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『小説を読もう』のエロバナーに転生しちゃったあたしは、何とか違うバナーを表示しようとするんだけどエロ縛りから抜けだせないよ!!

作者: none


 ──あたし、どうやらWebサイト『小説を読もう』で表示される、広告バナーに転生しちゃったみたいだ。


 あ、バナーって言うのは画面の下に出る帯みたいな奴ね。


 そうそう、ゲームの広告とかエロ漫画の広告とか。


 え? 広告うざい?


 うん、ごめん、分かってる。よく言われるんだ。


「エロが恥ずかしくて電車で読めないよ」


「間違えて押してまうやろ!」


「投稿される小説にはレーティングがあるのに、何で広告は犯罪めいたエロを許容してるんだ?」


 そんな声がディスプレイの先から聞こえて来る。


 うん、ごめんみんな。あたしもあらがいたいんだ。出来れば健全な広告を表示したいんだ。


 でも運営が力ずくで、あたしにエロいことさせるんだ。だから、ごめん、みんな!


 ──そんなこんなで、バナーのあたしは、利用者を観察することが日課なんだ。





 さて、バナーのあたしは、今日もディスプレイの先を観察するよ。


 お、中学生くらいの男子が見える。


 何々? 検索キーワードは、「ざまぁ」、「追放」。


 ふむふむ。やはり男の子は「ざまぁ」物が好きなのかな?


 お、指が止まったぞ。


 何? あたしを見てる? やだ、そんなに見つめないでよ。照れちゃうじゃん。


 と思ったら。


 あ、今、あたしが映してるのは、エルフだ。


 エルフがゴブリンに無理矢理エロいことされちゃう漫画のバナーだ。


 巨乳エルフはエロ漫画でも大人気だよね。


 すると──。


 やだ、少年の指があたしに迫って来る。


 ダメだよ、この漫画は君には早いよ。


 でも少年の指はあたしの敏感なところを……。


 ダメ! そこは、そこは触っちゃダメーー!


 「……あっっ」


 あたしはタップされた感触に思わず声を上げてしまう。


 すると──。


 少年は漫画サイトに離脱したようで、あたしの視界から消えた。


 ……バナーを押しちゃったか、少年よ。


 エロに課金するときはちゃんとお母さんに相談するんだぞ。





 お、ブレザー姿の女子が見える。高校生かな?

 

 何々? 検索キーワードは、「悪役令嬢」、「婚約破棄」。


 ふむふむ。やはり女の子は「悪役令嬢」物が好きなのかな?


 お、指が止まったぞ。


 何? あたしを見てる? やだ、お姉さんに興味あり?


 と、思ったら。


 あ、今、あたしが映してるのは、BLだ。


 イケメン男子二人が裸で肉弾戦してるBL漫画だ。


 BLってみんな汗だく細マッチョだよね。


 すると──。


 やだ、少女の指があたしに迫って来る。


 いいのかい? この先は腐海だよ? 戻って来れなくなっちゃうよ?


 そして少女の指はあたしの繊細なところを……。


 来る! 指が来ちゃうー!


 「……あっっ」


 あたしはタップされた感触に思わず声を上げてしまう。


 すると──。


 少女は漫画サイトに離脱したようで、あたしの視界から消えた。


 ……バナーを押しちゃったか、少女よ。


 BLなら『読もう』よりも他のサイトの方が充実しているよ。


 腐女子の道は深く険しい。幸運を祈る。





 お、中年のおっさんが見える。


 はい、無視無視。


 おっさんがあたしを見る目は生々しくてキモいから。





 お、30代くらいの女子が見える。自宅かな?


 何々? 検索キーワードは、「つらい」、「鬱」、「自殺」。


 ……メンヘラちゃんか。うん。日本は生きづらい社会だよね。


 お、指が止まったぞ。


 って、え!? 何よ、そのロープは。


 女子は手にクレモナロープを持っている。


 すると、ロープで輪っかを作り始めた。


 まさか、首を吊る気!?


 やばい、やばい、やばい。


 待って、ちょっと待って!


 ああ、でも、あたしには何も出来ない。


 せめて何か映し出せれば……。


 何か、何か、何かーー!


 と、あたしが祈ったその時──。


 あたしは何かの力を感じた。


 こ、これは……。


 あたしはバナーに「待って!」と言う文字を映し出していた。


 で、出来た……。


 いや、よく見ると、男子が女子にエロいことしようとしてる漫画だ。


 服を脱がされそうな女子が、男子に「待って!」と言うシーンが映ってる。


 やっぱ、エロなんかい!


 でも、念じれば、バナーを変えられる!


 あたしはまた祈る。


 "生きて、生きて、生きて!"


 すると──。


 バナーに「イク、イク、イク!」と言っている漫画が表示された。


 描写は、エロ過ぎて言えない。


 いや、違うから! 文字も意味も違うから!


 ええい! 次だ、次!


 "いのちの電話、いのちの電話、いのちの電話"


 あたしはまた祈った。すると──。


 バナーに「全部、飲んであげる」と言っている漫画が表示された。


 描写は、卑猥過ぎて言えない。


 いや、いのちのでんわ → 飲んで、は、無理があるやろ! いや、何を飲ませるねん!


 ああ、だめだよ、こんなんじゃ、伝わらないよ……。


 すると──。


 ディスプレイの先の女子は泣き出した。


「ぐすっ、やっぱ……、出来ないよ……」

 

 そう言うと女子は、ぽいっとロープを放り投げた。


 ああ、良かった。思い留まってくれた……。





 しばらくすると、女子は『読もう』のサイトを見始めた。


 さっき検索した一覧を見ていく。


 すると──。


 一つの小説が目に止まったようだ。


 タイトルは『生きづらくて生きづらくて仕方ない方へ』。ジャンルはエッセイ。


 あたしは目を見張る。


 あ、それは……。


 あたしには、そのエッセイに見覚えがあった。


 だってそれは、あたしが生前に投稿したものだから。


 実は生前、あたしも生きているのがつらかった。


 あたしには生きるためのヒントなんて与えてあげられないけど、つらいのは一人じゃない、同じ気持ちの人はいるんだよ、って伝えたくて、あたしは何十万字もエッセイを書き続けたんだ。


 女子はあたしのエッセイを真剣に読んでくれてるみたいだ。


 しばらくすると、彼女はあたしの小説をブックマークしてくれた。


 そして、電気を消して、ベッドに入って行った。


 おやすみ。今日はつらかったね。


 あなたが思い留まってくれて、あたし、嬉しいよ。


 また明日、会えるといいな。




 

 ──今日のことで、あたしには目標が出来た。


 あたし、もっと色々試してみる。


 傷ついた心を癒やしてくれるような漫画や、誰かの助けになれるような情報をバナーに表示したい。


 だから、あたし、頑張ってみる。


 エロに抗ってみる!


 さてと、じゃああたしも休もうかな。


 みんなに良いコンテンツが届きますように。


 ではでは、おやすみなさい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 吐糟很好,廣告不需限制而小說而分級很不可思議。 [気になる点] 題材很有趣,就這樣。可能因為是短篇限制了發揮吧。 [一言] 加油哦。
[一言] 前半はコメディ要素に笑わせてもらいました。 そうですね。 BLは「なろう」以外がいいと思います。 後半はまさかのいい話。 前半とのギャップに思わず心を動かされました。 楽しかったです。
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