をかけてきた。
「キョウさんっ! 今回、文化祭のMC私とキョウさんがすることになったから、よろしくねっ♪」
そんな風に、いつものように、唐突に、とんでもない事を言い出した。
「……あれって、自分で希望だして、学校側に許可もらうんだと思っていたんだけど。俺そんな話今まで一度も聞いてないんだが?」
「そりゃあ全部隠れてやってたからねっ。あと結果が分かってからも『私から言っておくんで♪』と言っておいたから、キョウさんが知らないのは当然よ」
なんて自信満々に言われても、困るんだけどな。俺。
この学校の文化祭は十一月の後半に行われる物で、二日間行われる。
一日目は、クラスで行う劇や合唱と行った催しを『学生』限定で楽しむ物。
二日目は、他の学校と同じように、クラスや部活、あとは個人やグループで出し物や、露店を出して『学生と一般の人』が楽しむためのもの。
瑞希の言っている、MCは一日目の時にそのクラス間で出される出し物の紹介や、準備までの繋ぎの会話を行う人間の事を指している。
あれって募集期間いつだったけ?
正直な話、無関係だと思っていたので、覚えていません。
今からでも、取り消しとかできるんだろうか?
そう思いつつ、ふと瑞希をみれば、いつものように悪戯が成功したという笑みを浮かべていて。
それに対し、何か言ってやろうと口を開こうとした―-
そんな時ふと思った。
結局の所――
俺自身や他人との関わりが変わっても、変わらなくても、
”もしも”が、叶っても叶わなくても。
今後がどうなるか、なんてわからない。
こうしてる今が、良い例だろうと。
そして……だからだろうか。
いつもの無茶振りでも、どこかほんの少しだけ――
本当に、少しだけだが「やってみてもいいかな」と思いかけている自分がいた。
「キョウさん」
「んっ?」
「返せ」
「はっ?」
「あの頃のキョウさんを私に返せっ!」
「うん?」
「違うでしょうっ!? そこは、いつもだったら「マジか、よ」って顔をする所であって、「やれやれ仕方ないなぁ」なんて顔で笑ってるって、それはもうキョウさんじゃ――」
「みぃ先輩」
「あっ日和ちゃん」
俺達2人を見かけたからだろう。華彩が俺達に向かい歩いてきて、そして瑞希に声をかけた。
「あんまり先輩を困らせたら、駄目ですよ?」
華彩がそう言って瑞希を注意してくれるが、そんな事で瑞希が折れるわけ。
「あっはい、ゴメンね」
えっ、あの瑞希が素直に謝っている、だと?
「あの、瑞希さん? あんた華彩には随分と低姿勢なんですね?」
こいつはもしや瑞希の皮を被った別人なのでは?
そう思い瑞希に声をかければ。
「ふっまあね……」
遠い目をして笑う瑞希。
「私にだってね「怒らせてはいけない人間」っていうのはいるのよ?」
まあ、それはそれで、面白いからいいんだけど、ただ、選択を間違えるととんでもないことになるから、気をつけないとねーと独り言を呟いてから。
「とにかく、折角だから今までにない文化祭にしたいから、よろしくねっ。キョウさん☆」
そう言って瑞希は俺と別れるようにして、女子寮へと戻っていった。
それを唖然としたまま俺は見送ったが。
「……ははっ」
「どうしたんですか、先輩?」
「いや、何と言うか瑞希の別の一面を知っても、別に何も変わらないなって思って」
「?」
不思議そうに首を傾げながら、こちらを見る華彩に笑顔を返して思った。
だって、あんな一面を見ても、俺の中で瑞希という人間の本質が変わったわけではなく。
ただ、知らない部分もあったんだな、と思うだけ。
そう思えば、変わる、変わらない、で悩み続けていた自分が馬鹿らしくなってしまったのだ。
だからそれが可笑しくて、俺は笑って、そのまま手を差し出し。
華彩はそんな俺に疑問に思っても、差し出した手を取って。
そうして2人、わずかな時間であるけれど、手を繋いで寮へと帰っていった。
ずっと考えていた”もしも”。
考え出してからずっと、どんな答えをだしても、不安は消えなかった。
けれど今は、色々な期待を胸に、考えていくと思う。
もしも――
もしも、これから色々あっても。
きっと、最後はこんな風に笑っていられるのだろう。
そんな気がするから。
「了」
ここまでお付き合い頂き、真にありがとうございました。




