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旧作✿現在非公開中  作者: 元・深 夜 現・雪闇影
3章
89/116

紫色の破片

 

 ラウルと情報を交換すると決めたレティシアは、ルカたちの方をみるとルカもアランも深くうなずいた。


「話がまとまって良かったよ。ララは血の気が多いから、途中ヒヤヒヤしたけどな。――ラウル殿下おれもできれば戦争は避けたい、よろしく頼む。それとこれは非公式の場だ、気軽にアランと呼んでくれて構わないよ」


 そう言ってアランはラウルに右手を差し出すと、ラウルはその手をとり握手をする。



「私も非公式の場と考えています。なので敬称は省いてしまってかまいません」


「ありがとう。こちらはルカ・オプスブル。そして、こっちのお嬢さんは、レティシア・ルー・フリューネだ。ただレティシアは身を隠してるから、ララと呼んであげてほしい」


 アランがルカとレティシアを改めて紹介をすると、二人もラウルと握手を交わした。


「分かりました。それでは早速ですが魔塔の中を案内いたしましょうか? その方が次に来る時も、迷わず私の書斎にこれると思うのですが、どうしますか?」


 そうラウルは聞いたが、その質問にルカが首を左右に振って答えた。


「いや、いい。ラウル殿下が指定した宿屋まで後をつけられたことを考えれば、移動魔法陣で来た方が安全だ。ララ、悪いが頼めるか?」


 レティシアはルカの方をみて「わかったわ」と言って立ち上がると、ラウルも立ち上がり部屋の隅へと歩き出した。


「それなら、ここら辺に魔法陣を描いても大丈夫です」


「ありがとうございます」


 レティシアはお礼を言うと、指定された場所を軽く見てからその場に膝をついた。そして指先から魔力を流しながら、床に転移魔法陣を描いていく。

 まだ宿屋の部屋に結界魔法陣があるため、それを描いたレティシアにルカは頼んだのだ。


「まるで長年魔法陣を描いてきたかのように、奇麗な魔法陣ですね。とても幼い子どもが描いてるとは思えないです」


(確かに魔法陣は過去と同じ文字が使われているから描きなれてるけど、奇麗だと褒めるようなレベルでもないと思うけどな……。それよりも、長年って言ったわよね? この王子なんだかんだ言って勘が鋭いわ)


「そうですか? 魔法が好きなんですよ。暇さえあれば本を読んでましたので、そのおかげですね」


 魔法陣を描いていたレティシアの様子を見ていたラウルは、感心した様子で褒めると、レティシアはそう言いながら笑ってごまかした。


 レティシアが魔法陣を書き終えると、淡い光を放っていた魔法陣は消える。そこからレティシアは魔力感知を使い、自分の描いた魔法陣がしっかりと隠れている事を確認した。


「描けたわ、後は宿屋に戻って同じものを描けばつながるはずよ」


 レティシアは立ち上がると足早にソファーの方へと向かい、盗み見るようにラウルの様子を見ていた。


 ラウルは一度だけレティシアが魔法陣を描いた場所を目を凝らしてみると、頬を緩ませて嬉しそうな表情をしたが、振り返るとその表情は消えていた。

 そして軽い足取りで先程座っていた場所まで戻ると、話を再開した。


「それでは、時間も余りありませんし、情報の交換をしましょう。まず私からですが、現在私がわかってる事は正直に言って少ないです」


「それはおれたちも同じだな」


「そうですか……。では、こちらをご覧になった事はございますか?」


 ラウルはローブの中にあったカバンから小瓶を取り出すと、机の上に小瓶を置いた。

 レティシアたちは机の上に置かれた小瓶に目を向けると、ルカはそれを手に取り、レティシアやアランに小瓶をよく見せた。その小瓶の中に入っていたのは、見覚えがある紫色の破片だった。

 ルカはラウルの方をみてすぐにまた小瓶に視線を戻すと、静かに机の上に小瓶を置いた。


「魔の森でララが同じ物を拾った」


「そうですか、こちらは私の部下が拾ってきました。成分を確認しようと、力を加えたところで割れて消えてしまったので、魔法を使った切断を試みたのですが、それもまた消えてしまいました。――ルカさんとララさんの反応を見る限り、お二人も試したようですね」


「あぁ、ララが拾った日に両方試した」


 ラウルは机の上から小瓶を手に取ると、またローブの中にあるカバンにしまった。


「今この魔塔には二欠片が存在しています。一欠片はさまざまな薬品に漬けて成分の抽出を試みています。もう一欠片はこうして私が保管しています」


「実はララがそれと同じものを、別の形で発見した」


「別の形とは?」


 ルカは空間魔法から拳の大きさがある瓶を取り出すと、机の上に置いた。それは魔の森でルカがレティシアを見つけた時に、レティシアが見つけたあの紫色の破片だった。


「積まれた肉の山からこれを見つけた」


「失礼します」


 ラウルが瓶を手に取ると、中の破片を観察するように瓶をさまざまな方向から見ていた。


「まだあるから、それは魔塔に預ける」


「ありがとうございます。すみません、こちらを実験室の方に渡してきますので、しばらくお待ちください」


 ラウルは慌ただしく立ち上がると、そのまま走って書斎を後にした。


 重要な書類があるかもしれない書斎に残されたレティシアたちは顔を見合わせたが、信頼してくれているのだろうと思うと、どこか毒気が抜かれた気分となる。



 レティシアはラウルがすぐには帰ってこないと思い、ソファーから立ち上がり壁際に置かれた本棚へと向かう。


 端から一冊の本を手にとると目を通していく、そして読み終わると元に戻し次の本を手に取ってまた目を通していく。


「おいおい。探しものか? 本を読むならちゃんと読めよな」


 本を読んでいるレティシアのことを何気なく見ていたアランだったが、こうやってじっくりとレティシアが本を読んでいる姿をまじまじと見た事がなかった。

 そのためアランはレティシアに対して見当違いな指摘をしたが、レティシアはあえて聞こえない振りをした。


 そのレティシアの態度がいつも見ていたレティシアだと思うと、ルカは安堵し頬が緩んだ。


「いや、ララはあれでちゃんと読んでるんだよ」


「うわぁ、マジかよ……。目を通してるだけのようにしか見えねぇけどな」


 驚いた様子でアランがそう言うと、ルカは笑いながら立ち上がって本棚へと向かい、レティシアと同じように本を読み始めた。

 二人の様子を冷めた目で見ていたアランだったが、座り直すと大きく背伸びをして気だるそうにした。


「おれはパスな〜」




 しかし三十分を過ぎてもラウルが書斎に戻ってくる気配はなく、手持ち無沙汰になったアランも結局は本を読み出した。



 ◇◇◇



 ラウルが部屋を出て行ってから二時間がたった頃、勢いよく部屋のドアが開いたと思うと、土下座する勢いでラウルが部屋へと入ってきて深々と頭を下げてきた。


「申し訳ございません! 破片を渡したのは良いのですが、指示をしていましたら実験の方に没頭してしまいました」


 そう言って深々と頭を下げるラウルに対してアランは少しだけ呆れた様子で言った。


「あぁ、いいよいいよ。こっちも本にかじりついてるヤツがいるから」


 ラウルはキョトンとした様子でアランをみると、アランはレティシアの方を向いた。


 ラウルは不思議に思いながらも、レティシアの方に視線を向けてその様子を見ていたが、興味が湧いたのかレティシアに近寄って声をかけた。


「魔導書を読むのは楽しいですか?」


「えぇ、私の知らない魔法があるかもしれないと思うと楽しいわよ?」


「この部屋にある本はご自由にお読みください。それと、この件が落ち着いた頃に、ララさんを魔塔本部の書庫にご案内します」


 魔塔本部と言われたレティシアは、読んでいた本から勢いよくラウルに視線を向けると、ラウルは優しく微笑んでいた。


「あ、ぇえっと……ありがとうございます」


 戸惑いながらもレティシアはお礼を言うと、本を本棚へと戻して早歩きでソファーの方へと戻って行った。

 レティシアを目で追っていたラウルは、レティシアが座ったのを確認すると、ラウルもソファーの方へと向かった。


「私のせいで話を中断させてしまいすみません。続きを話していきましょうか」


 ラウルがそう言うとアランもルカもソファーに座った。



「後こちらでわかっていることは、先程ルカさんから預かった破片を食べた魔物が他の魔物に捕食された場合、捕食をした魔物が操られる事は分かっていますが、どう言った原理で操られているかは不明です。そして、一度でも体内に取り込まれた破片は衝撃や魔法に弱く、魔物が死ぬとそのまま消えてしまう事が分かっています」


「俺たちが分かっていることと一致するな……悪いが俺たちもそこまでしか知らない。力になれなくて悪い……」


「そうですか……。仕方がありませんね。先程の破片を詳しく調べてみます」


(破片に関しては行き止まりね)


「ねぇ、話は変わるんだけど魔導師バッジの持ち主って今はどうなってるわけ? そもそも、バッジが落ちてなければ疑われることもなかったよね?」


 レティシアがそう指摘をすると、ラウルの表情は暗くなっていき、彼は左胸についたバッジを見つめながら悲しそうな表情をした。


「そうですね……、魔導師バッジは魔導師にとってとても大切な物です。魔導師はこれを着けていることに誇りさえあります……。ですが……噴水広場で見つかったバッジを拝見し、私たちの方で持ち主は特定しましたが、魔の森で彼を発見しました」


(亡くなっていたのね……。それなら他のバッジ所有者も既に亡くなっていると、考えてもいいかもしれないわね。生きてる線も捨てられないけど)


「そう……。その様子からして生きていなかったのね。ラウルは、魔導師で行方不明になってる人や連絡が取れない人、それとバッジを無くした人がいないか、一度確認した方がいいわよ?」


「分かりました。早急に確認してみます」


「後、これは確認なんだけど、バッジの持ち主を発見した時、彼はローブを身にまとっていたのかしら?」


「一応ローブの方も確認しましたが、彼自身のローブを身にまとっていましたよ? それがどうかしましたか?」


「いいえ。確認しただけよ」


(魔塔も一筋縄では行かないってことかしら? それとも汚れが少なかった物だけを使った? どちらにしても、ステラの報告にあったことをラウルに伝えるのはまだ早いわね)


「さてと、そろそろ時間だ。これ以上はここに長居はできない、おれたちは帰るよ」


 背伸びをしたアランがそう伝えると、どこか張り詰めていた空気が和らいでいく。


「私が途中で離席してしまったので時間を無駄にしてしまいましたね……本当にすみません」


「いいよいいよ。こっちも勝手に本を読んでたし」


「では、なにか分かりましたらご連絡いたします」


「あぁ、悪いけど頼むな」


「あ、ララさん気になる本がありましたら、借りていっても大丈夫ですよ」


「ありがとうございます!」


 本を借りてもいいと言われたレティシアは嬉しそうに本棚へと向かうと、本を選んでいく。

 その間にルカはラウルと連絡が直接取れるように、通信魔道具の話をしていた。


 何冊も借りるのは悪いと思い、レティシアは五冊ほど手に取っていたが、レティシアが嬉しそうに本を選ぶ姿を見ていたアランは、やれやれっといった感じで転移魔法陣の方へと向かった。

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