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ユートピアの理

先日は申し訳ございませんでした。

これからも何卒、よろしくお願いします。

このユートピアには、果てが無い。

勿論、国境も無い。

無限に広がる土地に境を作る意味が無いからだ。

 

 何かを奪い合うのでは無く、

分け合う事が当たり前の世界。

極自然に、それらが成立する。

 

 それが、この世界の摂理だった。

 

 そして、物理的な物は加えて、異なる理を持っていた。

 

 その理とは、【願えば、ふと手に入る】という事だった。

 

 「本当だ、こんな所にギターが落ちてる!」

 伊吹は道の草むらに落ちていたギターを発見し、

 ギターに駆け寄った。

 伊吹の願ったエレキギターでは無く、アコギだったが、

 それでも伊吹は喜んだ。

 

 「だから、大抵の物は手に入るよ。」煌がその横を通り過ぎながら、

 当然の事のように言った。

 

 「凄いな、それ。」

 

 煌と伊吹は、あれから集落を間もなく出発し、旅に出た。

 

 その旅の道すがら、煌は伊吹に、知っているあれこれを説明していた。

 

 家、または家屋が存在しない事。

 そして、【大抵の物は、その物を欲しいと願うと手に入る】という事を。

 

 「だけど、何故か食べ物と、機械的、電化製品的なものは出てこないんだ。車とか、

 ドライヤーとか?」

 歩きながら淡々と、煌は説明した。

 

 「そうなのか、不思議だな。何でもという訳じゃないのか。」

 伊吹は、手に取ったアコギを見ながら、

 アコギに代替された理由を何となく理解していた。

 アンプの事も考えての代替なら、中々思いやりのある創造主だ、

 そんな風に思った。

 

 「昔、一番最初に弾いたのがこのアコギだったな、懐かしい。」

 伊吹はギターを構えながら、そのしっくり加減にも驚いていた。

 

 「昔?あの集落に着く前?旅の途中だったの?」

 煌は何の気無しに、歩きながら答えていたが、

 

 「いや、小さい頃だな、俺が10歳くらいの頃だ。」

 

 その伊吹の言葉に、固まり、歩みを止めた。

 

 沈黙が流れ始めた。

 

 伊吹はギターを弾き始める、

綺麗な音色が沈黙を埋める。

 

 「‥おかしい、何で?」

 ようやく言葉を生み出す煌。

 

 「どうかしたか?」

 弾きながら、伊吹は答える。

 

 「小さい頃って何?

 待って。

 

 伊吹、って成長してるって事?」

 驚いた、そして酷く焦った様な表情で、伊吹の方を振り返る煌。

 

 「いや、成長も何も。

 ここに来る前の元の世界で、」

 伊吹は煌のその反応に困惑しながら答えた。

 

 「何?元の世界って?

 私達には、この世界の記憶しかない。」

 

 すると、

 煌の頬には、涙がひとしずく。

 

 煌の怯えた表情に、知らされた事実に、

伊吹の心はざわついてしまっていた。

 ざわついた心のせいで、言葉を失っていた。

 

 そして、言葉を失いながら、何故か、

流れた涙に見入られてしまっていた。

 流れた涙に、違う感情が混じっている、

 そんな風に、伊吹には思えていた。

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