表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第2話 きたない

 あぁ、なんかすごい勢いでいろいろ冷めてく。

 キモすぎるんやけど。


 やば、かつて無いほど冷静な俺がおる。賢者モードからこんな瞬間で立ち直ることある?


 今、頭の回転尋常じゃない速さやわ。普段の速さがメリーゴーランドやとしたら、今はジェットコースターって感じ。

 いや、こんなどうでもいいこと考えてる時点で頭回転してへんか。ははっ、ウケるな。いや笑われへんけど。


 え、俺、誰かもわからん男とキスした口とキスしてたん? やば、間接キスやん。

 ほんで、知らん男が突っ込んだ穴とヤっとったん?


 無理無理、俺まぁまぁ潔癖やのに。


 つーか、そうか。今日のデート中、なんかやけにいつもよりピリピリしてんなって思ったらそういうことかよ。

 しょーもな。自分がやましいことあるから俺に当たってきてたとか。


 つーかセリフが浮気女の典型やん。なんやねん、「好きなのは刃銀(はがね)だけ」って。

 現実で言うやつほんまにおるんや。ウケる。いやウケへんけど。


 メンヘラな気質あるとは思ってたけど、ここまでアレなやつやったとは。


 けどちょうどいいわ。コイツのわがままもかなりダルなってきてたとこやったし、ここで終わらせるのがベストってことか。


 いやぁ、ここがコイツの部屋で良かったわ。俺の部屋やったらひっくり返して洗わなあかんとこやったし、今から帰るとこもなくなるとこやった。



 何はともあれ。


「いや、無理やから。キショすぎ」


「えっ......」



 いやいやいやいや、なんでびっくりした顔してんの。

 どんな反応予想しとってん。


「な、なんで......。なんでそんなヒドいこと言うん?」


「え、ヒドいかな。普通にきしょいからしゃーないよな。っていうか大体、なんでそれを俺に言ってきたん。いや、言ってもらってよかったけどさ。それ言ってどうしたかったん」



 それだけが本気でわからん。

 何で浮気したことを俺に伝えてきた? 俺にどんな反応をしてほしかった? 何の目的があった?


「..................あー............えーっと............怒らん......?」


「いや、わからんけど、もう結構怒ってるし、一緒ちゃうかな」


「っ!?」



 意味わからんすぎるけど、もしかしたら嘘っていう可能性まであるからな。

 俺は人を不快にさせる類いのドッキリはそもそも嫌いやし、これがドッキリやとしても普通に無理やねんけどさ。


 つーか、今もうすでにキレて暴れたいレベルやのに、俺よく我慢して喋ってるなぁ。俺、偉いわ。


 そんで、なんでやっぱりびっくりした反応やねん。


 なんか何言うか迷ってる風の顔してるし、意味わからん。

 咲水が嘘つくときの顔やけど、この期に及んで何言おうとしてんの。


「えっと、最近、刃銀(はがね)が冷たいような気ぃしててさ! バイトばっかりやったやん? だから、私が他の人とえっちしたって知ったら嫉妬してもっと構ってくれるかなって思って!」



 聞きたくもない話やった。聞く価値のないゴミ以下の言い訳超理論やし。しかもそれが嘘って、どういう了見なん。

 せめて、『罪悪感に押しつぶされそうで』とかやったらまだわからんでもないけど、こいつの言ってることの意味は理解すらできん。


 嫉妬してほしくて他の男と寝るとか、それを報告してくるとかある?

 いや、もしかしたらそういうのを報告し合うのが性癖のカップルとかおるんかもしれんけど、常人には無理やろ。


 脳みそ腐ってんの?


「でも1回だけやで? 私は刃銀のこと愛してるから。だからほら、お布団戻って続きシよ?」



 謎の言語をしゃべりながら裸ですり寄ってくる咲水(さみ)はキモチワルくて、もはや人外に見えた。


「きたなっ。触らんといてくれへん?」



 俺は手早くパンツとズボンを履いて、一刻も早くその薄汚い女の部屋を去るために歩きながらシャツと上着を着る。

 玄関に向かう俺の背中から咲水の汚い声が聞こえてくる。


「うぇっ!?!?!?!? 待って、刃銀! お願いやから待ってよ! なんでなん!? 私のこと好きやったんちゃうん!?」



 本気で理解できん。どんな反応やねん。俺の反応は誰でも予想できる型通りの反応やろ。


 浮気したやつが何言ってんねん。

 つーか、裸で足にしがみついてこんといてくれる? 汚いし。


「いや、浮気するようなやつ無理やから。汚いし、触らんといて? はよ帰って洗濯して風呂入らな」


「っ......」



 なんでショックそうな顔してんねん。


「............嘘つき......。私のワガママ聞いてくれるって言ってたのに......。私のこと、愛してるって言ってたのに......っ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 単純に物理的なことだけ言っても、第三者の体液まみれ(比喩)な相手は汚いわな。 クラミジア初め病原の可能性もある。 心理的にもお察し。 というか仮に浮気→嫉妬で愛が強くなる、という舐めたやり…
[良い点] 設定も展開も凄く好みです。 私のストライクゾーンど真ん中です。 [一言] 新作ありがとうございます! 2話まで読みましたが、ちょっとこれは良いですね。 ここからざまあでもなく、胸糞でもない…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ