幕間3
『ええと、初めまして。風間先輩』
『初めまして。中村君も絵を描いたり、本を読んだりするのが好きなんだって?』
『そうです。先輩もそうだと聞きましたけど』
『そうそう、あーよかった。ここにいる人間って基本的に体を動かしたり、騒いだりするのが好きでも、そういったこと好きな人間て、あんまいないんだよな……。だから趣味が合いそうな子がいてくれるっていうのは正直嬉しい。中村君さえよければたまに趣味の事で話そう』
『いいですよー、僕も、同じ学年にそう言う人が少なかったんで、嬉しいです』
出会いの会話はこんな感じ。
その時の自分の言葉は紛れもなく本心。
でも心の片隅では、いずれ離れていったらその時はその時だ、と心のどこかで諦観してもいた。
目の前の後輩が、いつ俺の傍から離れてもいいように――
――そんな、予防線を張っていた。
それでも、今現在。
彼は離れるそぶりもみせず、むしろ当初想定していたよりも仲良くなった。
不思議だ。
俺はこれまで何度も、他人に嫌われてきた。
何度も、何度も繰り返すうちに自分の駄目な部分を自覚していった。
そしてそれは、どんなに仲良くなったとしても、人に見せてはいけないものだということも。
だから、
瑞希にしろ。
中村君にしろ。
何故俺との関係を続けているのか、それがよくわからない。
二人とも、俺の内面を知ってしまったはずなのに。
しかも瑞希に至っては実際嫌っていたはずなのに。
どうして、なんだろうか?
これは、わからなくても、良い事なんだろうか?
今の俺には、それすらもわからない。